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タヌキ令嬢マヨの完璧な作戦 ~どうもタヌキです。貴族令嬢に化けたら辺境の公爵様に嫁がされました~  作者: 伊賀海栗


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第4話 妖術ばっかり!

本日1/2回目の更新です


 私の完璧な作戦により、セーレイはタヌキ姿の私を、ティーカお嬢さんのペットだと信じたみたいです。


 従者たちにもそのように説明してくれたので、素の姿でお城の中を探検し放題! 使用人の皆さんはお菓子もくれるし最高です。


 着々と任務を遂行する私はやはりエリートタヌキ。あとはブルーベリーさえ見つかれば。


 というわけでブルーベリーを探しにお庭へ出たところ、突然世界が上下逆さまになってしまいました。天変地異です。妖術です。身動きがまったくとれなくて、エリートタヌキもここまでか……と覚悟を決めたところに、逆さまのセーレイが登場。


 まさかこれはセーレイの使う妖術でしょうか。油断したところを狙うとはなんたる卑怯か!


「おや。何か怒っているように見えるね」

「これは威嚇ですぞ」


 そうです。私は怒っているのです……っていうか誰ですかこのおじさんは。まぁいいけど。


 セーレイは怒る私を恐れもせず、逆さまにする妖術を解いてくれました。腕の中で撫でながら「怖かったねごめんね」と謝ってくれたので、術の対象は私じゃなかったのかもしれません。


 しかもホクホクのお芋をくれました。なんだコレ、美味しい。


 うん。そりゃそうですよね、タヌキを罠にかけようなんて普通は考えないんですよ。何かの間違いなら仕方ないので許してあげます。


「餌付け成功ですな。しかしご油断召されるな」

「ふふふ。大丈夫だとは思うけれどね。肝に銘じておくよ、ありがとう」


 おじさんはそのまま帰ってしまい、私はセーレイに連れられてお部屋に戻ります。今日はホクホクのお芋があるし、探検はまた今度です。


 ティーカお嬢さんの部屋の前で足を止めたセーレイは、ノックの返事がないとみると薄く扉を開けました。


「ティーカ嬢は午睡のようだね。起きたらわたしの部屋へ来るよう、伝えておいてくれるかな」


 そう言って私を床へ降ろし、扉の隙間から中へ入るよう促します。

 美味しいお芋をくれましたから、伝言くらいお手の物です。といっても、本人にはすでに伝わってるんですけどね。



 ティーカお嬢さんに化け、使用人さんを呼んでドレスを着せてもらいます。

 人間というのはどうしてひとりで着られないドレスなんか作るんでしょうか、理解に苦しみます。


 使用人さんはタヌキの姿がなくて残念がっていましたので、お芋をくれたら喜ぶと思いますと伝えておきました。これでいつでもお芋が食べられます。我ながら頭がいい。


 準備が整うと、早速お約束通りセーレイの部屋へ。


「ふふふ。まさか本当に来るとは、ね」

「呼んだのはセーレイなのに、どうして笑うんですか」


 未だクスクス笑いながらも、セーレイは私をソファーに座るよう手で促しました。

 一方セーレイは壁に掛けてあった杖を手にとってから、私の対面に座ります。


 おしゃれだけど、なんだかちょっとイヤな気配がする杖です。てっぺんには大きな水晶がついてて、使い込まれた感じもあります。


 床に突いて垂直に立てた杖を右手に持ったまま、セーレイが口を開きました。


「結局、昨日はわたしが忙しかったせいで夕食も一緒にできなかったからね。あらためてゆっくり話がしたいと思って」

「なにを話しますか」

「んっふふ。そうだね……。まずはタヌキの名前を教えてほしい、かな」


 名前がわからないと呼ぶときに困るからねって言いながら、クッキーが載ったお皿を勧めてくれます。緑色のクッキー、初めて見た。


 野菜はあんまり好きじゃないから緑色はちょっとイヤ。野菜っぽい臭いはしないけど、人間に化けてると嗅覚も少しだけ弱くなるからよくわからないです。


「マヨです」

「マヨ……。本当の名前は?」

「ほんとうのなまえ」

「もっとかっこよくて素敵な名前があるんじゃないかと思って」

「わかりますか。そうです、タヌキにはかっこいい名前があるんです。でも父さまが人に言うなって」


 するとセーレイはお芋が載ったお皿も勧めてくれました。お芋はいいものです。いもだけに。


「マヨ・ベネディクタ・オランジェ・ヌガミです」

「得も言われぬ食べ物感があるね」

「父さまの好物を並べただけって聞いたことあります。エッグベネディクト美味しいんだって」


 私は食べたことないんですけどね。


 緑色は避けてお芋に伸ばした手が止まりました。手が動かない。なんで。


 顔をあげるとセーレイが何か呟いてます。聞こえないけど何か言ってるし、杖の水晶が微かに光ってる。


「ヌガミ……聞いたことがあるけれど、なんだったかな」

「ファミリーネーム」

「んん? ああ、なるほど。そういうことか。うん、すごくいい名前だね、美味しそうで」


 頷いたセーレイが再び口の中で何か呟くと、私の手が勝手に緑色のクッキーのほうにいきました。どうして。


 私の意思とは無関係に緑色のクッキーを手にとり、それを口に運ばされます。野菜じゃないけどなんだか野菜みたいなニオイがする。


「……苦いぃぃ」

「マッチャという、東方のお茶を混ぜてあるらしい」

「まっちゃ……あれ、でも後味甘い。おいしい。苦い、甘い、美味しい」

「それはよかった」


 セーレイが杖を横に置くと、手の違和感も消えました。やっぱりセーレイが何か妖術を使ったんだ!


 でもクッキー美味しかったからいっか。もうひとつ食べちゃお。あ、でもお芋も食べたい。


 クッキーにするかお芋にするか悩んで動けなくなった私を、セーレイが声もなく笑っています。失礼な人です。


「それともうひとつ聞きたいことがあってね」


 そう言いながら、セーレイはお芋をひとつ摘まんで私の口に運びました。




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