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タヌキ令嬢マヨの完璧な作戦 ~どうもタヌキです。貴族令嬢に化けたら辺境の公爵様に嫁がされました~  作者: 伊賀海栗


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第7話 並走こわい!


 夕食の後にお庭でセーレイとお喋りする……という日課が始まってから、どれくらいたったでしょうか。日中はお昼寝したりセーレイと遊んだり、夜はセーレイとお喋りしながらブルーベリー!


 ティーカお嬢さんの言う通り、こちらのブルーベリーはめちゃくちゃ美味しいです! だから秋まではここにいるつもり。一族にも知らせたいのですが、ティーカお嬢さんの振りをする仕事が終わってからじゃないと。


 でもいつまでお嬢さんの振りをしたらいいのかなぁ……?



 さっきまでお昼寝していたのですが、目が覚めちゃったのでタヌキ姿で日光浴。お庭をポテポテ歩いていると、2階の窓にお仕事中のセーレイの姿が見えました。


 最近は、私も以前会ったことのあるセホーとかいうおじさんとよく連絡をとっているそうです。セホーはたまに甘いトウモロコシを持って会いに来てくれる。


 トウモロコシは嬉しいけど、おじさんのネットリした視線はちょっと嫌です。もしかしてタヌキがご趣味なんでしょうか。



 あっ。セーレイと目が合いました。セーレイだ! セーレイは好きです、優しいし美味しいものくれる。この前はピクニックに連れていってくれました。そこで食べた野生のミラベルが美味しくて。


 ミラベルってプラムだよってセーレイは言ってたけど、全然酸っぱくない。世界中のプラムがミラベルになっちゃえばい――。

 蝶々だ! 可愛い!


 キラキラしてパタパタして、粉っぽいのがアレですけど、食感がいいんですよね。小さくてお腹の足しにならないので、よほど食べ物に困ったときにしか食べませんけど。


 どこに行くんだろう、捕まえられそうで届かないのがもどかしいです。それでついムキになっちゃう。




 ……あれ。ここはどこですか。

 蝶々を追っているうちに気が付けば見知らぬ場所です。いつの間にか城の敷地を出てしまったみたい。周囲を見回せば畑ばかり。人間のおうちもチラホラ見えます。


 ただ日も落ちてきて薄暗くなりつつあり、人間の姿はありません。鼻に意識を集中させても、風上にいるのか城の匂いはあまり感じないし。じゃあ風下に向かえばいいのかな。


 てってこ歩き始めたはいいものの、なんだか急に心細くなってしまいました。


 この土地に来てから城の外を探検したことはないし、なんだかんだと言ってもセーレイのそばから離れたこともありません。


 クマやオオカミがいるかもしれないし、空で旋回するカラスがこっちを見ている気がします。それに……。


「おい、そこの犬、どけ! ……犬、か?」


 なんと馬が2頭、馬車を引いて私の後ろをついてくるのです。

 もうずっと付いてくる。なにこれ怖。


「そんな顔でこっち見んな、追いかけてるわけじゃねぇよ」


 馬を操る人間が何か言っています。

 じゃあなんでついてくるの。怖い。


「ああもう、止まっててやるから今のうちにどっか行ってくれ」


 あれ、止まった。

 そこに何かあるんでしょうか。気になってそばに近寄ってみると、馬が鼻先で私を小突きました。ひどい。


「違う違う、こっち来るな。畑のほうに逸れろっつってんの」


 畑って、これのことでしょうか?


 ちょっと道の脇にある畑の様子を窺ってみたのですが、ううん、こっちは歩きにくそう。やっぱりちゃんと舗装されているほうが楽ですね。人間と馬こそ畑に入ればいいのに。


 私が歩き出すと、人間と馬はまた後をついてきました。意味不明すぎて本当に怖い。こんなとき、セーレイがいたらすぐ抱っこしてくれるのに!


 必死になって馬から逃げること数分。

 疲れてきた頃に、今度は前方から怒涛の勢いで走る馬の気配がしました。なになになに、怖い。


 思わず立ち止まった私のところへ、馬は勢いを落とさぬまま近づいてきます。あわや踏みつぶされるかと思ったその瞬間、馬はいななきながら前足を大きく上げたのです。もう無理!


 死ぬーって思ったら魂が抜けてしまいました。

 ぽてっと後ろに倒れて気絶です。気付いたら温かい腕に包まれていて、絶対に極楽浄土に到達したんだろうなって。思ったのに。


「どうりで進みが遅かったわけですな」

「ふふ。馬に追い回されてさぞ怖かったろうね」

「冤罪。冤罪ですぞ。そういう閣下だって、馬で脅かしていたではありませんか」


 どうやら私はセーレイの腕の中にいるようでした。

 辺りを見回せば、そこは城の応接室で。セーレイの対面にはセホーがいます。今日はトウモロコシあるかな。


 とにかく帰って来られてよかった。怖いのでしばらくは寝たふりをして腕の中に居座ろうと思います。


「それで、状況は?」

「伯爵家から真夜中に謎の馬車が出立いたしましたが……こちらは王家が対応したようですな。恐らく娘をよそにやろうとしたのでしょう。また、閣下から預かった手紙は手筈通りに」

「ありがとう」

「しかし、返事として寄越されたのはこの葉っぱ1枚ですぞ。よもや揶揄われては――」

「いいや、合ってるよ。完璧な仕事をしてくれて感謝する」


 セーレイの手に渡った葉っぱは、どこか懐かしい匂いがしました。


 我が一族の古い流儀で……「了解」を意味する葉だったと思うのですが。とはいえ、今の時代にこんなことをするタヌキがいるとは思えません。


「これが何かわかる、のかな?」


 葉っぱをクンクンする私にセーレイが笑いかけたのでした。




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― 新着の感想 ―
たぬき…なんてどんくさい…どうやって生存してるんすかねほんとに。
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