元悪役令嬢は反抗される1
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ハルトムートの許可を得た翌日、早速ヴェロニカはボランティアに応募する事にした。ヴェロニカが朝から馬車で向かったのは教会。孤児院の子供達に勉強を教えるボランティアは、教会が先導して行っているのだ。
始めは、教会の者が二~三人孤児院に赴く程度の規模だったが、今は教会以外の人間も多数ボランティアに参加しているという
ゴシック調の古びた教会。建物内に入ると、すぐに礼拝堂が見える。ヴェロニカは、礼拝堂にいた若いシスターらしき女性に声を掛けた。
「あのー、すみません」
「はい、何でしょ……う!?」
シスターは笑顔で振り向いたが、ヴェロニカの顔を見ると、一瞬目を見開いた。そして、恐る恐ると言った様子で質問してくる。
「あの……ヴェロニカ・アイスナー様でいらっしゃいますよね? 今日は一体どのようなご用件で……」
おや、ヴェロニカは有名人なのだろうか。ヴェロニカは疑問に思いながらも、笑顔で答えた。
「実は、孤児院の子供達に勉強を教えるボランティアに参加させて頂きたく……」
「えっ!!」
シスターは驚きの声を上げた後、「し、少々お待ち下さい」と言い、奥に引っ込んでしまった。
しばらく待っていると、シスターが一人の男性を連れて戻ってきた。六十代くらいの男性で、白い髭を生やしている。彼は、ヴェロニカの方に近付くと笑顔で挨拶した。
「ヴェロニカ・アイスナー様、お初にお目にかかります。私は、こちらのヘリオス教会で司祭をしておりますドミニクと申します。この度は、ボランティア参加の申し出、誠にありがとうございます。実は、あなたの夫であるハルトムート様は、以前からこの教会に寄付をして下さっているのですよ」
「そうだったんですか……」
それは知らなかった。そう言えば、ハルトムートがハンスと、寄付がどうのこうのと話していた気がする。
「今日は、ボランティアの流れやスケジュールについてお話しするだけにしましょう。そうそう、教師として必要な知識があるかどうか簡単な試験も受けて頂きましょうか」
「はい、よろしくお願い致します」
ヴェロニカは、元気よく返事をした。
◆ ◆ ◆
「そうか、ボランティアを先導している教会というのはヘリオス教会だったのか」
その日の夕方、食卓でハルトムートが呟いた。
「はい。ドミニク司祭が親切にボランティアの流れなどを教えて下さいました。ボランティアは週に二回行われているようなのですが、明日は丁度授業の日なんです。早速明日から教壇に立ちます」
ヴェロニカは、生き生きとした表情でハルトムートに今日の出来事を報告する。ハルトムートは、そんなヴェロニカを優しい表情で見つめながら、「頑張ってこい」と声を掛けた。
ヴェロニカの初めての授業はどうなるのか……。