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「それで……なぜ私だけなのでしょう?」

 国王様と対峙した私は、国王様の部屋にいつまでも誰も来ないことから、口を開いた。

「うむ……実は、他の者はまた別の用事がある。個別に呼び出そうと、な」

「そうでしたか」

「うむ。さて、用件なのだが……イチカワ タクミについて、だ」

「…………」

「実は、昨夜ついに魔王と対面、合流したと報せがあった」

「……もう、ですか……」

「うむぅ……しかし、いずれ避けられることでもなかった……そこでだ」

「はっ……」

「……最後のチャンスだ。これを逃せば機会は……いや、我が国が恐らく滅びる。次こそ……頼む」

「……はっ!」






 そして、王城を出発した私達。魔王軍との、いや、あの男との決戦へ向けての行軍中、私の頭の中を昨日の任務についての説明が過る。

『……私達の隊が単独で、ですか……?』

『うむ…………確かに、イース達も怪我が治り普段通り動けることが確実とは医者の弁である、が、彼女らも彼女らで、手が空いていないのだ……未だおさまらぬ国民の混乱、各所で頻発する紛争……もはや、戦力は不足にこそすれ余裕はありはしない……』

『それで、私達が単独で、と……』

『うむ……すまないとは思っている。だが、わしができることは、存外少なかった……許してくれ』

『許すも何もありませんよ。それで一つお聞きしたいのですが、やはり今回の一件は…………?』

『ああ…………捕縛などと考えてはいけない。これは――――殺しの任務となる』

 その言葉に黙ってしまった私。しかし、国王様はまだ続きがあったらしく、話を続ける。




「隊長、まだ魔王城に居ますかね?」

「さあな……もしかしたらいるかもしれないし、もしかしたらいないかもしれない……」

「あてがないですねー」

「……仕方がない……今回はそういった仕事だ。それに、こうして移動手段(馬車)があるだけ随分マシだろう?」

「確かにそうですね」

 苦笑しながら言うリィナ。私達はこの馬車の操縦を、その他は後方の警戒や中での待機であるため、自然と彼女との会話以外はなくなってくる。

 しばらく揺られ、交代を繰り返しながら進むことしばらく。既に魔王軍の領地に入った私達には次第に緊張が満ちはじめ、会話も少なくなってくる。日も沈みあたりは暗く、周りを照らすのは今日に限って細いムートの光のみ。それでも、逆に私達が見つかりにくいと考えるといいことなのかもしれない。極力広範囲への警戒を気配だけではあるが行いながら、昼間とは違いゆっくりと進んで行く。

 そんな時――――

「……隊長」

「分かっている。リィナ、馬車を頼む」

 こくり、と頷いたリィナを見て、二振りの剣を静かに抜き放ち、茂み目がけ思い切り地面を蹴る。その直後、私に気付いたらしいソレはガサガサと茂みを騒がせながら逃げようとするが、もう遅い。すぐさま剣の腹で殴って眠らせ、縛り上げる。無論、この後尋問するからだ。











 結局、彼等……エルフとヴァンプのコンビは、意外とあっさりと吐いてくれた。もっとも、聞いたことが「今イチカワ タクミは魔王城にいるのか」だったから、ということも大きいだろうが。それと、もう一つ情報を漏らしてくれた。と、いうのも、件の亡命の後、丁度私達が国王様から今の任務を預かる直前の頃、新たに亡命したニライアスというライオン種の男がいるという。最初は何だそんなことか、とも思ったが、詳しく聞くと無視はできそうになかった。と、いうのも、イチカワ タクミと共に魔王城へと赴き、今では両者でコンビを組んでいるという。しかもなかなかに強く、イチカワ タクミほどでもないが、あのジュイスとももしかしたらやり合えるかもしれない、とのことだ。

「隊長、大丈夫ですかね、あの情報の男?」

「さあ、な。だが、邪魔するようであれば……排除するしかあるまい」

 私の一言に、リィナが少し項垂れる。群青の髪が僅かに目にかかり、その瞳に悲しみの色が宿る。もとより、彼女は私の……いや、国王直属部隊の中でも心優しい者としてよく知られていた。別段普段目だったり会話に出るほどでもないが、この数年の間、イチカワ タクミの影響を多く受けてきた彼女は、より心優しさが強まった気がする。そんな彼女だからこそ、今こんな表情を作ることが出来る。私には、到底できないこと――――

「隊長、今、何かが……」

「……オブニィ、中の奴等も起こしておけ」

 オブニィの呼びかけに答える代りに、簡潔に指示を出す。その戦闘という意思を悟ってくれた彼は、こくりと小さく、しかし力強くうなずき、馬車の中で休眠をとっていた者達を起こす。

「隊長、この感じ……」

「…………ああ、嫌な予感しかしない。先程のエルフとヴァンプなぞ、これと比べれば……」

 森が宵闇の中騒がしく荒れ狂う。吹き荒れる風はまるで災厄を恐れる小動物の群れ。私達は――――――再び対峙することになった――――――――――

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