5.二人の聖者⑥
「ジョセは遅いな」
小枝を集めていたグレンデルは西の空を見た。
「そうですね、様子を見てきましょう」
火を熾していたロリンが立ち上がった。
「いや、待って下さい」
仲間の一人が緊張する。
「馬が来る。かなりの数だ」
仲間の手から集めた小枝が落ちた。
「グレンデル様、お逃げ下さい。早く」
しかし、間に合わない。
森に逃げ込もうとした彼らの前に、パシの紋章を付けた兵が姿を現した。
兵の守る輿の中から、ゆっくりとひとりの僧侶が下りる。
他とは異なった眼光を放つパシパの主、ティノスだった。
「お前がグレンデルか?」
農民に扮した男たちが守るようにしている男に、ティノスは目をやった。
がっしりとして働き盛りのグレンデルと、病のために痩せ細ったティノス。
質素な服を着たグレンデルと、豪華な僧服を纏うティノス。
自分を守る仲間の間から、グレンデルはティノスの前に進み出た。
「はい。大主教、いつかお会いできたらと思っていました」
「ほう、では、死ぬ前にその願いが叶ったというわけだ」
ティノスはグレンデルに答えた。
これを聞いたロリンがグレンデルを庇って前に出る。
ティノスの率いる兵の数は、そこに見える者だけでもグレンデルの仲間よりずっと多かった。だが、ロリンはその数よりも、ティノスの眼光に足がすくむ思いがした。
ティノスはそんなロリンに目もくれず、グレンデルに言った。
「グレンデル、お前はパシ教の教えを説くと称して、ずっと私の邪魔をしてきた。今までよく生き延びてきたと褒めてやるが、それもここで終わりだ」
それだけ言うとティノスはグレンデルに背を向けた。
グレンデルが問う。
「大主教にお聞きしたい。何故、同じパシの教徒同士で争わなくてはならないのですか?」
「それはグレンデル、お前が信徒を間違った方向へ導こうとするからだ」
振り返ったティノスに迷いはなかった。




