3.ファニの攻防⑥
シンは留守を預かるマクヒルを討つことだけを考え、城の奥へと進んだ。
マクヒルのいそうな場所を思い浮かべる。
めったなことでは人に心を開かない兄のことを考えると、シンには兄がラダティスの居室や、まして自分の居室を他人に使わせるとは思えなかった。
シンは客間の並ぶ廊下へ向かった。
正面から数名の兵ががやって来る。彼らはたった一人で城を歩くシンを見て、足を止めた。
「何者だ? この騒ぎはお前の仕業か?」
「さっきの轟音は何だ?」
マクヒルの部下たちがシンに向かって叫ぶ。
シンは彼らを黙って見回した。
「誰であろうと、ここから先へは通さぬ」
正面にいた兵が剣を抜く。
「どけ、人を探している」
シンが口を開いた。
「何だと?」
「マクヒルはどこにいる?」
「ふざけるな」
剣を抜いた兵がシンに襲いかかった。これを切り捨てて、シンは残りの兵に目をやった。
「大変だ、何者かが侵入している。外は全滅だ」
「門が破られたぞ」
表から急を知らせる兵の声が聞こえる。
シンを取り囲んでいた兵たちが目の前の青年を不気味そうに見た。
「他にも仲間がいるはずだ。油断するな」
じわじわと後ずさりしながら、兵の一人が叫んだ。
後方から回廊を走る足音が聞こえてくる。城内にいた兵が騒ぎを聞きつけてきたのだ。
「外の兵が倒れているぞ。気をつけろ」
異常を知らせる声が響く。
「何をした? さっきまで何の異変もなかったのだぞ?」
シンと対峙していた兵が言った。
「これからこいつにしゃべらせてやる」
こう叫んだ兵の一人がシンに切りかかった。これを受けながら、シンの目は彼らの後から自分に向かってくる一団と、その中の一人の男を捕らえていた。
「何の騒ぎだ? 門を破り、城に入り込んだ者がいると聞こえたが?」
その男はシンの周りの兵を押しのけると、シンと、そこに切り伏せられている部下を見下ろした。
「ここのところクロシュの町が騒がしい。お前の仕業か?」
男はじっくりとシンを見た。
その目に驚きの色が浮かぶ。
「お前は、まさか……」
「私はラダティスの息子シンだ。お前がマクヒルか?」
「そうだ。そうか、お前がシン、か。スマンスに行けずに、ここで留守居だと聞いたときには心底がっかりしたが、こんな楽しみがあったとは」
マクヒルは嬉しそうにシンを見た。
「馬鹿な奴だ。何人で乗り込んだかは知らないが、そんな簡単にこの城が落ちるとでも思ったか? 世間知らずにも程があるってことをじっくり教えてやろう」
マクヒルは冷酷な笑みを浮かべた。
「おとなしく隠れていればもう少し長生きできたのにな」
マクヒルはシンの前にその大きな体を現すと剣を抜いた。
「悪いがその命をもらうのはこっちだ」
シンも血の滴る剣をマクヒルに向けた。




