95 ナニかが現れた
今回も読みに来ていただき、本当にありがとうございます。
●この物語に出てくる魔法や職業に付いているルビや漢字表記は独自解釈の箇所があり、一般的なファンタジーのもの(小説やゲームなど)と異なる場合があります。
●誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。
ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。
二人がナゼこの場所から出られないかを話し合っていると、床が突如として軋み音を発し始めた。
「ナニ? どうしたって云うの?」
「揺れてないから、これは地震じゃないよ」
床に敷き詰められていた石が少しズレてきたと二人が感じるよりも早く、中央部分の敷いてある石が浮き上がりだしてきた。
それによって、その上で幾重にも重なり合って積もっていた瓦礫が崩れだしてきた。
「わっ、危ない」
二人はとっさに立ち上がって、崩れてきた瓦礫を避ける。
そして瓦礫や床石は、辺り一面に四散して散らばった。
それと同時に、一つの巨大なナニかが出現したかと思ういとまもなく、現れたモノはまだ星々が輝く大空に飛び去って行った。
石が四散したコトによって、トマとアークシュリラは崩れた建物だった処から草原に投げ出された。
なんとか二人は受け身を取って、体に懸かる衝撃を弱める。
そんな状態にもかかわらず、二人には純白な光の固まりが床下から現れたコトだけは見えていた。
しかし、そのような事態だったために、そのモノの姿形は良く見るコトが出来なかった。
投げ出されたコトによって、二人は図らずとも壊れている建物からは脱出するコトができた。
「トマ、大丈夫?」
「私は平気だけど、アークシュリラは?」
「ボクも無事だよ。今、出て来たのってナンだったの?」
「ナンだか、あれがここに封印されていたって感じだね」
「これって、ナニモノかを封印した祠だったの?」
「そうとしか思えないよ。壊れたコトによって封印していた力が弱まって、今、脱出したんじゃ無いかなぁ」
二人は話しながら、そのモノが飛び去っていく姿を目で追っている。
「ナンか、アイツって封印しなければならないほど、強そうじゃ無かったけど……」
「まだ、完全に復活してないだけじゃ無いかなぁ。吟遊詩人の話にも、封印されたモノが抜け出したモノがあったよね」
「そうだったね。徐々に元の力を取り戻すから、早く退治しないとダメだよね」
そのモノはものすごい速度で飛んでいるようで、それは直ぐに点となってしまい、やがて二人には目視で確認が不可能になった。
「もう、戻っては来そうもないね」
「じゃ、あれが現れた処を調査しようか?」
「そうだね」
二人が草原に弾き飛ばされて直ぐに行動を開始しなかったのも、現れたモノに見つかって下手に攻撃を受けなくするためである。
なので、飛び去ったとは思ったが、実は軽く周囲を飛び廻っただけで戻って来たら大変なコトになるからであった。
ほとんどの敷き詰められていた石がなくなって、土がむき出しの処に巨大な穴があいていた。
「じゃ、下りようか?」
「ロープは、あすこの大きな瓦礫に結んでおけば良いよね」
「そうだね」
大きな瓦礫にロープをしっかりと結んでから、トマとアークシュリラは穴の中に下りて行った。
「ここの壁って、地上にあった床と同じ材料で作っているみたいだね」
「壁だけじゃなくて、天井やここの床もだよ」
「これって封印するのに必要なモノなの?」
「これ自体には、そんな力はないと思うよ。その証拠にアイツは抜け出したんだからね」
「そうだったね。ところでトマは全ての面に彫られている文字……記号かも知れないけど、判読出来る?」
「ルーン文字とかの魔法言語ではないから無理だよ。これが本当に文字なのか、封印のための記号や呪文なのかも私には判別できないよ」
トマにも解読することが出来ない、なにやら文字か記号らしきモノが、床や壁の全ての面に書かれていた。
「ボクにも読めないけど、アイツは、ここに居たんだよね」
「そうだと思うよ。ここにどれほどの期間に亘って閉じ込められていたのかとか、どんだけの力を奪われていたのかを判断する材料もなさそうだよね」
天井を突き破った際に落ちて来たと思われる瓦礫はあるモノの、それ以外はナニもないとてもキレイな状態の空間だった。
「ボクには魔法らしきものは、この空間から感じないけど、トマは感じる?」
「イヤ、ここではナンにも感じないよ。ただ上から落ちてきた瓦礫からは、やっぱり少々の違和感はあるけどね」
「それって、前と同じなんでしょ」
「そう」
この空間を調べていても壁や床とか天井に書かれた文字か記号を判読出来ないコトには、あのモノがナニモノかを判断する材料がない。
「トマ。この彫ってあるモノが今のボクたちじゃナニか判らないし、魔力を感じないんだったら、ここに居ても仕方がないよね」
「そうなるね。一応これらのメモだけはとっておこうよ」
「判った、じゃボクはこっちとあすこの壁2つと天井を書き写すよ」
「ありがと」
トマとアークシュリラは手分けをして、全ての面に彫られていたモノを写し取って地上に戻ってきた。
「これを読解しないコトにはアイツがナニモノかも判らないから、私たちで退治するのは難しいんじゃない」
「そうだね。それに相手が飛ぶとなると、ツライよね」
「あの速度では攻撃をして来なくても、避けるコトは可能かもね」
「あの速さだと、飛ばなくても、ボクの剣術ではてこずると思うよ」
「今日、明日戦う訳じゃないから、私も魔法や矢を放つタイミングを訓練するコトにするよ」
「アイツと戦うまでに、ボクたちはどれだけの時間があるのか判らないけど、確かに練習する時間はあるね」
今まで二人が戦って来た相手は、多少タイミングがズレたとしても被弾させるコトや、剣先をかすめるコトが出来ていた。
あの速さだと、直線的な動きでもそれらを行うコトの方が難しい。
「で、アークシュリラ。アイツは山の方向に行ったみたいだけど、私たちもこれから山へ行くの?」
「登りたいけど……どんなヤツかも知らないアイツに、そこで出会ったら困るよね」
「そうだよね。だったら、どんなヤツを封印していたかを調べるために、一度ルセルファンに戻る?」
「もし戦うにしても、ナニも知らなけりゃ対処のしようがないし、ルセルファンがここから一番近い街だろうから、ナニかしらの情報は手に入れられるよね。それにあの街なら訓練場はあるだろうから、情報が入らなくても剣術の練習くらいはさせてもらえるよね」
ルセルファンにある道場や訓練場が、アークシュリラのような旅人にも門戸を開放しているかは今の二人には判らない。
もし開放していたとしても、アークシュリラのレベルに合ったモノがいるかは不明だった。
何はともあれ、ここで話し合っている場合でないコトだけは確かなので、二人は明後日の方向に飛ばされたランタンなどをしまって、ルセルファンに戻るコトにした。
●最後まで読んで頂きありがとうございます。
●今回は、トマとアークシュリラが閉じ込められいた処から脱出?したお話です。
出現したモノはナニモノで、今後の話しにどう係わって来るのでしょうか?
係わるなら見つけるコトは出来るのでしょうが、勝負になるのかなぁ。
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