CODE.34
今回は少し短めです。
あの後。部下に指示を出した私は、そのまま部下と共に森に入った。余計な道を、岩や倒木を使ってふさぎ、次いで先生が開発したという、前回の魔王城戦で使用した魔力爆弾を仕掛けておく。時間ではなく、上を通ると爆発する改良型ではあるらしいが。
あらかた道を封じ終え、次いで道ではないが通れそうではあるような場所をつぶしていく。目星はついていたし、何より今回は敵の来る方向はある程度限られる。大人数ではない、少人数での戦い。それは私達の普段から行っている戦いだから、どんな戦略をとるか、ということが分かってくる。何より、今回は親衛隊のメンバーがいるから、私達の中での先入観は障害にならないと言っていいだろう。
「よし、そろそろ行くぞ。ああ、そうだ、お前達は親衛隊とはまだ顔を合わせていなかったか……この後会う予定だ。一応、知ってはいるだろうが顔を合わせておけ」
大事な時にコミュニケーションをとれなくては、共闘する意味は全くない。しかも、王城の本格的な守りは他の隊に数で守らせるべく、一か所に固めてある。こちらが数の有利を生かすべく敵の数を減らすなら、コミュニケーションをとって素早く行動せねばならない。あえて枝などを切りながら進んでいく。
「あの、隊長」
「どうした?」
「いえ、どうして枝を切りながら……?」
「こうすれば、奴等は自然とこの道を選ぶだろう」
「ああ、そういうことですか」
そう、一本だけ楽な道を自然を装って用意すれば、彼らはそこを通るはず。あまり普段からやるようなことではないが、今はそんなことを言っていられない。
「イトナ、待たせたか?」
「いえ、こちらも今。むしろ、こちらが待たせたかと思いましたよ」
森の出口で、お互いの部下を連れて待ち合わせていた私達は、確かに丁度ついたらしい。向こうも私達と同じようなことをしたためか、多少息が上がっているものがいる。
「それで、ここに居るということは?」
「ああ、終わった。道も、注文通りのルートで残してきた」
「ありがとうございます。さて、私達だけこう話すというのも味気ないですし」
「ああ、分かっている。そういえば、以前見た時より少なくないか……?」
「ええ、今は偵察に出ていますから」
「そうか。今いるのは……」
「今は四名ですよ。偵察を含めれば七名ですが」
「の、ようだな。では、こちらから紹介しよう。左からジェフ、リィナ、フラック、オブニィ、フィルだ。あと、私は知っていると思うが、この隊の隊長のレムだ。今回の防衛線、よろしく頼む」
「こちらこそ、ですよ。では、右からスリフ、ブルイ、リゥム、そして私が隊長のイトナです」
お互いに隊長から名だけを告げて簡潔に紹介を済ませる。時間もないし、何よりそんなことをしても今はあまり意味を持たない。
「ところで、属性編成を教えてもらっても?」
「私は火、あとはジェフが氷、リィナが風、フラックとフィルも火。それとオブニィは土だ。そちらは?」
「私は氷で、スリフ、リィム、そして偵察の二名が火。ブルイが風、あと偵察のもう一名が雷持ちです」
そうか、とだけ返し、私達は王城の方へと歩き始める。王城に集まるよう言ってある、他の兵士たちに作戦は告げてある。しかし、一度伝えなおすことと、何より士気を上げておかねば、ただでさえ危うい綱渡りのような戦であるのに更に不安要素を足すようなことになりかねない。
いつも通り、とてつもなく巨大な正門を潜り抜け、王城に入る。この門をくぐった後と前では、なんとなく空気が別物のように感じるのは、今だ慣れる事はない。しかし、それにも足を止めずに、兵士を集めさせてある広場へと向かう。既に集まっている兵士は整列済みで、縦横ほぼ同じ程度の人数がずらりとならんでいる。大よそ300程度の兵力ではあるが、向こうも本隊は寄越すはずもないし、こちらに回す兵力は最初の段階である程度先生達の相手をすることになる本隊にまわされるはずである。
私はそんな兵士達を一度見回し、小さく息を吸い込む。
「よく集まってくれた! 恐らく、魔王軍の襲撃は今日中ではないと思われる! しかし、警戒は怠るな! 偵察、歩哨を担当する者は交代で警備せよ! そして、実際に衝突した場合、事前に伝えたように一か所に兵力を集中しろ! いいか、今私達国王直属部隊のほとんどは、魔王城へと向かっている! 最終決戦へと向かったこの戦争、負けて王国を乗っ取られた状態で凱旋する彼らを迎えることなど、絶対に許されない! 皆、よろしく頼む!」
普段出すことのない大声でのそれに、兵士達は雄叫びを返してくれる。それを見て、私は踵を返した。