CODE.14
更新延期、申し訳ございませんでした!
私は今、ここ最近行くことがほとんどなかった国王様の部屋へ向かっている。無論、国王様の「プライベート」な部屋ではなく、「仕事用」の部屋だ。この城にはいわゆる「謁見の間」などは存在しないために、国王の執務室を使うのだ。
始まりは今朝、私の部下の中年男性隊員、ジーガが告げたことだ。国王様が私達各部隊の隊長、そして先生を呼んでいるとのことで、私は取り終えたばかりの朝食の食器を手早く片付けるとすぐに着替え、部屋を後にして今に至る。国王様と何か話をしたりする際、流石に軍服以外は軍人としてやってはいけない気がする。国王直属舞台である我々ならなおさらだ。
王城の中心付近にあるその部屋。数分をかけて到着し、扉の両隣にいるそれなりの重装備をした兵に門を開けるよう頼む。重い扉特有の地響きのような音とともに扉が開き、私は国王様が座っている机の対面、そこから少し距離を取ったところにいつも通り直立した。ほどなく全員到着し、横一列に並ぶ。
「おお、よく来てくれたな。それで、だ……」
「何でしょう?」
「ある場所が魔王軍の重要な武具倉庫になっているらしくてな、そこを叩いて欲しい」
「えーと……一応聞きますが拒否権は?」
唐突にそんなことを聞き出したのは、なんとなく最近恒例化している気がする先生だった。最近、彼のさぼり癖が周知の沙汰となっているのを彼は知っているのだろうか。
「一応主はこの国に籍をおいとるよな?」
何だ唐突に? そんな顔をしているが、そもそも唐突な切り出し方をしているのは先生のほうなので私達は気にしない。
「はいまあ」
「となるとこの国の法が適用されるというのは確実という訳だが……」
国王様も今回は拒否させたくないらしい。いや、今回「も」か。完全に退路を塞ぎにかかっている。
「王族命令拒否はこの国では王族に対する不敬罪に値するぞ?」
「喜んでやらせて頂きましょう!」
その態度の豹変ぶりに、思わずこけそうになった。ちなみに隣でアクトがこけている。
「で、だ。今回二つ程隊を従えていくと良い。流石に一人ではきつかろう」
「そうですか? では……魔法具を扱う事に慣れている第一隊と第二隊をお願いしておきましょう」
「え! お、おいおい俺の隊は?」
「黙れ筋肉バカ! 貴様の隊は確かに攻撃向きだが……万が一ここに魔王軍が攻めてきた時攻撃向きの隊がいなかったらキツイだろ?」
「な、なるほど……確かにそうだ」
……軽くあしらわれている……そうか、先生ももうゼルキスをあしらう方法を習得したのか……そう、彼はほめつつ軽く受け流すとあっさり引っかかってくれるタイプだ。だから大抵国王直属部隊の面々はその方法を習得している。
に、しても。こちらから襲撃とは珍しい。何かあったのだろうか。
「で、何故にこんな上空にいるのです?」
私は素直に疑問をぶつけた。なんせ、一切説明もされず先生の指示でなんだかわからない金属の塊に乗せられたと思ったらいきなり飛び出したのだ。これくらい至極当然どころかしないほうがおかしいと思われる。
「なんでって……飛び降りっからだけど?」
「いや……俺ら飛べねーぞ!?」
「大丈夫、お前ら飛べなくてもゆっくり下りるように位はできるから」
はっきり言うと、全く分からない。そんな考えが表情に出ていたのだろう、先生もそれを悟ったらしい。
「どーゆーことです?」
「空気抵抗を増やし……ってわかんねーよな……うーん、空気を掴む翼みたいなのをつけるんだよ。そうすりゃゆっくり降りることになるから、怪我もせん」
一応聞いてみたが、全くと言っていいほどわからなかった。空気抵抗云々はもちろん、そもそも翼をつけるというのはどういうことなのだろう?
「じゃ、テュポーン。聞いてっかー?」
突如、左耳を人差し指と中指で抑えて話し始めた先生。どうも相手は私たち以外らしいが……
「まーそうかな。で、今からやること分かるんでしょ? ナビゲートよろしく!」
…………正直に言おう、何がしたいのだろう? 今この状況で一人芝居というのは、私、いや私達には理解できなかった。
「先生? どうしました?」
「てゆーか誰と話してたのさ?」
「え? あ、ああ。コイツは無線機つってな。まあ……こっちの世界じゃあんまし使えないがまあ……別に一人芝居じゃないから気にすんな」
そういう先生ではあったが、きっと私達の目から軽蔑のような念が消えてないのを悟ったのだろう、金属の塊の中に、冷ややかな、そして気まずい沈黙が流れた。
「さて、拓海以外の十二人、聞こえるかい?」
「おお、なんだこれは?」
「だ、誰だ!? 何処からだ!?」
言われるがまま準備していたところに、いきなり私達が聞いた声。その正体を探るべく周囲を見回すが、先生やアクト、そしてそれぞれの部下しかいない。
「ま、それはおいといて。で、今から君達には飛んでもらうから」
「ま、お前らも覚悟決めとけ。てか慣れれば気持ち良いから」
「じゃ、後部ハッチに立て。先ず拓海、お前手本示しやがれ」
「あいよ。お前らもこい。じゃ、行くぞー」
「鳥になってこい。幸運を祈る!」
そういって、先生はいきなり飛び降りた――――