元悪役令嬢は文化祭を企画する4
ダリナが活躍!!
その後も文化祭の準備は順調に進み、とうとう文化祭当日の朝を迎えた。
「こうして見ると、感慨深ささえ感じるわねえ……」
孤児院の庭を眺めたヴェロニカが呟く。庭には、クッキーやハンカチを売る露店の他、有志が集って開いている店もあり、既に賑やかだ。そして、一番目立つのが、庭の中心に作られたステージ。ここで、ハンナがダンスを披露する予定になっている。
「思ったより店が多くて、商品の質も良いな」
ヴェロニカの隣に立つハルトムートが微笑んで言う。
「皆、頑張ってましたからねえ」
ヴェロニカがニコニコして応えた。忙しいのに文化祭に来てくれたハルトムートはやっぱり優しい。
ヴェロニカとハルトムートが店を回っていると、ハンナとカミルがこちらに近付いて来た。
「おはようございます、ヴェロニカ先生!」
「おはよう、ハンナ。そのドレス、素敵ね」
ハンナは、綺麗な緑色のドレスを着ている。この日の為に仕立てたものだ。
「ハンナってば、昨日からドレスを試着して大はしゃぎしてたもんな」
カミルが揶揄うように言うと、ハンナは「だって、素敵なドレスなんだもん」と言って顔を膨らませた。
「お昼にはハンナのダンスが見られるのね。楽しみだわ」
ヴェロニカがそう言った時、近くでガターンと大きな音がした。ヴェロニカ達が振り返ると、露店の一つが三人の若い男性によって壊されている。
「おい、何してるんだ!?」
その露店で作業していたボランティア仲間のライナーが叫ぶ。露店を壊した男の一人が、ニヤニヤと笑いながら言う。
「この土地は、元々俺のひいじいちゃんのものだ。土地を当時の孤児院の院長に売る際、ひいじいちゃんの家族も土地への出入り自由との契約になってる。俺が何をしようが、お前らに止める権利はねえんだよ」
そして、男は懐から、契約書の写しのような書類を取り出した。ライナーは、それを受け取ると、隅々まで読み込んだ。段々とライナーの顔が険しくなる。
「……くそっ、確かに、違法な契約ではなさそうだ」
しかし、だからと言って屋台を壊して良い理由にはならない。何とかできないかとヴェロニカが考えていると、後ろから声がした。
「おやおや、これは大変だ」
振り向くと、そこにはニヤニヤと笑う男性の姿。モーリッツだった。
「こんな状態では、文化祭どころでは無いでしょう。文化祭は中止するよう院長に進言しましょうかな」
それを聞いて、ヴェロニカはハッとした。モーリッツは、確実に孤児院を取り壊す為、文化祭を中止させたかったのではないか。そして、その為に男三人を唆したのではないか。
でなければ、こんなタイミングで男達が孤児院を訪れるわけがない。
ヴェロニカが唇を噛み締めていると、また近くから声がした。
「ああ、やっぱりそういう作戦だったんだねえ」
姿を現したのは、平民の格好をしたハインリヒだった。隣には、ダリナもいる。
「急に工場を作る計画が持ち上がったから、変だと思ったんだよー。バーダー公爵。あなた、工場を建てる見返りに、工場の経営主からお金を受け取っているよね?」
ハインリヒの言葉を聞き、モーリッツが慌てる。
「そっ、そんな事ございません! 私は、この地域の経済の活性化を考えて……!!」
「ふうん。じゃあ、この頭の悪そうな男達が文化祭を邪魔しに来たのは偶然だったというわけかあ」
「何だって!?」
ハインリヒの言葉を聞いた男達が怒りの声を上げる。
「調子乗ってんじゃねえぞ、てめえ!!」
男の中の一人がハインリヒに殴りかかる。
「あっ、バカ!!」
モーリッツが叫ぶが、既に男はハインリヒのすぐ側まで来ていた。しかし、ハインリヒを殴ろうとした男の腕を、ダリナが捻り上げる。
「いててててて……!!」
男は、あっという間に地面に組み伏せられた。
「あんな小さな女の子が大人を……凄い……」
ヴェロニカは、思わず呟く。『炎の民』の実力は、想像以上のようだ。
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