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Bright Swords ブライトソード  作者: 榎戸曜子
Ⅴ.二人の捕虜
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2.ユチの流れ④

「大巫女様とのお勉強は、もう終わったのですか?」

「今日はどんなことをお話になられたのです?」

「今度エア様がこちらにいらしてアイサ様をご覧になったら、さぞ驚かれることでしょうね? アイサ様は、またアエル様におもざしが似てらしたから」

 巫女たちのおしゃべりの中、アイサは神殿の奥へ駆けて行った。

「元気の良いこと」

「まあ、何を言っているの? アエル様が亡くなって、まだお寂しいのですよ」

「本当に……まだ、お小さいのですものね」

「アイサ様、そのように走ってはいけません」

「お怪我をなさいますよ」

 追いかける巫女たちを軽く振り切って、アイサは神殿の光の満ちる回廊を上っていく。そしてドーム全体が見渡せる神殿の頂上へ着くと、アイサは更に上を見た。

 しかし、閉じられた光の世界の先に広がる暗い海は見えない。

 アイサは目の前に広がる世界を見渡した。

 神殿の周囲には多くの木々が茂っている。

 まるで、光とともにこの神殿を闇から守っているかのようだ。

 その森の中を幾筋もの道が通り、所々に門が見える。

 巫女たちの姿も見える。

 眼下には見事な庭園、そして、その池は神殿の姿を映している。

『セジュの神殿とは、思った以上に美しいところだな』

『いや、それだけじゃないぞ?』

 ナハシュは言った。


 しばらく池に映る神殿の姿を眺めていたアイサは、くるりと引き返し、神殿の階段を下っていった。

 アイサが心を解き放つ。

 次々と目の前に現れる扉がいとも簡単に開かれてゆく。

 それぞれの扉の向こうの世界では、ただ人の思いだけがアイサに触れてゆく。

 その一つ一つを(なだ)め、(いつく)しみながら、アイサは先へ進む。

 扉を通るたびに闇は濃くなり、闇と一体になり……やがて神殿の奥底に着いた。

「アイサ、私の代わりに、この闇の向こうに行っておくれ。私の残してきた人たちの心を癒しておくれ」

 そこには、ありし日のアエルの思念があった。


 シンは、ほっと息をついた。

『アエル様の願いは人々の幸せ、その思いをアイサが受け継いでいるのはわかる。だけど、アイサはファニの城で僕の命を救い、パシパでは、もう少しで死ぬところだった僕をセジュへ連れて行って、そこの人たちを向こうに回して、僕を守ろうとしたんだ。そして、一緒に地上に来てくれた』

『アイサにとっては、それはそんな大仰(おおぎょう)なことじゃないのかもしれないぞ?』

 嬉しそうなナハシュの声にシンはぐっと気持ちを抑えた。

『そうかもしれない。アイサが僕を好きだって言ってくれたのも、頼りない僕を支えようとしてくれただけなのかもしれない』

『アイサに向き合いたいなら、まずはアイサに余計なことを考えさせないことだ』

『ナハシュ、試してみたい。力を貸してくれ』


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