3.ファニの攻防⑪
二人は自然と間合いを取ると、まずシンが飛びかかった。
スオウは身をかわしざまシンの手を引き、転がそうとした。だが、すんでの所でシンの体の流れが変わる。
スオウの手が宙を切った。だが、さすがにスオウもバランスを崩さない。身を翻すと、シンの体の下に肩を入れ、シンを投げ飛ばした。
その衝撃は大きかったはずだが、シンはすぐさま起き上がり、スオウにかかっていく。
今度は素早くスオウの手を逃れると、シンは拳をスオウの脇に決めようとした。しかし、これはたいした打撃にはならなかった。
(油断はできないな)
自分の動きについてきながら、さらにその隙を狙おうとするシンに、スオウは少なからず驚いた。
スオウが遠慮なくシンの足に蹴りを入れる。
シンはこれもうまく避けて大きなダメージにしなかった。
何度もぶつかり合う。
スオウは自分がうっすらと汗をかいているのがわかった。見ればシンも肩で息をしている。
それでもシンの気持ちは研ぎ澄まされ、集中しているのがわかる。
(強くなったな……だが、まだやられるわけにはいかん)
スオウはシンの腹部に拳を入れ、傾いたシンを地面に転がした。
「うっ」
シンはしばらく動けなかった。
「もうそろそろいいだろう?」
スオウは苦しそうにうなったシンに言った。
「スオウから一本とれるのは、いったいいつのことになるんだろう?」
シンは腹を押さえながらも満足して立ち上がると、スオウを見上げた。その顔は紅潮し、汗がしたたっている。
「ありがとう、スオウ」
「いつでも相手になってやる。それで、少しはすっきりしたか? シン、お前は少し肩の力を抜くことを覚えないとな」
スオウはシンの背を大きな手で思いきり叩いた。




