2.ユチの流れ⑫
流木が大きな中州へ流れている。二人は互いに頷くと、そちらに泳ぎ始めた。やっとの事で中州に上がったものの、二人とも体が重く、身動きができない。
しかし、とにかく体を温めなくてはと思ったアイサが、砂袋のようになったを体を引きずって中州に打ち上げられた流木を探した。
いくつか拾ってみると、運良く乾燥している。
「シン、しっかりして。これにその剣で火をつけられる?」
中州に上がったシンはアイサ以上にぐったりとして動くことができないようだった。
「それはできるけど……アイサを襲ってきた連中に見つかると面倒だよ?」
シンは、けだるそうに言った。
「今、ここでは生き延びることが先よ。来たときは、来たときよ。その時は、戦えばいいわ」
「この状態で? アイサ、大丈夫なのかい?」
シンは疑わしそうにアイサを見た。
「何もできなくても、シンの剣でシールドを張ればいいでしょう? とにかく、このままでは二人とも体力切れになって、何もできなくなる」
アイサは言い張った。
「アイサがその元気なら……わかったよ」
シンの剣が小さな火を放ち、流木に火がついた。
たき火の炎に照らされたシンを見て、アイサは息を飲んだ。
服のあちこちが割け、血に染まっている。
「ひどいわ、シン。怪我をしてる。とにかく、体を乾かして傷を見せて」
「そう言うアイサもひどいもんだよ?」
「私のは、かすり傷よ」
アイサはそう言うと、シンの服を脱がせた。
岩にぶつけたときに切ったのだろう。シンの背や腿には傷があり、出血していた。
アイサがセジュから持ってきたポシェットは離宮においてきたままだ。応急手当をしたくても、傷口を破った布で保護するくらいしかできない。
「私のせいだわ」
アイサは自分のふがいなさに情けなくなった。
「そんなこと構わないよ。それより、助けを呼びたいけど」
シンが顔をしかめた。
「誰かが探してくれるわ。王様が、こんな時間まで帰らないんだから」
「だといいけど……セジュの剣を持つ僕らが、こんなことになっているなんて、きっと誰も思わないだろうな。だから、あまり期待できないよ」
シンは言った。




