1 世界は複雑
世の中は仕事をしている人や学校へ行っている人であふれている。それに、裏の顔を持っている人だっている。世界は複雑。そして、いつかは交わる。誰もが予想もしなかった形へと変わる始めるのだ。
――新暦二三〇年十二月。
俺こと谷津式亮は、いつも通りに青年警備隊として仕事を行っていた。行きたい学校にも行けない状況で。クローンの大量発生に手を焼きながら、新兵器などを使って活動停止状態に持ち込んでいる。そして、いつも通りに任務を続けている。
「なんか、最近のクローンは学習能力がついたというかね。変な感じなんだよな」
「そういえば、そうだった。いつもだったら、すぐにやられてくれるのにな。どうしようもないことだけどよ」
基裏は俺の意見にうなずきながら述べる。それから直哉も共感する。
「そういわれてみればそうだったように感じる。俺も、普通に倒せる相手に何分もかかってしまったし、新しい兵器を使っちゃった」
「やっぱりね。私もそうなのよね。意外と使わないかと思ったんだけど」
美優もなんか不満げそうに言う。
「わたくだって、そうだったわよ。いつも通りの相手の内臓をえぐってやろうかと思ったら、よけるんですもの。本当に嫌になる」
本当にいつも怖い女だ。おれがクローンだったら、真っ先に逃げてしまいそうな感じだ。それにしても、真理亜はいつもと変わらない。逆に変わった方が怖いかもしれない。それが、いいのかもしれない。
俺らは警備隊本部で休みながらも、愚痴を言っているのだ。あまりにも大きい声で話しているので、少し周りが迷惑そうに見てくる。だけど、そんなのお構いなし。成果を上げているので、何も言えない。
俺がおかしいと思うのは、部隊内でも話してもいいじゃないかと言うことだ。仕事に没頭するのはいいことだが、息抜きも必要なこと。人間はロボットではないのだから。いつも思ってしまうことだ。
俺は青年警備隊として、学校の管理も行わなければならない。毎日が忙しい。学校なんか行っている暇などない。行けるのは、ある程度の学力とお金がある富裕層ばかり。今の時代は、クローンにお金を使いすぎて、ほかには回せない。しょうがない時代なのだ。学生たちは不満ばかりで、いいことなどないということを耳にしたことがある。日本政府は、国民の意見を聞かなくなったごみと化し始めた。だから、警備隊と言うものができた。
俺らは緊急出動が出て、第一実験地域の宇都宮市にいる。タイムジェットによる空での眺めだが、とても美しい。高速道路は張り巡らされ、車は渋滞がなくなり、過ごしやすくなった。それに、山などがきれいになり、いい感じの緑色になっている。それを見るとなんか落ち着く。上空からで、よくは見えないが、まだまだ田舎と言える。
昔で言えば北関東に属していた群馬県、栃木県、茨城県は、緑がいっぱいあり、きれいだ。だけど、東京と呼ばれていた都市とは全然違う。高速道路が発展しても、高層ビルなどが少なく、新都会と言う感じではない。田舎都市と言う感じだ。
田舎都市とは、田舎なところもあるが、都市らしいところもあるということだ。なぜなら、ちらほら高層ビルがあったり、駅が大きかったりするからだ。あまりにもばらついているのが美しく感じる。
景色に見とれていると、あっという間に宇都宮市の上空まで来て、着陸場所を探している。
『このタイムジェットは、今回の着陸地点は見つかりません。繰り返します。見つかりません』
「なんだと、そんなバカなことがあるのか。普通に考えて、あるだろうよ。着陸地点なんか」
と俺がバカにしたような言い方で言ってみると、
『着陸地点が発見されました。着陸地点はとある高等学校です。許可はネットワークで取ったため、すぐさま着陸いたします』
と自動アナウンスが言うと、タイムジェットは減速を行い、着陸地点へと向かっていく。
ゆっくりとゆっくりと校庭へと着陸することとなった。
「いや、ついたな」
「そうだな」
基裏が納得していると、直哉は着々と支度をしている。
「でも、すぐにしたくしないといけないだろ」
「そうね。私もすぐに支度をしないと、いつおそわれるか」
『ないない』
三人の男たちの声がハモった。後での仕返しが怖いが。
「失礼ね。私だって、女の子だもの」
――あぁ、かわいい子ぶったよ。美優は。確かに美人かもしれないけど。性格を知るとねぇ。
こいつの性格と言ったら男っぽいから、周りが離れていってしまう。しょうがないことなのだけど。
それにしても、真理亜の姿が見えない。
「真理亜はどこ行ったんだ?」
「あっちにいるじゃん」
「あぁ、本当だ」
直哉が指をさす方を向いて、納得した。意外と人気だということに。
真理亜は性格が最悪だけど、ファッションや顔はモデル並み。普通にポーズを決めていれば、テレビにだってみられるけど。だから、バライティーに出たら大変なことになる。普通の時でもおかしいのに。
俺たちは真理亜だけは注意している。
こんな感じで、いつもの警備などをやっている。そして、楽しいことなど一つもない。




