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 結局向こうが全員姿を現し、三十の数が私達を囲った。確かに戦力的にはきつい状態かもしれない。

「ククク、お前達のお陰で俺達の進軍は失敗……魔王様にお前達を消せと言われてな」

 明らかな逆恨みではあるが、以前襲ってきた輩よりは理由があるだけまだいいのかもしれない。もっとも、その理由だって下らなさすぎるのだが。ニヤニヤと厭味ったらしい笑みを浮かべながら言ったそのビースト、ライオン種の男は、セシアの弓で即座に射られて吹き飛んだ。

「全く、ただでさえ戦後で疲れてるというのに……飛んで火にいる夏の虫、というやつですかね」

 普段全くと言っていいほど怒ることがないセシアだが、疲れてカリカリとしていたのか普段の笑顔は消え抜き身のナイフのような印象を持たせる。

「中佐! 貴様ら……よくも!」

 一応、向こうにも魔王以外の軍事的地位は存在するらしい。とか、余計なことを考えていた。と、いうのも、向こうには攻める際の統率性など皆無で団体ではなくほぼ個人個人で動いているからだ。

「邪魔。俺腹減ってんのにさ……」

 心底どうでもいいと言わんばかりにひょいとランスを振ってエルフの三名を薙ぎ払う。彼にとって食欲に勝るものはないらしい。

「まあ邪魔なのに変わりは無いな。よし、暴れていいぞお前ら!」

 先生が私達をけしかけ、大抵の者(主に男衆)は武器を手に突っ込んでいく。


「まあお前ら、俺は火でも起こしておくから……その間にヨロシク。あ、ちょっとそこじゃま」

 ついでというようにビースト、オックス種の敵を吹き飛ばした先生をしり目に、私はため息を一つついた。

「レム、どうした?」

「……私にはああまでテンションの高い奴等にはついて行けん。はぁ……しょうがないか」

「諦めとけ。俺もあのテンションにはついていきにくいんだがな」

 苦笑しながら腰のホルスターから特有の魔法具を構えるアクト。剣を抜いた私も同じく、敵の集団に向かって突撃する。右から棍棒のようなものを振り下ろそうとしたそいつに、右の手に持った剣の柄で右頬に一撃をくれてやる。そのまま腹を蹴り、後ろに控えていた敵ごと吹き飛ばした後に空中から膝蹴りを見舞う。そのまま勢いを止めず前転し、背後から薙ぎ払われた剣閃を逃れる。起き上がってその攻撃の主、チーター種のビーストと対峙する。一瞬の後に地を蹴って突撃してきたその右腕を取り、前に転がすように背から叩きつける。激痛に顔をゆがめたところへとったままの腕をぐいと引き、勢いをつけて木に叩きつける。ずるずると落ちて気絶しているのを確かめ、そのまま後ろに歩み寄った二つの気配の頭部めがけて、振り返ることなく逆手に持ち直した剣の柄を叩きつける。どさりと聞こえた音に振り返り、その正体が気絶していることを確かめた。


「こんなものか……?」

 ざっと五名倒した私は、そうひとり呟いてさっと周囲を見回す。数名の兵士が残っているようだ。加勢しようかとしたその時、その緊張に合わない声が聞こえる。

「おーい終わった? こっちはもう火着いたけど」

「すまん、後二人だ」

「あ―? じゃいいよ俺がやっから。ほっ」

 後ろからで表情はわからなかったが、おそらくかなりめんどくささが前面に押し出ていたに違いない。

「さて……飯にすんぞ~」

 そういって視線を上げた(らしい)先生は、そのあとに何か言おうとしていたのだろうが、そこから何も発さない。気持ちはわかる、私とて、目の前に広がる光景に言葉を失っているから。

