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 拓海が基地潜入している間の他の人達の行動、全く考えていなかった! というわけでちょっと難産でした……ということにしておいて下さい。

 先生が入院してから三日。何事もなく退院し、三日ぶりの先生直々の訓練となった。とはいえ、自主練の時にも最近はザゼンを組んでいた為、内容には大差ない。しかし、やはり指摘できる顧問がいるとなると中身がより濃くなるという事を実感した。

 そんな日の夜、私達が国王様にある通知を言い渡した。内容は、先生が「D-131」へ潜入し、対王国兵器を破壊しに行ったというもの。

「……いつも思いますが、常識外れですね」

「うむ……しかも今回は向こうから兵器の存在について知らされ、自分からいくと言い出した。いやはや、セシアより早く情報を掴むとは……」

 皆あきれた表情であるが……その裏、皆先生を信用しているのだ。でなければ、あきれ顔などでてくることは無い。

 だがしかし、先生がいないとなれば、こちらの防衛力はやはり弱くなる。なおかつ、もし向こうが先生の潜入に気付いてしまえば、こちらを襲撃する可能性が高い。潜入を大義名分に、ほぼ確実にこちらを襲ってくるだろう。それに備え、普段の警備兵だけではなく、私達もこの王都付近を警備する事になった。




 王都の南西を警備する事になり、砦付近を中心に警備しているとそこには予想どおり、普段からうろついている魔王軍兵士共が。森林にでも身を隠すならまだしも、ここは石でできた住宅地から少ししか離れていない為、とても目立っている。とりあえず砦を越えてあきらかに王国領土……いや、そもそも根本的なところに触れればこの大陸は本来全て王国の土地なのだが、とりあえず領地侵犯の為ご退場いただくべく忍び寄って剣の柄で気絶させる。その後砦にある留置場に預け、再び警備に戻る。


 その結果、魔王軍兵士十名あまりを発見し、全て留置場に預けてきた。いつもの警備兵曰く、少しだけ敵兵が多いらしい。ただ、先生の潜入がばれていれば隠れることなく襲ってくるだろうから、やはり兵器を隠すためなのだろうか。





 先生が帰って来たのは翌日だった。朝、まだ日が地平を離れて少ししか経っていない頃だ。私達が警備を終え、王城に帰ってきたころに丁度帰って来たらしい。

 すぐに国王の部屋に収集され、帰還報告が始まった。


 結果、兵器は施設もろとも魔力爆弾で破壊、消滅。当時勤務していた二百名あまりの研究員や兵士は死骸すらないらしい。まったく、セシアの隊の情報力には驚かされる。

「どうした?」

「え……?」

「いやなに、何か気が滅入ったような顔をしていたものだから、何かあったのかと……」

 確かに、先程から気が滅入っているというか、考え込んでいるというか、とにかく何かしら負の感情を抱いているらしい。

「いえ……流石に少し疲れてしまいまして。ちょっと大掛かりな技を使いまして……」

 ……多分嘘だ。となると、もしかすると、とある考えが浮かんできた。横にいるアクトや、隣の隣にいるイゼフも気付いているらしい。

「そうか……では、明日以降は少し休んでおきなさい。訓練の方も、顧問に頼りっぱなしではだめですからな」

「はい……ありがとうございます」


 帰還報告の会議が解散し、私達は国王様と側近の騎士を残して部屋を出る。そして、先の二人と一緒に少し先の角を曲がったところに集まった。

「なあ……先生、疲れているだけじゃあないだろう、あれ」

「同感だ。多分あれは……」

「や、やっぱりですか?」

 結局、私達は言うまでもなく先生の部屋へ行くことになった。

 先生の部屋は王城の離れにあたる場所にある。先生曰く広すぎる部屋は落ち着かない、とこの部屋を選んだらしい。木製の扉を前に、私達三人は唾を飲む。

 意を決して扉を二度叩く。

「誰だか知らんが……すまんが帰ってくれ」

「……先生……」

 中は明りが灯っておらず、陽の光は丁度窓に入ってこない時間である為、部屋は朝にもかかわらず薄暗かった。

「帰ってくれ……今の俺をお前達には見せたくない……」

 生気のない声は、先生の声には聞こえなかった。だが、ここで退く程覚悟が無いわけではない。

「先生、先生は……今まで誰かを殺すことはなかった……そうですね?」

「……」

 強引に私が確認をとると、部屋に重い沈黙が生まれ、その沈黙こそが答えになっている。

「そして、昨夜……」

 アクトが言うと、部屋の雰囲気はなお重くなったように感じる。まるで空気がこの部屋だけ重さを持つようだ。


「……俺の国の原則の一つにな、平和主義ってのがある」

 しばらくの沈黙の後、先生は静かに語りだした。先程の生気のなさと、どこか自分を嘲笑うような声だ。

「ある戦争をきっかけに出来たものでな、そのとき国は壊滅しかけていた。

 それ以来俺の国は戦争の破棄、軍隊の不保持を法で定めた」

 その語りに、私達は相槌をうつこともなく……いや、うつこともできず、静かにそれを聞いていた。

「その戦争終結は五十年近くも前。俺は戦争を知らない」

 驚いた。先生のいた国というのは、そんなに長い間戦争が無かったというのか……如何なる方法でそれを実現したのだろうか。とても気になるが、今はそれを気にするべきではないのは分かっている。

「俺はもう、戦いに赴く自信もないしいきたくもない……」

 ふう、とため息でもつくかのように言う先生の顔は見えなかった。だが……声からはとても普段の先生の顔は想像できなかった。

「先生……」

「いや、すまん。君たちにこんなことを話しても辛気くさいだけだな」

 見るからに無理やりだと分かる笑顔を浮かべ、彼はこちらに向き直った。

「先生、その……」

「いや、この話はもう終わりにしよう。さ、すまんがもう寝させてもらうよ」

 無理やり部屋から出され、私達は渋々それに従った。今はしばらくそっとしておいた方が良いのだろうと思ったのだ。


 だが、そんな暇を与えることなく、時というのは動いていたのだ……

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