CODE.9
いよっしゃああああ! 我、ふっかあぁつ!
えー、いるのかは知り得ませぬが、この連載の再開をお待ちいただいた皆様、お待たせしました。そして、これからも宜しくお願いします!
「フハハハハ! 先日の礼はさせてもらうぞぉぉ!」
「フン、貴様ら逆恨みに関しては見事な程だ。消えろ!」
アクトが放った氷の弾丸が敵の胴体に命中し、そのまま後ろに飛ぶように倒れる。
「貴様らに容赦はするなと許可が出ている。下手すれば死ぬぞ?」
炎の魔力を纏わせ、一対の剣を振るう。
「お前らは攻め方がひねくれ過ぎてるんだよ。逆にバレバレだバーカ」
無手だからと寄ってたかってきた敵兵を逆に吹き飛ばしていくゼルキス。しかし、その案は貴様の提案ではない。
「ふぅ……逆恨みとは見苦しいですね。いつもながらに低レベルな方々で」
いつも通りの笑顔と丁寧な口調から放たれるのは重い矢の一撃と見た目に反する辛口批判。相変わらず読めん男だ。
「ふぇぇぇ……一段と多いですねぇ。援護が忙しいです」
そうは言いつつもしっかりと援護をしてくれる。それによって力が湧いてきて、敵が斃れる頻度が上がる。
「むぅ……遠距離狙撃援護はやりやすいが……状況が分からんな」
風で敵兵が吹き飛んでいるのはデフィアの仕業だったか……恐らくは敵が多い為、狙いが適当でも当たるがそれ故に、ということだろう。
それぞれの部下も、しっかり私達についてきてくれている。それぞれが小さな円を組むように陣形をとり、決して背後をとらせない。少数精鋭だからこそ……一人でも多数でもないからこそ出来る作戦である。
「くっ、しかしこのままじゃ埒が明かないな……こっちにも被害が出始めているぞ?」
「ぬぅ……っ! よし、全員で大きめの円を組め! 第五隊と負傷者は円の中へ!」
私が焦りを感じる中、アクトはその焦りを上手く抑え込み、的確な指示を出す。
それに従い即座に円形に集まり、その中央に負傷者と援護部隊である第五隊が集まる。こうすれば負傷者の手当てをして復帰が望めるという事か……相変わらず、アクトの指揮能力は直属部隊でもトップクラスのようだ。
それでも、私達は被害をなくすことは出来ないでいた。戦争であるのだから当たり前だし、そもそも創設以来死人が出ていないこと自体が奇跡のようなものだが、今回はかなり厳しい状況だ。五分の二程が戦線を余儀なく離脱し、第五隊による早急かつ的確な処置を受けてはいるが戦線復帰には多少時間がかかり、その間に新たな負傷者を生んでしまう。
「く……流石に、きついですね。援軍はまだなのでしょうか……?」
口調こそ崩れてはいないが、今の曇天を映したかのように優れない顔色のセシア。それもそうだ、彼だって軽いとは言えかなりの量の傷を負っている。それは彼だけではなく、私も、それ以外の直属部隊全員がそうだ。
「援軍は期待しない方が良い。こちらより数が少ないとは言え、俺達や親衛隊以外の軍はそこまで強くない」
「……アクト、貴様嘘が下手になったか?」
「そうか? まあ、嘘半分真半分なんだがな。実際期待するよりは……」
確かに、彼の言うとおり無駄な期待はしない方が良い。しかし、それを拠り所にせねば隊員達の士気が持たないというのもまた事実。
そんな時、ふと私の耳に風切りのような……しかしそんな鋭いものではない音が入ってきた。
「うおぉぉぉらあぁぁぁぁっ!!!」
「うわあぁぁぁっ!?」
私達の目の前の敵を、そして空を覆う雲すら吹き飛ばしながら現れたのは、今ここにいるはずがなかった人物――――
「な……先生!?」
「おう……待たせたな」
ふっ、っと柔らかい笑みを浮かべ、こちらに向き直る先生。額に巻いた深緑のバンダナが最近のトレードマークであり、今はそれがとても頼もしく見えた。
「生きる為に戦うのが罪というなら……糧を得るのが罪というなら……俺は背負ってやる!」
「先生……」
なんと……彼は一人であの状態から立ち直ったというのか? とするとなるほど、人間というのは強い種なのだと実感する……
「いや、まじですまんな。じゃ……行きますかぁ!」
「て、テメェ何者だぁ!」
「ふむ……知らんのか? 残念な奴らだ」
「仕方なかろう、落ちこぼれてのし上がろうとすらしなかった奴らだ」
「ああ、確かに。落ちこぼれたとしても努力次第で何とかなるはず。それをしなかった。先生、この愚民共に容赦はする必要ないですよ」
「て、テメェらぁ!!」
「うるせっての。オラ、拳と拳で語り合ってみるか!? アァン!?」
「ふむ、彼らもだいぶ勢力は減りましたねぇ。撃退は……無理ですかね?」
「へ、へぇ!? な、何でですか?」
「あー……それもそうか。退かねえだろうからなぁ、この落ちこぼれ共は退き際を知らんからな」
「うるせぇぇぇぇぇぇ!! 調子に乗るんじゃねぇ!!!!!」
敵の安っぽい台詞を皮切りに、皆が緊張がほぐれたように敵を挑発し始める。簡単にその挑発に乗ってきた愚か者共は、その後悲惨な運命をたどることになるに違いない。いや、たどらせる。
そこから、私達の快進撃が始まった。敵を広範囲にて薙ぎ払う先生と、その横や背後からよる敵兵共を私達が殲滅する。私達の数倍はいた敵軍は、あっという間にその数を減らしていく。敵軍の士気は、みるみる内に下がって行った。