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 「A&A」Another最終話

 翌朝。私はいつもより数段早く起きたらしい。まだ空が赤く、日が昇ったばかりだと分かる。原因は簡単だ。自分の心が、先生の安否に関して焦っているのだ、と考える必要もないほどに分かる。いつ帰ってくるかも、そもそも帰ってくるかも分からない……味方が別行動をしている時のこの不安は、本当にいつまでたっても慣れる事はない。

「隊長、入ります」

「ああ」

 ノックの後に入ってきたのはフラックだった。数多いるビーストの中でも、珍しく魔法を得意とする彼は、ドラゴン種特有の舌をちらつかせながら報告を始めた。

「昨日の戦況、もう報告しました? あなたを探していたのですが……」

「……すまない、昨日報告をするのを忘れてしまったらしい」

 どれほど気が動転していたのだ、と自分を叱咤したい気分だ。いくら先生が心配とはいえ、自分の仕事すら忘れるとは……

「今から行ってくる。手を煩わせてすまない……」

「気にしないでください。それでは、私はこれで」

 廊下で反対方向に歩き始めた私達。彼がどこへ行ったかは知らないが。




 国王様はなぜか不在であったため、大臣に伝える。ついでになぜ国王様が不在なのかと問いかけたが、彼にも分からないと言っていた。一体、どこに行ったのだろうか。誘拐か、とも思ったが、国王様はあの年でありながらかなりの魔力を持っているため、そうそう捕まるようなこともないはず。新たな不安要素に私は更なる不安と焦りを覚えつつも、私は自室に戻り朝食を食べつつ、ただただ先生や仲間達の無事を祈ることしかできなかった。



「隊長! 帰ってきました!」

「本当か!」

 ベッドに腰掛け、不安と焦りを抑えていたところに、突然勢いよく開いたドアの向こうにいたフィルが、同じく勢いのついた口調で告げる。その報告に私は彼と共に駆け出し、王城を飛び出すように駆け抜ける。






 私がフィルに案内されたのは病院。そのことに、かなり大きな不安を覚える。

「おい、誰かがやられたのか!?」

「先生が……傷が深くて、助かるかどうか紙一重だそうです」

「く……っ!」

 急ぎ足で院内を歩く。額やこめかみに汗が流れているのが、自分でもわかる。フィルが入ってきたときの様に勢いよくドアを開ける。すると、ベッドに横たわり寝ている先生と、各部隊長達と一部の部下、そして国王様が立っていた。

「先生は……大丈夫なのか?」

「今のところ、どちらともいえないらしい。傷が深すぎるから、魔法治療も追い付かないそうだ。今は装置で継続的に魔法治癒を行っている状態だ」

 アクトが告げた言葉に、私は黙り込んだ。


 しばらくすると、担当の医師が部屋にやってきて、先生の様子を見る。

「……どうだ?」

「国王様……彼は、今のところ命を取り留めています。ですが、まだ油断はできないでしょう。そばにいてあげてください」

 そう言うと、その医師は先生に両の手をかざし、魔力をこめる。魔力が淡い光を放ち、先生の体へと吸い込まれる。

「……っふう……私の、ほとんどの魔力を彼にそそぎました。後は……そうですね、彼に呼びかけてあげてください」

 それを皮切りに、入れ代わり立ち代わりで先生を呼ぶ。国王様も、医師も。



「先生! 頼む……先生! 先生!!」

「先生! しっかりしてくれ!」

「うるせぇぇぇぇぇぇ!!!」

 突如、横たわっていたはずの先生が、布団を跳ね除け怒鳴る。その一瞬ともいうべき間に起こった出来事に、私達の思考は追い付かない。

「ったく、おめーらは人が気持よく寝てる時に……ったく」

 にやりと笑みを浮かべつつそう言われ、やっと私の思考は追い付きだした。

「生き……てる?」

「勝手に殺すな、レム。いや、死にかけたのは事実か……?」

「し、しかしあれは致命傷だったはず……?」

「いや、振り向いて右肺は貫かれたけど……」

 そこから、先生への質問の嵐になった。どうしてそんな丈夫なのか、だとか、どうやって魔王は倒したのか、だとか。ただ、私だけはどうしても脱力感が強すぎて、質問する余地がなかったのだが。





「しかし、これでやっと平和に……」

「いや、それは無い……」

 国王様が笑顔で言ったのを、先生は遮って否定した。

「多分……王位は継承済みだ……前回逃げた奴が、今回は命を捨てたのが良い証拠。多分次の魔王の障害を消そうと思ったんだろう」

「ぬぅ……平和はいつになったらやってくるというのか……」

「まあ……しばらくは侵攻もないでしょう。平和は……努力すればいずれ」

「確かに、のう。よし、お前達! 今宵は宴じゃ! 復帰祝いじゃぁぁぁぁぁ!!」

 珍しく……もなくはしゃぐ国王様。しかし、その宴の肝心要こと先生は、残念ではあるが今だ復帰していない。入院は確定的だ。必死に国王様をなだめすかし、どうにか先生の退院を待つことを納得してもらう。

 そのやり取りにくつくつと笑っていた先生を見て、私はなぜか非常に安心した。そうだ、これが私達の日常なのか、と。

 戦争という中にある、僅かな平和。私達は、まだまだ戦い続ける義務がある。それでも――――――――それでも、私達は常にこうやって、仲間と言う存在と共に歩んでいくのであろう。なぜだか、そう確信することが出来た。

 ここまでお読みいただいた方々、本当にありがとうございました。

 序章こと、Anotherは、ここで終わりです。次の章からこそが、本当の「続編」というべきなのでしょう。Anotherは、ぶっちゃけた話、ただの第三者であるレムの視点から、無印でのストーリーを追ったに過ぎません。しかし、次章から、彼女の視点でのオリジナルのストーリが展開されます。どうぞ、ご期待ください。

 ただ、次章を投稿する前に、一度プロットを見直したり、そのほか諸々、準備期間を設けさせていただきたいと思っております。一週間ほど、お時間をいただく予定です。どうか、ご理解とご了承、よろしくお願いいたします。

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