1.クロシュの仲間③
「失礼いたします」
ミツキと入れ替わりに、商館の者がやって来てクロマ行きの船の支度ができたと伝えた。
「シン殿、船の支度が整ったようです。こちらもそろそろ出発です。さあ、馬車に乗って下さい。アイサ殿のベールはありますね?」
アイサの向かったというネル国の情報を引き出していたシンは、キアラの声に呼び戻されて目を開けた。
「グランよりさらに北のネルか。キアラ殿は訪れたことはある?」
「はい。一度ほど。あそこの風は突き刺さるようですよ。でもアイサ殿なら、きっとお元気でしょう」
キアラは明るく言った。
「別れたときは、ずいぶん怒っていたけれど……もともと、アイサはそんなにいつまでも一つの感情にとらわれているなんてことはないから。だけど、クルドゥリに残しておけば安心だと思ったのに、これじゃ、心配の種が増えてしまった」
シンは溜息をついた。
「シン殿は大丈夫だろうか? これから気を引き締めなければならないという時にあの様子では……」
キアラはそっとスオウに囁いた。
クルドゥリからサマイトまでの短い旅の間に、キアラはスオウに信頼を寄せるようになっていたのだ。
「心配は要らない」
旅の支度を確認していたスオウは、キアラに答えた。
「そういうこと。あいつは自分がやろうと思っていることを見失ったりしないさ」
シャギルも言った。
「シン様をよろしく頼む」
ストーが頭を下げる。
「わかっているわ」
ルリが頷いた。
「ビャクとアイサに負けているわけにもいかないしな。こっちはこっちで、どんどん片付けていこうぜ」
シャギルの声がシンに届いた。
(そうだ、クイヴルを取り戻す。そのために僕はここにいるのだ)
「スオウ、ストー先生も気をつけて」
シンはソファーから立ち上がった。
「お前こそな」
スオウは応え、シンに深く礼をとったストーと共に、一足先に商館を出て行った。




