4.クロシュの占い師④
ポムの店を出るとシンはアイサに並んだ。
「アイサ、あの金は?」
「ああ、持っていた宝石を換えてもらったのよ、セグルにね」
アイサはこともなげに答えた。
「すごくいいものだというのはわかったが、なにせ売るのが俺だろう? おおっぴらに売れるはずがないから、相手の言い値だ。大した値段が付かなくて歯がゆかったが……これでもポムさんに間に入ってもらったんだ」
申し訳なさそうに言うセグルにアイサは首を振った。
「すぐにお金になって有難かったわ。頼みを聞いてくれて感謝してる」
「おかげでクロシュの裏の顔がちょっとわかったよ」
チュリが大人びた顔で言った。
「それで、今度は占いに行くのか? いったい、なんなんだ、占い師だなんて……」
頭の中でいろいろなことが渦を巻いて、シンはそれに翻弄されるばかりだった。
アイサが歩調を緩めた。
「そう、占い師よ。だけど、これから会うのはただの占い師じゃないわ。クイヴルやオスキュラの情報が欲しいと言ったら紹介されたのだから」
「そうだ、ロスの紹介だ。ロスといったら、クロシュのちょっとした顔だよ」
チュリが言った。
「そのロスもポムさんが紹介してくれたの」
アイサが微笑む。
「そして、あの店を紹介したのは俺たちってわけだ」
セグルが得意そうに頷いた。
「そしてね、私をみんなに会わせてくれたのはシンよ。ねえ、シン、情報が揃えば、シンが嫌だと言ったって、シンには詳しいことを聴いてもらわなくてはならないわ。だから、そんな不機嫌な顔はやめてよ」
アイサに言われて、シンは思わずアイサを睨んだ。
それを見てカヌが心配そうに割って入る。
「シン、アイサはシンのことを心配しているんだ。お城で何かあったら、シンが困るからって……」
「どうせ僕は頼りないよ」
ますます不機嫌な顔になったシンをちらりと見て、アイサはセグル、チュリ、そしてカヌに言った。
「私たちはここで別れた方がいいわ。私はシンと一緒に浮き雲亭へ行く」
通りにはまだ人通りがあった。セグルは彼らを気にしながら、その大柄な体をアイサのほうに少しかがめた。
「浮き雲亭で何を聞く気だ、アイサ?」
「私は、今までにこの町で見聞きして、考えたことを確認したい」
「俺たちも行ったほうがいいんじゃないか?」
チュリが言った。
「いいえ。エモン殿に知れたら危険だわ。私の思った通りなら、エモン殿はラダティス公に代わってこのファニの実権を握ろうとしている。まず、ラダティス公の身の安全が第一だわ。それにシンもね」
「父上と僕の……安全?」
呆然としているシンを振り返って、チュリが聞いた。
「俺たちには何もできることはないのか?」
「そうねえ……エモン殿はすっかり準備を整えているだろうけど、どこまでする気なのかまだわからない。城に戻って様子を見るわ。とにかく、あなたたちまで怪しまれたら、いざという時の頼みの綱がなくなってしまうから、しばらくはおおっぴらに会わないほうがいいかもしれないわね」
「そうか……だけど、アイサ、覚えておいた方がいい。エモン様がかかわっているなら……城の奴らは当てにできないぞ?」
セグルが言った。
「わかってる。だけど城のことは大体わかるし、何しろ、主のラダティス公とシンがいるんだから何とかなるでしょ」
アイサは懸念を振り払うように言ったが、セグルの声は暗かった。
「アイサがそう言うなら……だけどファニは……これからクイヴルはどうなるのかなあ」
「何が始まるんだい、セグル?」
カヌが緊張して聞いた。
「いいか、カヌ、何があっても俺たちは仲間だ」
気持ちを切り替えて、セグルは言った。
「そりゃあ、わかってるよ」
カヌが真剣な顔で頷く。
「こんな時、ストーさんがいたらなあ。まあ、いい。コル爺がいるしな。必ず連絡しろよ」
チュリがシンとアイサの肩を叩いた。
「ええ」
アイサが頷く。
「よし、アイサ、シンを頼む。シン、アイサを困らせるなよ?」
セグルは眉を寄せるシンを見つめ、それからカヌ、チュリを引っ張って再びポムの店に入った。




