第五話 しずかとよっちゃん
中学生のしずかとよっちゃんのお話です。
学校から帰る途中の公園のブランコで、仲良しのしずかが俯いて力を落としているのを見かけたよっちゃんは、心配で駆け寄って行きます。そして…
「あれっ?どしたの?こんなところで…。」
通学路の途中の小さな公園のブランコで、俯いているしずかを見つけたのだった。
「…あ…よっちゃん…。」
「先にすたこら帰っちゃったから、なんか用事あるのかなあって思ったんだけど…。」
「……」
「…ん?もう用事済んだの?…それとも…なんか、深刻な感じ?…とか?」
しずかのなんとも言えない哀しそうな、寂しそうな様子が気になって仕方がなかった。
空いているもう片方のブランコに腰掛けると、ちょっとだけ漕いだ。
キイキイ〜と頭上の方から音がする。
あたしは心の中で、(油挿さないと)などと思った。
二人でいるけど、しばらくはどちらも喋らなかった。
けれども、別にその時間が苦しいとか、しんどいとは感じなかった。
「…あのさ…」
先に声を出したのは、しずかだった。
「…ん?」
返事をしつつも、あたしはまだブランコを少し漕いで前後にゆらゆら。
「…あのさ、よっちゃん…。」
しずかの声が若干大きくなった。
あたしは慌ててブランコを揺らすのをやめた。
「ん?なに?どした?」
きっと、ものすごく深刻な話をこれからするんだと察した。
しずかの顔が真剣だから、あたしも一緒に真剣になった。
「…午前中の体育でさ…」
あたしはふっとその時間のことを思い出していた。
…が、特にしずかが悩むような場面はなかった気がする。
でもとりあえず「ああ、うん」なんて、丁度いい相槌を打って話を続けてもらう。
「ほら、クラス全員で大きく円陣バレーやったじゃない?」
やった、やった。
確か何回目かの時、ボールが下に落ちることなく30回ぐらい続いて、みんなで「イエ〜イ!」なんて盛り上がったんじゃなかった?
「そう!そう!あの時すんごく盛り上がったよねえ!」
あたしがニコニコ興奮気味に返すと、しずかが急にショゲ始めた。
「えっ?えっ?しずか、どしたの?あの時しずかも一緒に盛り上がってたじゃん!」
「…うん…そ、そうなんだけどね…でもね…」
でも?どうした?
あれ?なんか、やな事?
「…あの時ね、みんな、わ〜いとか、イエ〜イって手を上げたでしょ?」
「え?あ、うん」
「それで…あたしね…上げた手…手を開いたハイタッチなのか、Vサインなのか、それとも親指を上げるグ〜なのかわからなかったの…普通に考えれば当然ハイタッチなんだろうけど………前にね、お盆におばあちゃんちにみんな集まった時ね、いとことか親戚のみんな何人かづつでチームになって、トランプで盛り上がった時にね、みんなVサインとか、グ〜ばっかで、うちの親と弟しかハイタッチしなかったの…だから…あたし…よその人はハイタッチってしないのかなあって思っちゃって…ほら、高校野球とかでも、みんな集まって人差し指立てて1ば〜ん!ってやるでしょ?…それで…大杉君…なに出すんだろうって考え過ぎちゃったみたいで…。」
「え?あ、うん、それでそれで!」
「大杉君…ハイタッチだったの…でも、あたし…もたもたしつつも、何?何出すの?って色んな手の形やっちゃってたから…大杉君はハイタッチなのに、あたしは丁度グ〜のタイミングだったから…大杉君の開いた手のひらの真ん中に、思いっきり母印を押しちゃって…なんかそれって、なんかそれって…あたし…大杉君に変な風に思われたかもって…そしたらなんか…なんか…よっちゃ〜ん。」
しずかはブランコから降りて、あたしに抱きついて泣いた。
しずかったら…可愛いなあ。
そうだよね、しずか、ずっと大杉君のこと、好きなんだもんねえ。
きちんと手と手を合わせたかったよねえ。
今度、いつになるかわからないけど、今度はさ、絶対最初から手のひらを広げて、ハイタッチの姿勢でいるといいよ!
そんでもって、大好きな大杉君としっかりハイタッチできるといいねえ!
あ〜、なんか羨ましいなあ、そういうの。
あたしもいつか好きな人が出来たら…
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。お話はまだ続きますので、引き続きどうぞよろしくお願いします。




