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タヌキ令嬢マヨの完璧な作戦 ~どうもタヌキです。貴族令嬢に化けたら辺境の公爵様に嫁がされました~  作者: 伊賀海栗


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第11話 着脱式……じゃない?


 結局、オクディーラ伯爵がやって来たのは翌日のお昼を大きく過ぎてからでした。朝には先触れが来ましたので、お迎えの準備は恙なくできたのですけど。


 私は先触れが来てから緊張しっぱなしです。本物のティーカを連れてきました! ってなったらヤダなぁ……って。


 でも来たのはオクディーラ伯爵だけだったし、それに伯爵は予想に反して、優しくて、お父さんって感じで、それから、ええと……丸坊主でした。なんで? 前に会ったときはふさふさだった気がするのに。


 もしかして人間の髪の毛って着脱式……?


「んふふ。その意味深な視線はやめようか。多分考えてることは間違っているから安心して」


 間違ってるそうです。本当かなあ、はぐらかしただけかも。


 応接室で、私とセーレイが並んで座る対面にオクディーラ伯爵が座ります。


 伯爵はたくさんの荷物を持ってきていたのですが、その半分はティーカお嬢さんのドレスだそうです。

 最初は古着をちょっとしか持たせなかったのに。やっぱり本物のティーカお嬢さんが来るってことかなぁ……。


「荷物はいったん全て我輩の客室へ運んでいただけますか。従者に仕分けさせます」

「ええ。その通りに。しかしずいぶんと急なご来訪だね」

「それについては心より謝罪申し上げる。元々、閣下へご挨拶に参る予定だったのが色々と立て込んでしまいましてな。その上、ティーカへ荷物を送ってやるのを失念していたと気づき、慌てて飛び出したというわけです。ですから今回はすぐお暇するつもりですよ」

「なるほど。多忙な中、わざわざすまないね」


 おかしな会話じゃないのに、なんだか嘘くさいふたりです。


 そんなことよりお茶請けのエッグタルトがとっても美味しい。パイ生地でできてて、本当の名前はぱす……ぱすて……。エッグタルト美味しい!


 パクっと食べたらパイ生地がサクサクってして、カスタードがとろーって出てきます。美味しい!


 ニコニコ笑顔のオクディーラ伯爵ですが、目が笑ってなくて怖いです。


「申し訳ないのだけど、少し席をはずすよ。急ぎ対応せねばならない件があってね」

「もちろん構いませんとも」

「感謝する」

「えぇっ?」

「ふふ。ティーカ嬢にとっても、わたしがいないほうが話しやすいこともあるのじゃないかな? 人払いもしておこうか」


 セーレイは薄らと笑みを浮かべたまま、部屋を出て行ってしまったのです。さらにセーレイの指示でメイドさんたちも全員出て行ってしまいました。置いて行かないでほしかった……!


 とってつけたようなニコニコ笑顔が剥がれて、オクディーラ伯爵が真顔に。怒ってるというより、なんというか、切羽詰まってる感じです。トイレを我慢してるときの人間は大体こういう顔する。


「食えない若造だ……。さて、タヌキよ。この城で得た情報について聞かせてもらいたいのだが……しかしあの男がいつ戻って来るとも知れない。今は話さないほうがいいだろう。夜中、庭に出て来られるかね?」

「はい、多分大丈夫」

「メイドが話しているのを聞いたが、ティーカがタヌキを飼っていることになっているとか?」

「はい」

「フン。上手いことやったものだ。ならば、庭に出る際にもタヌキ姿のほうがいいだろう。見咎められてもタヌキなら誰も何も思わん」


 タヌキですからね。それはその通りだと思います。


 オクディーラ伯爵はエッグタルトを摘まみあげると、丸ごと口に押し込みました。よく入るなぁって思ったけど、口の端からカスタードがにゅるんって出てきた。それを親指で掬って舐めています。


 つい癖で私も似たようなことしちゃうけど、人間の姿のときはやめたほうがよさそうです。これからは気を付けたいと思います。



 私たちは本当の親子じゃないし、顔を合わせたのだってブルーベリーを食べに行ったあの夜だけ。


 なので話すことも特になく、時計の音と伯爵の咀嚼音がやけに大きく響いています。


「化けタヌキはずいぶん昔から我が領地に巣食っていたが」

「悪さはしてないです。ヒトの振りして生きてただけ」

「そうだ。タヌキは人間社会で生きながら、人間との間に一線を引いて生活していた。化けタヌキの痕跡は領内のいたるところにあるのに、その姿を見たことはなかったんだ。まこと、不思議な存在よ」


 フンと自嘲気味に笑って、紅茶にお砂糖を5つ入れました。入れすぎでは?


 私は伯爵がくるくるとスプーンで紅茶を混ぜるのを眺めながら、話の続きを待ちます。他にやることもないし。


「おかげで、お前が現れても驚かずに済んだわけだが……。化けタヌキの力、あらためて我輩の元で奮ってはみんか」

「やだ。私たちはもう人間には仕えちゃダメだって、ご先祖様の言いつけなので」

「しかし――」


 部屋の外でセーレイの声が聞こえてきました。戻って来るみたい。

 伯爵は小さく息をついて、スプーンをソーサーに置きました。


「それも後で話そう。とにかく、庭で話をすることは内密に。何か聞かれたら『こちらでの生活は快適かと聞かれた』とでも言っておけ」

「はい。ところで伯爵は」

「なんだ」

「髪の毛どこにやったんですか」


 伯爵が私の質問に答えるよりも前にセーレイが入って来てしまったので、話はこれでおしまいです。髪の毛をどうしたのかすごく気になるのに。


 そして夜。私は伯爵と話をするため庭へ出て……とんでもない妖術にかけられたのでした。




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