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 昼夜が三回ほど入れかわったころ、私達は森から魔王城にたどり着いた。白く、光を柔らかく反射するような王城とは対照的に、刺々しく黒い威圧感のある魔王城。

「……悪趣味だな」

「同意します。それで……どうします?」

「何が?」

「いや、何がって……作戦的な物は?」

「無いよ?」

 その予想外の答えに、私を含め周りのほぼ全員が素っ頓狂な声を上げる。敵の本拠地である魔王城。それを今から攻めるというのに、顧問である彼は考えることを私達にさせるようなことは無く、むしろ自分が作戦自体立てていないということが当然だというように言ってのける。

「いやちょっと待て! 流石にそれは無いだろう!」

「いやぁ、、先ず落ち着け。

 今回ばかりは……裏をかくこともできないし奇襲も不可能だ。正攻法しかないよ」

 なかなかに無理のある回答である気もするのだが、確かに一理ある。他も同じ考えに至ったのか、とりあえず頷きだけは返す。

「無論わざわざ目立つようにやるにも理由はある。が、まあ……とりあえず正門の守衛だけは俺だけで行く。合図送るまで待ってろよ」

 意味ありげなことを言い残し、雷を一筋だけ残して先生が正門前にでも飛んだらしい。私は、その正門の方向を向く。案の定、先生があっという間もなく敵を一人、また一人と沈黙させて正門を制圧するのが見える。

「相変わらず……無茶苦茶な戦闘力だ」

「確かに……」

 隣に立っていたデフィアが呆れたようにつぶやくのに、私は同意する。セシアやイゼフも口にはしないが同意しているらしい。手を振ってこちらに合図を送った先生を見て、私達は小高い丘状になっている木々が生えたそこから降り、先生の元へと駆け寄った。



「お待たせ。で、こっからだが……進入経路を話すから良く―――」

「おーい、待っとくれ。ワシも連れて行け!」

「うぉぉっ!?」

 とてもよく聞き覚えのある声に、先生が驚きの声を上げる。私達はと言えば、驚きすぎて声も出なかった。なんせ、その声の主は――――

「……一応お聞きします。何故国王様ともあろうお方がここにいるっ!?」

「ふむ、実はな……」

 最初の敬語を一遍も残さなかったその聞き方を華麗にスルーし、国王様が語りだした。




 内容と言えば、魔王の持つ闇属性についてだった。闇属性は、他の属性に対しほぼ無敵である。無論、魔力量に圧倒的な差があったりと他の要因があれば結果が変わることもあるが、闇属性というのは基本的に他属性を「染める」ことができる。闇に染められた属性や物体は「闇属性の物」となり、闇属性として己が魔力とすることができてしまう。しかし、それでも完全に無敵というわけでもない。闇と正反対の地位にあるとされる光属性。光属性もまた、他を「染める」性質があり、闇属性に対抗できる手段になる。また、一応伝承に残る無属性というのも対抗できる一つの属性らしいのだが、そもそも使える者がいるか以前に存在すら怪しい。

 そして、その光属性を持つ国王様がやってきたというわけだ。が――――

「待て待て待て……それはいくらなんでも危険すぎる!」

「そうですよ国王様! もし国王様に何かあったら……」

「安心せいよ。ワシとて直接戦うにはもう老いたと自負しておる……残念ではあるがな。それで、一つ対策を考えたのだよ」

「……対策?」

 言葉の意味が分からず、私はオウム返しになるが聞き返す。一体どんな策だというのだろうか?

「ワシの光を魔力の状態で誰かに授けようと思う。全てを授けることはできないが……さて、誰にするかの?」

 その言葉に、一斉に約一名を除いて視線が一か所に集まった。

「待てお前ら! そして落ち着け。俺が前線で戦い、後ろから狙撃するのも可能なんだぞ?」

「いえ、先生の底なしの魔力ならそれを通して光を増幅させることができるはずです……なら、先生しかいないかと」

 セシアの言葉に、先生は目を丸くする。

「……そんなことできるの?」

「確かにできる……だが光はかなり魔力を食うぞ?」

「ご回答感謝する国王様。だがまあ……そういうことなら良かろう。俺が担う」

 断ることを放棄したらしく、先生が両手を肩まで上げて折れた。


 国王様がその宣言に静かにうむ、と頷き、手にしている杖を掲げ目を瞑り、その杖の前には拳一握りより少し大きいサイズの光球がふわりと出来上がる。光属性の魔法は久しく見ていなかったが、やはりこの独特の感覚は忘れられない。

 目を開き、光球を確認した国王様が杖を振り、光球を先生の方へ移動させる。胸部に当たったそれは、すうっと壁を突き抜けるように先生の内部へ取り込まれる。

「これでもうお主は光を扱えるはずじゃ……」

「そうですか? ……あ、ホントだ」

 掌に小さな光球を作り出し、特に驚いたという感じではない声で感嘆する。

「おお、流石上手く使え……って今試してどうするぅぅぅ! 有限だと言っただろうが! 魔力消費多いって言っただろうが!!!」

「いやぁ……今だから言うけど、俺魔力は無限大なんで……」

 珍しく地団太を踏みながら怒る国王様に、先生はさらっととんでもないことを言い放った。それの重大さを示すように、氷のように空気が固まる。時が止まったと錯覚しそうなほどだ。

「と、とにかく……行くぞ!? じゃあ国王様、国の守り、お願いしますね」

「お、おう……」

 いたたまれなくなったというふうに先生が言った号令ともとれない号令と依頼に、国王様だけが何とか返す。


 そのまま、私達は力技で門をぶち破り、内部に正攻法(力押し)で乗り込んだ。

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