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着火
長い長い工事が終わって
ようやく邪魔なシートが取れた
気付いたら足場の鉄骨も消え
そこに残ったのは
南の低い空だった
だから惹かれてしまうんだろう
今年の夏はよく見えるから
ふと視線を上げればすぐそこに
赤い光が瞬いているから
蠍は強いんだって
昔、神話に教わった
その赤い心臓は
火星の見えない夜に
戦士を奮い立たせたという
私はまだ弱いけれど
口を噤んでしまうこともあるけれど
大丈夫だって
赤い瞬きは背中を押す
私はまだ脆いけれど
その一歩を後やむこともあるけれど
無駄じゃないぞって
赤い瞬きが肩を抱く
それはとても美しく気高く
重くかけがえのない光
私にとってはこれからもずっと
特別な祈りを捧げたい光
進め
叫べ
その権利は消えちゃいない
磨け
放て
その価値はまだ決まっていない
「どこにでもあるようでどこにもない何かが君の炎を待っている」
「誰かが為したようで誰にも為されてない何かが君の手を呼んでいる」
つよーい気持ち大事