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Bright Swords ブライトソード  作者: 榎戸曜子
Ⅲ.夜半の月
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4.ナハシュ①

 仕事を終えたシャギルとルリの一行は、右往左往するエモン軍から離れ、スマンスの街道に出た。

 街道では、見回りに出ていたエモンの兵たちが兵糧を焼かれたと知って、軍に戻ろうとしているところだった。

「兵糧を根こそぎ焼かれたって?」

「なんてこった」

「まあ、いざとなったら、この辺の村から奪えばいいさ」

「ああ、大したものは残っちゃいないが、俺たちの分くらいならなんとかなるな」

「スマンスの奴らも悪あがきしないで、とっとと負けを認めりゃあいいんだ」

 夕闇に身を隠し、これを聞いていたシャギルは冷たく笑った。

「村人から奪わなくてはならなくなった時点で、お前たちの負けは決まっているんだよ」

「村の人には伝えておいたほうがいいわね」

 ルリはそう言うと、兵糧を焼く作業に加わった志願兵たちを見た。

「兵糧を焼かれたエモン軍は退却する。付近の村に食料を隠して逃げるように伝えて。退却するルート付近は特に気を付けるようにと。それが終わったら、村人に紛れてスマンスを出てファニの城に戻るのよ」

「お二人は?」

「シャギル……」

 ルリはシャギルを見た。

「そうだな、あっちにも言っておくか」

 シャギルは頷いた。

「用事を済ませてからファニの城に戻るわ」

「わかりました」

 志願兵たちは頷きあい、ルリとシャギルに一礼して仕事に向かった。 


「ルリ様、シャギル様がお戻りになりました」

 城の兵の知らせを受けてシンが急いで応接に入ると、そこには旅姿のままの二人がいた。

「用事は済んだわ」

「俺たちにかかればこんなもんさ」

 ルリとシャギルは言った。

「すまない。二人とも、とにかく休んで欲しい」

 シンが言うと、遮るようにシャギルが手を挙げた。

「気にするなって言ったはずだ。今はお前が大将なんだから」

「全く……慣れないものになっているので落ち着かないよ。シャギルもルリも、僕らを助けてくれた恩人だっていうのに」

 シンは本気で溜息をついた。

「シンが勝たなければ、今度はクルドゥリが一国でオスキュラと対峙(たいじ)しなくてはならなくなる。私たちも、もう後には引けないのよ」

「わかってるよ、ルリ」

 シンははっきりと答えた。

「戻ったのか」

 ルリとシャギルがスマンスから戻ったと知ったキアラが、ラダティスの応接に顔を出した。

 城に来ていたセグルも一緒だ。

「首尾は?」

 キアラが聞く。

「予定通りよ」

 ルリが答えた。

「エモン軍の兵糧は(ことごと)く焼いて片付けた。サッハまで(ろく)な兵糧がないのでは、エモンも悔しいだろうよ」

 シャギルは言った。

 その調子にいつもの得意になった様子はない。

「途中にある町や村は苦労するな」

 セグルが言った。

「早く終わらせたいものだ」

 シンが呟く。

「こちらの兵糧は着々と届いています。各地から、さらに志願兵が集まってきていますが、十分やっていけます」

 キアラが言った。

「志願兵といえば、連れて行った者たちはどうだった?」

 シンが聞いた。

「うん、まあまあだ。もうそろそろ、こっちに着いてもいいころだ」

 シャギルはテーブルの上にあった果物をかじった。

「お前、まさか、勝手に帰って来たのか?」

 キアラが顔をしかめる。

「訓練だからって、手取り、足取りか? それはないな」

 シャギルは答え、ルリも頷いた。

「そういうことね」


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