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act.51

 大変お待たせしました。パソコンが復帰したので、ようやっと再開です。

「それで? 俺を探しに来た理由は?」

「聞いてないか? 俺が亡命したって」

「ああ……そういえば聞いている」

 噂にはなっているようだ。そりゃあ、自分で言うのもなんだがそれなりの有名人になった俺が王国から亡命したとあらば、噂にもなろう。そのために目立つように行動したりもしたしな。

「それで? どうしたいってんだ」

「そりゃ……あんたと協力関係を築こうと」

 わずかな間の後に、デーリムが素っ頓狂な声を上げた。声が大きすぎて、若干魔力をまとっていたため、まさしく「音が質量をもった」状態であった。

「バカ……声に魔力含ませんな!」

「……お前がそんな唐突なことを言い出すからだ」

 大きなため息をつきながら言ったデーリムは、心底あきれたといったような状態だ。まあ、そりゃそうだろうなぁ。かつてこの魔王軍を滅ぼす直前まで追い詰めたやつがいきなり協力申請だもんな。

「本来俺は王国軍に何の恩も忠もないんだよ。で、今回王国軍にいるのが嫌になってこっちに来たんだ」

 こいつは半分嘘じゃない。俺に王国軍への忠がないことは本当だ。ゼウスとテュポンに唆されてこっちに転移して、王国軍に加勢して魔王軍と戦った、ただそれだけ。そこには忠義はない。それに恩なんてありはしない。助けられたことはほとんどないし。

「しかし、協力といっても双方で協力するメリットは?」

「そうだな、俺は戦力を提供する代わりに、寝る場所と食事を求めよう。そっちは?」

「……お前が一緒に戦ってくれるならそれで十分だ。寝る場所はこの城でも構わないな?」

「ああ、構わない」

 その後いくつか細かい取決めや、魔王軍でのルールを聞いて、取引を終えた。



 翌日。早速魔王城にて目を覚ました俺は、魔王ことデーリムのもとへ向かう。基本的に、俺はデーリムの要請で出動するピンチヒッターのような役割だ。要請のあった場所にデーリムが出動命令を下し、俺はその場所で魔法による爆撃や攪乱などの支援を行い、必要なら撤退のための足止め、あるいは向こうの撤退を妨害する。

「で、早速来てみたわけだが、まだどこも要請はないだろ?」

「まさか。戦争そのものはお前がここに来ていた間にも続いている。早速ここへ向かってくれ」

 指し示された場所を見ると、丁度谷のような部分だ。両側は森を抱いた崖になっており、ここで魔王軍と王国軍がぶつかり合っているとのこと。狭い谷という地形上戦力差が表れにくく、戦況が泥沼化しているとのこと。

「わかった。俺はどうすればいい?」

「まず、真っ先に敵の戦線を崩してほしい。我々魔王軍が撤退するにせよ攻め込むにせよ、敵の戦線が崩れぬことにはこの地形では話にならない。方法は任せる」

「わかった……ふむ、相変わらず頭はキレるんだな」

「お互い様だろう」

 にやりと口角を上げるデーリム。多分、俺も同じようなことになっているはずだ。お互い腹の探り合いをし始めた……ということに気付いた。

「……とりあえず、行ってくるぞ」

「ああ、頼む」

 とりあえず、今はお互いに退く。相互利益のためにも。


 しかし、魔王城に入ったからには近いうちにニライアスと連絡を取らねば……まあ、アイツのことだからどっかでコンタクトを取ってくるはずだ。

「さて……久々に飛びますかね」

 風を纏い、地を蹴る。一瞬で体が加速し、魔王城が後ろに流れ去る。次々に風景が変わり、見る暇もなく後ろへと流れ去っていく。とはいえ、その景色を楽しもうという気は今はないのだが。

「っと、そろそろか?」

 速度を緩めてしばらく、眼下に緑色一色の土地と、その間をはしる谷が見え始めた。目的地に違いない、ここまで怒号が聞こえてくる。200m程の距離があるはずなので、俺は王国軍側に迂回しようとする。王国軍は王国に続く方向から攻めているはずだから、そちらへ回り込めば後ろをとれるはずだ。




「……ビンゴ!」

 思惑通り背後を取った俺は、早速蒼鬼と、いつかゼウス達から預けられたビームライフルを取り出す。どこにしまってたかって? 大人の事情だ。

「いっちょ暴れるか!」

 再び地を蹴り、蒼鬼の刃を媒体にしたものと、ビームライフルから射出された魔法で敵陣に攻撃を仕掛ける。さながら対地攻撃機のような方法で攻撃された王国軍は戦線があっけなく崩壊し、これを機に魔王軍が攻勢に出る。俺は方向を転換し、今度はシールドを取り出してビームライフルのみで攻撃を開始する。着弾点で(風の応用で)爆風が吹き荒れ、一撃で王国軍兵士が空を舞う。こちらにも向こうの注意が向いたらしく、魔力を纏った矢や弾がわんさか飛んでくる。基本的に動きながら攻撃して回避し、当たりそうなものだけシールドで防ぐ。流石100mmクラスの砲弾を防ぐだけはあり、シールドで受け止めてもなんともない。しかし動きは鈍るし、魔力耐性はないのであまり受け止めることを前提にしたくはない。魔力だけなら光の魔力で打ち消せるが、着弾の衝撃などは正直つらい。

「って、流石に目立ちすぎたか?」

 戦線を崩したはいいものの、今度は俺に向かって大量に攻撃が降り注ぎ始めた。津波のように押し寄せるそれらを、かわし切る自信も受け止める自信もない。だが、防ぐ自身はある。風を発生させ、強制的に攻撃を押しとどめる。弾き飛ばしたと同時に、ビームライフルをしまい蒼鬼を抜き魔力をためる。

「吹っ……飛べぇ!!」

 縦に大きく振りぬいた蒼鬼の刃から、雷と風の魔力の巨大な衝撃波が発生する。やけにゆっくりと感じた着弾までのコンマ数秒。切断することよりも爆散させることを目的としたその広範囲攻撃が爆発し、一気に王国軍の戦線が崩壊した。そして魔王軍が一気に攻め込み始めたのを見て、俺は撤退を開始する。





「……さて、どう出し抜いてやるか……」

 帰路で、俺はいかにデーリムを出し抜くか……その思案を巡らせていた。この計画でまさか本当にデーリムのお手伝いさんになる気はない。近いうちに必ず奴を始末して、俺が魔王に就く計画だ。おそらく俺が出し抜こうと企んでいることは向こうも気付いているだろうから、そうそう簡単にはいかないはずだ。とりあえずまずは、数回仕事をこなして信頼を得なければ話にならないだろう……

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