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Bright Swords ブライトソード  作者: 榎戸曜子
Ⅲ.夜半の月
171/533

3.ファニの攻防⑥

 シンは留守を預かるマクヒルを討つことだけを考え、城の奥へと進んだ。

 マクヒルのいそうな場所を思い浮かべる。

 めったなことでは人に心を開かない兄のことを考えると、シンには兄がラダティスの居室や、まして自分の居室を他人に使わせるとは思えなかった。

 シンは客間の並ぶ廊下へ向かった。

 正面から数名の兵ががやって来る。彼らはたった一人で城を歩くシンを見て、足を止めた。

「何者だ? この騒ぎはお前の仕業か?」

「さっきの轟音は何だ?」

 マクヒルの部下たちがシンに向かって叫ぶ。

 シンは彼らを黙って見回した。

「誰であろうと、ここから先へは通さぬ」

 正面にいた兵が剣を抜く。

「どけ、人を探している」

 シンが口を開いた。

「何だと?」

「マクヒルはどこにいる?」

「ふざけるな」

 剣を抜いた兵がシンに襲いかかった。これを切り捨てて、シンは残りの兵に目をやった。

「大変だ、何者かが侵入している。外は全滅だ」

「門が破られたぞ」

 表から急を知らせる兵の声が聞こえる。

 シンを取り囲んでいた兵たちが目の前の青年を不気味そうに見た。

「他にも仲間がいるはずだ。油断するな」

 じわじわと後ずさりしながら、兵の一人が叫んだ。

 後方から回廊を走る足音が聞こえてくる。城内にいた兵が騒ぎを聞きつけてきたのだ。

「外の兵が倒れているぞ。気をつけろ」

 異常を知らせる声が響く。

「何をした? さっきまで何の異変もなかったのだぞ?」

 シンと対峙(たいじ)していた兵が言った。

「これからこいつにしゃべらせてやる」

 こう叫んだ兵の一人がシンに切りかかった。これを受けながら、シンの目は彼らの後から自分に向かってくる一団と、その中の一人の男を捕らえていた。


「何の騒ぎだ? 門を破り、城に入り込んだ者がいると聞こえたが?」

 その男はシンの周りの兵を押しのけると、シンと、そこに切り伏せられている部下を見下ろした。

「ここのところクロシュの町が騒がしい。お前の仕業か?」

 男はじっくりとシンを見た。

 その目に驚きの色が浮かぶ。

「お前は、まさか……」

「私はラダティスの息子シンだ。お前がマクヒルか?」

「そうだ。そうか、お前がシン、か。スマンスに行けずに、ここで留守居だと聞いたときには心底がっかりしたが、こんな楽しみがあったとは」

 マクヒルは嬉しそうにシンを見た。

「馬鹿な奴だ。何人で乗り込んだかは知らないが、そんな簡単にこの城が落ちるとでも思ったか? 世間知らずにも程があるってことをじっくり教えてやろう」

 マクヒルは冷酷な笑みを浮かべた。

「おとなしく隠れていればもう少し長生きできたのにな」

 マクヒルはシンの前にその大きな体を現すと剣を抜いた。

「悪いがその命をもらうのはこっちだ」

 シンも血の滴る剣をマクヒルに向けた。


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