「……ちょっと聞いていいかな?」

「なんでしょうイチカワ様?」

「これは何が起こった!? あ、ついでに俺はタクミでいいから。様はいらんよ」

「ついでなんですか、呼び名……」

 ついつい心の中の声が出てしまった。そもそもこの部隊の中で先生を「先生」以外に呼ぶ人が(第七隊を除き)誰もいないというのは言わなくてもいいのだろうか。

「単に彼らを魔法で吹き飛ばしただけですよ。数名が飯を邪魔されたーなんて暴れてましたが」

 ため息混じりに伝えると、心底呆れたといった表情が私以外に先生を加えて二名になった。この気持ちの理解者がいてうれしい限りだ。

「…………とりあえず夕食にしよっか―」

 私の背中越しに部下たちが帰ってきたのが見えたのか、先生は現実逃避に近いことを言い始めた。私としてもそうしたい気分であったので、ため息を最後に一つ吐いて賛成した。

 そもそも、よくこんな木が吹き飛び地面がえぐれているような場所で起こした火が消えていなかったものである……が、あえて気にしないこととした。



 夕食で先生が(再び)蛇を食べて私達がぞっとした以外、特に何事もなくゆったりとした時間を過ごすことができた。と、言っても、それを「何事もなかった」というかは微妙であるが。

 そんな食後の時間。

「先生先生」

「なんだイース?」

「ええとですね、誰か後ろにいらっしゃいますが」

「は? ってうぉぉぉぉ!?」

 先生の後ろにいつの間にか立っていたのは、生気を感じない貴族らしきエルフ。貴族は魔王軍側には存在しないので、ほぼ確実に王国の誰かだ。土がついて汚れた衣服であることから、何かから逃げていたのだろうか。

「た、助け……」

 最後まで告げることなく、そのエルフは気を失う。

「お、おい! ちっ……誰か、水飲ませてやれ。それと何かの気配を感じる奴はいるか!?」

「え、ええと……向こうの方に何か肉食類の気配が幾つか……む、群れの様です」

 水をその貴族に飲ませながら、気配を察知したイゼフが報告する。気絶してはいるものの、何とか水を飲むくらいには意識はあるらしい。行き倒れに近いと言えばいいか。

「分かった……とりあえず俺が行って来る。後……第三隊、ついてきてくれ。バックアップ頼んだぞ」

 事態の緊急性を感じ、先生がいつものおちゃらけた雰囲気を全く感じさせない声でゼルキス達を呼ぶ。そのまま、彼らを従えて暗い森に消えていった。



「大丈夫かな? 先生」

「さあ……ゼルキスは力任せだからな……」

「私達なら『音』でわかるんですけどね。タイガー種は鼻がいいですが……さあ、どうしたものですかね」

「あ、あの……ホントに大丈夫なんですか? それ……」

「……ま、先生もいるし大丈夫だろーよ」

「先生がいれば、確かにあれは……」

 そういえば、イースはこの前の砦での戦闘で初めて先生の戦い方を見たのだったか。先生が本気を出せば、おそらくこの森一帯は一瞬で荒れ地になる位だから大丈夫だろうが。

 そんな談義をしていた私達の耳に、エルフである私やセシア以外にもしっかりと聞こえるほどの音量の音が響く。地を揺らしたようなその音は、直後の森に静寂をもたらした。

「……何があった?」

「……イゼフ、分かるか?」

「え、えと……あ、あれ? 群れが引いていく……?」

 困惑をみせるイゼフに、それが伝染するように困惑顔になる面々。


 しばらくと立たないうち、その原因と思われる先生と第三隊の面々が帰ってきた。

 その時に何をしたのか聞いてみたら、何のことは無い。ゼルキスが全力で地面を殴ったらしい。それであんなに轟音が聞こえたというと不思議だが、あの筋力は正直すさまじいの一言なので全員が半信半疑ではあるが納得したらしい。無論、私もその一人だ……

 そういえば、ですが、拓海の訓練では組手の時にCQCを教えています。組手といっても拓海とじゃなく、それぞれがペアを組む方のですが。だから以前に拓海のCQCを返したり今回レムが実戦で使えました…………別に解説するまでもないですかね?

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