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元悪役令嬢は書庫にこもりたい2

いよいよ夫の登場です!

 そして結婚式当日。ヴェロニカは、アルマ達と共に馬車に乗り込み、会場となる教会に向かった。


「ねえ、アルマ。アイスナー伯爵って、どんな方か知ってる?」


 馬車の中で聞くと、アルマは無表情で答えた。


「いえ、存じません。私は一介のメイドに過ぎませんので」

「そうよねえ……」


 ヴェロニカは、溜息を吐いて馬車の隙間から外の景色を眺めた。ゲームでは、エピローグで少しヴェロニカの末路が語られるだけで、彼女の結婚相手であるハルトムート・アイスナーについては全く情報が明かされていない。


自宅で両親にそれとなく探りを入れたところ、ハルトムートは、ヴェロニカより三歳年上の二十一歳。彼の父親が早くして亡くなった為、既に伯爵として領地運営をしているらしい。とても優秀で、領民にも慕われているとの事だ。


 領民に慕われるような人格の優れた方なら、きっと不正を働いたヴェロニカの事を嫌っているだろう。ヴェロニカの横領については聞いているはずだ。



 ヴェロニカが不安を感じている内に、馬車は教会へ到着した。広くて綺麗な白い石造りの教会。教会の控室で、ヴェロニカは初めて夫となるハルトムートと対面した。


ハルトムートは、短い赤茶色の髪に黄色い瞳をした、美しい男性だった。表情が乏しいが、真面目そうな好青年に見える。


「あの……ヴェロニカ・シュナーベルです。今日からはアイスナーの姓になりますが……よろしくお願い致します」


 ぎこちない笑顔でヴェロニカが挨拶すると、ハルトムートは無表情のまま一言だけ言葉を発した。


「……よろしく」


 結婚式が始まった。ヴェロニカの白いウエディングドレス姿は美しく、見惚れて溜息を吐く者もいる。しかし、来賓のほとんどは、「横領した癖にドレス姿だけは立派ね」だの「あんなのと結婚しなければいけないハルトムート様が可愛そう」だのと言って眉を顰めている。


 結婚式が進み、誓いのキスをする際、ハルトムートがこっそり「キスはした振りだけで」と言ったので、唇が降れる事は無かった。


        ◆ ◆ ◆


 居心地が悪いながらも結婚式が終わり、ヴェロニカはハルトムートと共にアイスナー邸に移動した。

 アイスナー邸は、侯爵家であるシュナーベル邸と同じくらいの大きさで、クリーム色の壁をした素敵な屋敷だ。

 馬車から降りる際、ハルトムートは無言でヴェロニカに手を貸した。ハルトムートは、紳士的な方らしい。

門を通る際ヴェロニカは庭を見たが、花壇には綺麗な花が咲いており、手入れが行き届いているのが分かる。


 屋敷の中に足を踏み入れると、五十代くらいの男性が穏やかな笑顔で二人を出迎えた。


「お帰りなさいませ、旦那様。……そちらはヴェロニカ様でいらっしゃいますね。私、執事のハンスと申します。至らない点もあるかと思いますが、よろしくお願い致します」


 そう言って、ハンスは頭を下げた。白髪頭を綺麗に整えている、優しそうな方だ。


「ヴェロニカと申します。よろしくお願い致します」


 ヴェロニカも、頭を下げて挨拶を返した。すると、ハルトムートとハンスは目を丸くする。

 どうしたのだろうとヴェロニカは不思議に思ったが、ハッとした。ヴェロニカは、浪費家でプライドが高いと言われている。そんなヴェロニカが執事に頭を下げたのだから、驚きもするだろう。


「そ、それにしても、素敵なお屋敷ですね。ホホホ……」


 ヴェロニカは、笑って誤魔化すしかなかった。

ブクマ等をして頂けると、作者が大変喜びます。

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