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タヌキ令嬢マヨの完璧な作戦 ~どうもタヌキです。貴族令嬢に化けたら辺境の公爵様に嫁がされました~  作者: 伊賀海栗


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第1話 どうも、タヌキです

新連載です。

といっても約4万字の全18話。

2週間ほどで完結する予定です。お付き合いくださいませ!

本日1/3回目の更新です。


 どうもタヌキです、ごきげんよう。

 早速ですが、私はいま、地元から遠く離れた北の公爵家に向かっています。しかも嫁として。タヌキが。人間の。嫁として。


 公爵家の門はずいぶん前にくぐったはずなのに、全然到着する気配がない。遠い。ので、どうしてこうなってしまったのかを、反省を込めて振り返りたいと思います。


 ◇ ◇ ◇


 まず私が何者かというと、タヌキです。名前はマヨと言います。


 化けタヌキの一族で、先祖のギヨーブは極東の島国出身だそう。封印されかけて命からがら海を渡ったとかなんとか。


 私たちは化けタヌキなので、人間社会にいい感じに混じって生活しています。都合に合わせてタヌキの姿にもなります。私はそんな自由な生活を愛していました。


 ある日の深夜、私は伯爵家の屋敷へ入り込みました。そのお屋敷の庭に実るブルーベリーが美味しいので。毎年この時期には日課にしていまして。


 ……が、なんとその日は罠が仕掛けられていたのです。カゴに山盛りいっぱいのフルーツがあって、絶対に私のためのご飯だと思って近づいたのですが、まさかそれが檻の中だったなんてね。


 捕まってしまった以上もうおしまいだぁ……と絶望しかけたものの、私はこれでも化けタヌ一族においては有能と名高いので! 人間の姿になればいいんだって思いついちゃったわけです。


 今は社交期。このお屋敷の娘さんは王都に出掛けていますから、娘さんの姿になればバレずに丁重に扱ってもらえるというわけ。完璧な作戦。



 ところが、なぜか娘さんは屋敷に戻って来ていたそうで。檻の中でぼんやり膝を抱える私を指差して、「お嬢様がふたり!」って大騒ぎになりました。完璧な作戦なのに。


 結局、逃げようとしてタヌキの姿に戻ったところを捕まり、縄をうたれて伯爵さまや娘さんの前に引きずりだされたわけですが……。


「そんなに似てるっていうなら……。ねぇお父様、この子にお嫁にいってもらったらどうかしら」


 私が化けタヌキだと理解するや否や、突然お嬢さんがとんでもないことを言い出したのです。


 なんでも、隣国との境に広大な領地を持つ公爵様が独立しようとしてるとかなんとか。だから王様は忠臣の娘を嫁がせることで手を打ちやすくしたいとかなんとか。


 ムツカシイことはタヌキにはわからないんですけど。


 とにかく。要点としては、このお嬢さんを嫁に出せと言われたけど、お嬢さんは嫁ぎたくないって話です。


「だって怪しげな術を使うんだそうよ。錬金術師っていうの? 男版の魔女よね。そんな恐ろしい男と結婚なんてしたくないもの。それに社交場にもほとんど顔を出さないし」


 れんきんじゅつ? なにそれ気になる。気になるけど絶対近づきたくない。


 我々のような化けタヌキにとって、怪しい術を使う人間は要注意です。ギヨーブだって封印されかけたんですから。


 隙をついて逃げ出そうとした私の背に、お嬢さんの声が追いかけてきました。


「公爵領のブルーベリーはうちのより美味しいわよ」


 いいですか。重ねて言いますが我々のような化けタヌキにとって、怪しい術を使う人間は要注意です。敵か味方か、慎重に見定めねばなりません。


 本家のエリートタヌキとして、私は偵察してしっかり情報を得る必要があると思います。たとえばブルーベリーの耳寄り情報とか。



 ◇ ◇ ◇



 次第に速度が落ちていく馬車の窓からブルーベリーを探しているんですけど、全然見つかりません。もしかして……お屋敷の裏にあるのかなぁ?


 馬車が止まったので降りてみると、そこにはとんでもなく大きな建物がありました。お城です。道中はほとんど寝て過ごしたので、目的地がお城だとは全然気づかなかった。


「あなたがレディ・ティーカ、かな?」


 ゆったりした口調と柔らかい声。


 いかにも偉い貴族って感じの人間が、使用人をたくさん従えて立ってました。


 銀色のサラサラの髪や優しそうなグレーの瞳は中性的な雰囲気なのに、背は高いし首は太めで全身そこそこ筋肉がある……なんだこのギャップ。しかもキラキラしています。イケメンだけに許される華やかなキラキラ。


 私は人間社会での生活が長いタヌキなのでわかります。これはイケメン。


「私はマヨです。ブルーベリーを食べに来ました」

「まよ? ブルーベリー?」

「いえ、ティーカでした。ティーカ・オクディーラ。はじめまして、おはこんばんちは」

「それは前世紀の平民の挨拶だね。こんにちは。わたしはセーレイ・イーノ。イーノ公爵家当主だ。よろしくね」


 セーレイは私の背後に並ぶ複数の馬車にサッと視線を走らせて、目を眇めました。一瞬だけ、ちょっとだけ、悪いお顔で笑った気もします。


「まずは部屋へ案内させようか。わたしは片付けなくてはならない仕事があるから、夕食のときにまたあらためて、ね」


 ふんわり甘い香りを残してセーレイは足早に城内へ。


 残された従者たちはそれを合図にわっと動き出して、私の荷物を運び入れます。たいしたものは持ってきてないんですけどね。


 というかオクディーラ伯爵家が持たせたもので、ティーカお嬢さんのお下がりのドレスとか流行遅れのアクセサリーとかそういうのです。嫁に出すのに何も持たせないわけには……って、頑張っていらないものを選んでました。


 案内されたお部屋は広くて綺麗で、ふかふかのクッションも寝心地が良さそう!


 夕食の頃にまた呼びに来ますって従者さんたちがいなくなったので、私も真の姿に戻ります。やっぱ4本足でしっかり歩かないと疲れちゃいますからね。



 ……さて。早速調査といきますか。





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