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 と、いうわけで山籠り編終了ですよ。やっとですよ……

 私が目を覚ましてから数分後、私は先生が寝ている部屋に来ていた。そこには私にこの部屋の事を教えてくれたイゼフとセシア以外の隊長の面々が集まっており、共通してかなしげな顔だった。

「レム……良かった、無事だったんだな」

 最初にこちらに気付いたデフィアが声をかけてくる。その声に皆の顔も幾らか安心を孕んだ。

「すまない……心配をかけた……」

 頭を下げ、皆に謝罪する。それに、多分私や先生を運んでくれたのも皆なのだろう。ならば、なおさら謝らねばならない。

「まったく、今更何を謝る事がある。そんな仲じゃないだろう。それに、悪いのは全面的に魔王軍だ」

「そうか……そういえば、その下衆は?」

「そうだな、今なら丁度体に杭でも打ちこまれているんじゃないか?」

「……は?」

「珍しく国王様がお怒りになってな。私情をはさんで拷問中だ」

 普段は温厚なあの国王様が……光景を思い浮かべるだけでもぞっとする。国王様は、一度怒りに染まるともう止めようがない。怒らせた相手を徹底的に追い詰め、自ら殺せと泣き叫ぶまでに追い詰める事もあった。しかもそれでは飽き足らず、殺さずに苦しみだけを与える為だけの毒まで開発させたのだ。我が主とはいえ、なんとも恐ろしい……


 その後先生の容体を皆から聞いた。どうやら内臓などは無事だったようで、あとは本人次第らしい……

 私が眠っていたのは約半日、毒が抜けるまでだったらしい。掠っただけだったので毒が入ったのが少量だったというのが幸いしたらしい。しかし、私が半日寝ていたという事は先生は同じ時間寝ていたということになる。皆が心配しているのも頷ける。無論、私もそれを聞いて不安がこみ上げてきている。大丈夫だろうか…………






 それから一日と半日。皆がとりあえずと昼食に出かけたが、どうも食欲が無かった私は、そのまま付き添う事にしていた……のだが。どうやら私は眠ってしまったらしい。寝ている時に、何かが動く気配……いや、感触を感じて、私は目をゆっくりと開く。そこには……


「……レム?」

 私は……多分とても情けない、というか、あほらしいというような表情をしていたと思う。

「先……生!! 良かっ……た! もう、二日っ、もっ、目を……覚まし、てっ……くれなかっ、た、からっ! も、もうっ……!」

 なぜなら、そう。そこには、先生が目を開けてくれていたのだから。

「あ……れ? 俺何で……」

「お、覚えていないんですか……?」

「う、うーん、ちょっと待ってくれ……」

 目頭に親指と人差し指をあて、少しだけ考える先生。

「あぁ、俺は確か矢を5本、腹部への突きを喰らって……!」

「そうです。付け加えるなら……私、を……庇っ……て……!」

 事実を思い出し、ついつい我慢していた涙が溢れてしまう……

「ほ、ホントに……スミマセンでした……!」

「あーいや、その……気にするな。それと、心配かけたな」

 優しい声で謝ってくれた先生。でも、それは先生から発せられるべきことではない。それを言葉にしようとした時……

「あ、いや、その……すまんかった。じゃ……!」

 いきなり扉の向こうから出てきたデフィアが、恐らくとてつもない勘違いをしていると悟る。

「私達はッ」「俺達は」

「そんな関係じゃないっ!!」「んな関係じゃねぇッ!!」

 と、いうわけで火炎と電撃を浴びせておいた。

「仲……良いじゃねえか……ぐぎゃあ!」

 なおも茶化そうとする愚か者に向かい、再び火炎と電撃が襲う。

「そういえば……一つ気になる事があるんだが」

「はい?」

「あの山籠りの時レムは剣を二本使ってたけど……俺と最初に戦った時は一本だったよね? あれは?」

「あ……私は両方のスタイルを状況で使い分けるんです。あの時も一応二本持っていたんですよ?」

「え、そなの?」

「はい。けど、やっぱり二本あると防御がしにくいですから……」

「なるほどねぇ。ってお前ら、何、来てくれたの?」

 その言葉で私は後ろを向く。すると、直属部隊の各隊隊長が来ていた。

「おぉ、目が覚めたんだな!」

「良かった良かった」

「二日間ずっと眠っていましたからねぇ」

「はぅぅ……良かったです!」


 皆が心から安心している顔になる。それぐらい……先生の事を心配していたのだ。先生の人望の一端を、垣間見た気がする。

 そんな事を思っていると、足元辺りで黒く煤けているデフィアに気がついたらしい。

「ああデフィア? デリカシーのない発言をした天罰を享受しただけだから気にするな」

「そうそう。悪いのはそこのコゲ」

 再びそこの愚か者への怒りがわき上がってきた。多分私は殺気を周囲にはなっているのだろうか、皆が少し引き気味だ……


「で、今後どうするんだ?」

「む、いつも通りだが?」

「いやいつもどおりって……動けなくね?」

「あ? あー……そういやそうか。まあ、俺がいなくてもできるだろ」

「技術指導その他は無理があ……」

「走りこみとかの基礎は」

 なんというか、立った今アクトの言葉を遮って絶望的な言葉を聞いたような……

「また……走りこみですか……」

「またって……山でだってたった数kmじゃないの」

 なんだろう、私は幻聴でも聞いているのだろうか。

「たった……」

「化物だ……」

「人間って全部そうなのか?」

「し、信じられない……」

「はぅぅ……」

「魔法でドーピングしてる……?」

「まてまてまて、お前ら軍人じゃないの!? 数km走るなんてフツーっしょ!?」

 その言葉を受け……セシアが皆の心を代弁してくれた。

「人間って恐ろしい……!」


「と、とにかく……じゃあ俺がベッドに縛り付けられている間は普段通り2km走やって、各自隊長が指示出して自主練習。それ位はできるだろ?」

 結局、それで皆納得した。未だ少し不安と絶望はあるが仕方が無い。



 その後は先生が質問攻めに遭っていたのは言うまでもないかもしれない。無論、私だって幾つかは質問したが、それでも少なかった。

 その後に先生が耐えかねたのか強引に私達を訓練の時間だと追い出していたのも、言うまでもないのだろう……結局その指示に従い、私達は自主連を重ねていた。

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