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タヌキ令嬢マヨの完璧な作戦 ~どうもタヌキです。貴族令嬢に化けたら辺境の公爵様に嫁がされました~  作者: 伊賀海栗


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第9話 また尻尾が出てる


 手紙を携えて飛んできた鳥に再び別の手紙を括り付け、窓から飛ばす。それを2度繰り返して一息ついたところに、さらに人間の伝令が城へと飛び込んできた。


 まったく、忙しくて困るね。今日はまだマヨと顔を合わせてすらいないというのに。


「報告します。オクディーラ伯爵が当地へ向け出発。恐らく到着は今夜……あるいは明日になるかと。報告用の伝令鳥が出払っておりましたため、ギリギリのご報告となっております」

「えぇ……。伯爵からの連絡は何もないけれど、それは確かなのかな」

「はい。出発の前日には正体不明の男が2名、伯爵家の屋敷を訪れており、その関係かと。男の身元などは現在調査中です」

「あー、ね。うん、了解。身元調査はこちらで引き受けると陛下に伝えてもらえるかな?」


 伝令はひとつ頭を下げて足早に立ち去った。


 あれは王家側の調査員だからね、化けタヌキという不確定要素が入り込んだ今、あまり首を突っ込んでもらいたくはない、かな。


 陛下が化けタヌキの存在を知れば我が物としたがるだろうし。それでマヨを取り上げられては困ってしまうから。



 伝令鳥――要するにわたしの使い魔――が運んだ手紙を2通並べる。


 ひとつは陛下からで、オクディーラの娘ティーカを捕らえたという連絡だ。公爵家へ嫁ぐようにとの君命を聞かず国外へ出ようとしたのだから、背信の意ありとして収監しているらしい。


 陛下はすぐにもオクディーラ伯爵を召し出して事情を聞きたいと仰せだけど、しばし待っていただく。


 もうひとつはセホーとは別の、わたしの部下から。こちらはオクディーラを訪ねた者について全て調べるよう命じていたのだけど……。


『追跡の途中で煙のように消失』


 先ほどの伝令が言っていた、正体不明の男たちのことだ。わたしの部下を撒いてみせただけでなく、煙のようにと言われれば、やはりタヌキだろうね。


 つまりタヌキとオクディーラが接触していることは間違いない。さらにタヌキと会った直後にオクディーラがこちらへやって来ようというのだから、警戒度は一段増すね。



 わたしにわかっているのは、まず第一にオクディーラが他国と通じているということ。ただし情報を売るだけの小銭稼ぎか、それとも国を乗っ取るつもりか、その目的は不明。


 ふたつ。オクディーラは娘と偽ってマヨを寄越し、さらに化けタヌキの一味と繋がりがあるということ。その事実だけを考慮すれば、化けタヌキたちはオクディーラに協力していると考えるべきだけれど……マヨの反応がそれを否定する。だから今のところは不明、としておこうか。


 タヌキのことさえなければ、オクディーラを処罰して解決、なのだけど。化けタヌキたち全てが敵だとすれば厄介だ。


 特にギヨーブ。東方で神と崇められたタヌキだ、できれば敵に回したくはないというものだよ。それに……あの可愛い化けタヌキも、ね。


「さて、どうやって愛らしいオモチャを手元に置いておこうか」


 ギヨーブにはマヨとの結婚についてお伺いをたて、式に招待もした。承諾の返信をもらったのだからマヨだけは手元に残せると信じているけれど。


 しかし王家の介入があれば話は変わる。あるいは、化けタヌキの一族と戦争にでもなればマヨは一族のもとへ戻るかもしれない。


 手紙を畳んで机の引き出しに放り込み、クッキーの載った皿を手に取った。

 情報が少なすぎるし、これ以上は考えるだけ無駄だ。それよりもまず、マヨの胃袋を掴んでおくべき、かな。


「ティーカ嬢、少しいいかな」

「は……はいっ!」


 隣室の扉を控えめに叩けば、慌てたような声。

 昨夜は元気がなさそうに見えたけれど、声に張りもあるし体調不良というわけではなさそうだ。


「おや。起こしてしまったかな?」


 とはいえ、室内を覗けば彼女はベッドで正座していた。うたた寝をしていたのかもしれないけれど、なぜ正座なのだろう。しかも尻尾が出てる。


 こんな小さなことからわたしの意表を突いてくれるのだから、興味が尽きないね。


 大丈夫だと答える彼女に軽く頷きながらソファーへ掛け、マヨ、もといティーカ嬢にも対面へ座るよう促した。尻尾が出ているのだから大丈夫ではないと思うけれど。


 ティーカ嬢の視線はソファーへ座る前からクッキーに釘付けだ。


「ふふ、食べていいよ。そのために持って来たのだからね」

「いただきます」

「実は先ほど報せがあってね。オクディーラ伯爵がこちらに向かっているらしい」

「え」

「伯爵の到着は恐らく明日か……早ければ今夜。急なことで困ってしまうね。普通は伯爵本人から事前に伺いがあって然るべきなのだけど、それもない。何か事情がありそうだ」


 今まで、ティーカ嬢にオクディーラの話題を振っても反応は薄かった。


 彼女がぎこちない反応を示すのは大抵、タヌキの話題のときくらいだ。けれどいま現在の彼女は少々……落ち着きがないように感じる。ポカンと開いた口から食べかけのクッキーが落ちた。


「何しに来るんですか」

「おや。異なことを言うね。あなたのお父上だろうに。それに彼が『すぐに会いに行くと言っていた』と言ったのはあなただよ」

「……たしかに?」


 ううん、やはり判断に迷うね。


 魔法を用いて無理に真実を吐かせることもできるけれど、信頼関係を損ないたくはないし。

 マヨは敵か味方か――。混沌をもたらす者ではあれど、その性根は善だろう。だからといって味方とは限らない。


 オクディーラが来たら、事態も大きく動きそうだ。




 


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― 新着の感想 ―
ξ˚⊿˚)ξ王家の介入でわちゃわちゃする第二部の執筆はよ。 王家直轄地にはここよりも美味なるブルーベリーが 行きます! はよ。
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