元悪役令嬢は捜査する(事件編)6
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その後、ヴェロニカとハルトムートは、ダリナを連れてハインリヒの寝室へと向かった。ダリナが、自分の部屋に戻る前にハインリヒの見舞いをしたいと言ってきたのだ。
ちなみに、ルートヴィヒは公務があるのでもう三人の側にはいない。
「先程の話が本当なら、毒の強さを知っていたレナーテ様は無実という事になりますね」
「そうだな。殿下を殺害しようとしたのなら、もっと強い毒を使うはずだからな。その点を考えると、コンラート殿も無実かな。彼も、毒草を含め科学全般に詳しい」
ヴェロニカ達がそんな会話をしている内に、ハインリヒの寝室へと到着した。ハルトムートが寝室のドアをノックすると、「はーい」という女性の声が聞こえる。
三人が中に入ると、そこには長い黒髪をアップにした四十歳くらいの女性がいた。簡素な緑色のドレスを着ている。この女性は、ハインリヒの母親であるカルラ・ハイゼンブルクである。
笑顔を作ってはいるが、彼女の目の下には隈が出来ている。息子が未だ目を覚まさないのだ。心配で眠れないのだろう。
「ハルトムート・アイスナーと申します。急に押しかけてしまい、申し訳ございません」
「話は聞いているわ。気にしないで。ヴェロニカちゃんもダリナちゃんもどうぞ」
ヴェロニカとダリナは、挨拶をすると部屋の中央を見つめた。部屋の中央には大きなベッドがあり、そこにはハインリヒが目を閉じたまま横たわっている。
「ハインリヒ様……」
ダリナは、悲痛な顔で呟く。
「……アイスナー伯爵とヴェロニカちゃんは、ハインリヒに毒を盛ったのはフリーデちゃんじゃないと思ってるのよね?」
「……はい。フリーデ様が無実だという証拠はございませんが、私はフリーデ様の事を信じています」
ヴェロニカはしっかりと頷く。
「そう……私も、ハインリヒに毒を盛った犯人はフリーデちゃんではないと思っているの。真相を探っているのなら協力するわ。何でも言ってね」
「では、お言葉に甘えて、毒が盛られた当日の事を教えて頂けますでしょうか」
ハルトムートが言うと、カルラは晩餐会の時の様子を話してくれた。
晩餐会は和やかに進み、誰かがトラブルを起こすといった事も無かったらしい。男爵家の娘であるフリーデを見下す者もおらず、ルートヴィヒもホッとした様子だったとの事。
そして、晩餐会では、ハインリヒが倒れるまで、誰も席を立たなかったようだ。故に、食事中誰かが毒を入れようとしたら、すぐに気付いただろうとの事。ハインリヒの左隣にはカルラ、右隣にはコンラートが座っていたが、その二人にも毒を入れる事は出来なかった。
そして、ハインリヒが倒れた時も、コンラートがすぐさまハインリヒの方に駆け寄っていたが、特に不審な動きをしている様子は無かったらしい。
「そうですか……お話し頂き、ありがとうございました」
ハルトムートが、深々と頭を下げる。結局、事件の解決に直結するような情報は得られなかったような気がする。
カルラに挨拶をした後、ヴェロニカとハルトムートは部屋を後にした。ダリナは、もう少し部屋でハインリヒの様子を見るらしい。
その後もヴェロニカ達は使用人達に話を聞いたが、特に有益な情報は得られなかった。そして、もう夕方近くになっていたので、二人は今日の調査を一旦切り上げ、アイスナー邸に戻る事にした。
カルラは、隣国の第二王女でしたが、政略結婚でこちらに嫁いできました。
国王は側妃を作ったので、嫉妬しないわけでは無かったのですが、カルラは持ち前のポジティブさで元気に過ごしています。




