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 くっ、最近PCに触れる時間がほぼ無いっ! なぜだ、なぜこうも忙しいのだ!

 とうとう、国王直属部隊顧問と隊長による山籠りが開始された。一週間程の日程であり、事前に配られた冊子にはその行程がこれでもかと簡潔に記されていた。なんというか、訓練内容などには一切触れていない、というか触れる気もなかったようで、書いてあることといえばいつ出発して何処でやるか位だった。これなら口頭でいいのでは……




 初日からすべて、私達はほぼ走ることだけをさせられた。無論、多少組み手をやったりはしたし、全員でのザゼンも行ったりしたものの、この六日間で数時間だけだった。他にやったことと言えば持っていかなかった食料の現地調達など、生きていく為のものだった。なんというか、はっきり言うと何をしに行ったのか分からない……

 しかも先生の服装も服装だ。初日に、当然ながらに質問が出るような服装だったのだ。

「先生? なぜに迷彩服なので?」

「いや、これしか持ってないから……あとタキシード位だぞ? それに万が一敵さんの襲撃が無いとも限らん。備えあればなんとやら、だ」

 深い森にいるということで思いっきりツッコミたかったが……そこら辺は置いておこう。ちなみに既にアクトが突っ込んでいるというのもある。


 そんなこんなで六日目、つまり山籠り最後の夜。私達は先生の解散の合図で眠りについていた。

 カサリ、と微かに葉の揺れる音が聞こえ、次いで枝の折れる音が聞こえる。薄目をあけて私の愛用する二振りの剣を見やる。無駄な装飾など一切ない相棒は、寝る前に置いた枕元から少しも動いていない。いつでも手にとれる場所に手を置き直し、いつでも起き上がれるよう体を動かす。

 風を切る音が聞こえ、魔力で精製された矢が飛んだと理解した直後、その音源目掛けて遠距離攻撃を得意とするアクトが氷の弾丸を叩き込む。短く悲鳴が聞こえたのだから、恐らく当たったに違いない。

 アクトが行動に移る前に、先生は私達が起きていると悟っていたらしい。結局私達全員が起き上がったところ、鈍い足音を響かせながら召喚魔なのか、巨大な魔族七体が現れる。

「ふむ、七人か。よし、お前ら。一人一体な」

 拒否権など元々無いかのように決定し、先生の一番近くにいた獲物に向かい先生が走り出す。

「また……そんな無茶を……」

「ま、先生の無茶は今に始まった事ではない」

 肩をすくめつつ二振りの剣に手をかけ、私の一番近くにいた魔族に走っていく。他の皆も走りだしたようで、私達が集まっていた中央にある少しだけ開けた場所には誰もいなくなる。

「そう言う事。オラオラオラァ!」

「ふう……しかたない、全力で行かせてもらいましょう!」

「はわわ……ええと……えいっ!」

「修行の成果を試すと思えば苦じゃあないな。行くぞ!」


「はぁぁっ!」

 その巨体は剛力と引き換えに素早さを失っている。拳を振り上げたその隙にがら空きになった胴、そこに炎を纏う剣を連続で振るう。五本の紅い筋が刻まれ、一瞬の後に同じ色の血が吹き出る。地響きを立てながら沈んだその巨体に、真っ先に遠距離から倒していたらしいアクトが氷で拘束をかけていた。他の場所も同じく手足を氷漬けにしていっている。

 来た道を戻るべく、その道ともいえないような長さではあるそこを歩いて戻っていく。

「やるなぁ。よし、お前らよくやった。なんだ、思ったより修行の成果が出てるじゃないか」

「自分でもびっくりだ……あの巨人は俺達部隊が全員かかってももっと時間がかかっていたのに……」

 そんな会話をしていた時。私の目はこちらに向かって飛来する矢の姿を捉えていた。咄嗟に体をそらそうとするが遅かったらしく、私の左肩を掠めていく。

「くっ!?」

 高速で飛来した矢によって私は体勢を崩してしまった。自分と同じ炎属性だった為怪我は軽いが、それでも次は急所を狙うと言わんべく再び弦を絞っている音が聞こえる。

 それは思いのほか素早く、開始が私が体勢を崩すと同時だった為だろう。間に合わない――――そう確信した時だった。

 私の視界は見慣れた黒みがかった迷彩に覆われ、その正体をすぐに悟る。先生だ――――と。

 声をかける間も、体を動かす暇も全く与えてくれず、第二射、三射、と計五本の矢が飛来し、それを全て体で受けた先生。直後、音もたてず一人の男……恐らくは矢を先生に放った下衆であろう者が、黒みがかった短剣で先生の腹部を突き刺した。

 その間、恐らくはものの数秒だったであろうその時……私は、何も出来なかった。否、その後もしばらく動けなかったのだ。

「せ、先生!!」

「貴様ァ! よくも!!」

 怒りの声をあげ、ゼルキスがその下衆を吹き飛ばす。しかし……私はここまで来ても動くことができなかった。精神的なことでもある。先生は私を庇って倒れたのだし、それは私にとてつもない絶望感を感じさせる。ただ、それでも視界は歪まないし体も痺れない……手を伸ばす事も出来ず、私の視界は黒く染まっていった。





 私が目を覚ましたのは、あまり見慣れていない天井の部屋だった。近くにいた関係者に話を聞いた限り……どうもあの矢、魔法だけではなく毒まで塗ってあったらしい。なんというか、魔力だけのものに毒をぬるという離れ業をやってのけたのだから、それなりに腕は持っているのかもしれない。ちなみに、その下衆は監獄の中らしい。当然である。

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