89 新たな旅立ち
今回も読みに来て頂いて、誠にありがとうございます。
誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。
ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。
ジルフィーネはアークシュリラやトマとの話し合いが終わると、飛ぶこともせずに来た道を戻って行った。
「帰っちゃったね」とトマが言った。
「ジルフィーネがノドーラの件に係わってなくて、本当に良かったよ」
「そうだね。アークシュリラは最後まで私たちで解決出来なくて残念?」
「うん。ヘルタフに捕らえられた仲間を救うって約束したから、ちょっとはね。トマは?」
「私は自分たちで解決が出来たら出来たらで嬉しいけど、それが自分たちでなくても良いよ。それに相手が領主たちだと、まだまだ時間が掛かっちゃっただろうしね」
いくら剣捌きや魔法の訓練をしてそれらを向上させたとしても、相手の身分によっては自分たちの立場ではどうしようも出来ないコトは存在する。
自分たちが仲間を救うコトを、ヘルタフと約束したと云う使命感に捕らわれて物事が遅々と進展しないより、一刻も早く全員が無事に帰って来た方が良いに決まっている。
「そうだね。それと野菜もファリチスの人々に教えてくれるみたいで良かったね」
「もし、ファリチスに寄るコトがあって、たくさんの甘い食べ物で溢れていたら良いね」
「そうだね。ファリチスだけでなく、あすこなら直ぐに周辺の街や村にも広がるよね」
「毒になる部分が判って安全で美味しいって知れば、ファリチスの人々は独占欲がないからきっとそうなるよ」
朝焼けを迎えて、月の出ない日が終わろうとしている。
男を捕まえたり、ジルフィーネと話し合ったりしていて、二人は一睡もしていない。
それでも、今から仮眠を取ると昼夜が逆転するし、一日くらいなら寝なくても活動に影響はあまりない。
いくら寝ていなくても活動をしていたからお腹はすいているが、いつものようにガッチリしたモノは食べる気がまったく起きない。
なので、二人はまだたくさんある野菜を食べるコトにした。
火は直ぐに熾せるが、二人はロゾーダを生で齧って見た。
「わっ! これって、焼かなくても美味しいよ」
「本当だね」
この世界では、野菜を生で食べるコトはよくある。
そればかりか木の実やキノコなども、生で食べる場合があった。
それは旅をしているからとかファリチスだけの文化ではなくて、どこの街や村でも日常的に行われている。
さすがに肉を生で食べるコトは、いくら倒したばかりでもあまりやらない。
ついでに言うと、魚も生で食べる習慣はない。
ロゾーダを食べ終わった二人は、立ち上がった。
「アークシュリラ。これから山を目指すけど、その前に畑に寄るで良いの?」
「ボクたちが野菜を作るコトはないけど、どんだけ広大か見ておいても良いよね」
二人は畑を目指して歩き出した。
「アークシュリラ、これで終わったのかなぁ」
「後はジルフィーネたちが処置をするから、終わりで良いんじゃないかなぁ」
「ヘルタフに事情を説明してないけど、本当に良かったの?」
「ボクたちが会って説明をしても、途中までしか説明は出来ないから逆に心配させるコトになるよ」
確かに攫っていたモノは、捕まえたとしか説明することが出来ない。
そのモノが二度とやらないように改心させた訳でも、出来ないようにした訳でもない。
ヴァルリアやジルフィーネらが直接的か間接的にかは判らないが、フィデーが問い詰められて二度とこのようなコトをしないと約束をさせられるかも知れないけど……
それは二人の想像でしかないから、絶対に起こらないとはヘルタフには話せない。
「そうだよね。直接的に処罰をすれば、二度とはやらないと思うけど、間に領主やらが入ったら、どうなるかは判らないよね」
「確かに、間に入ったモノたちがフィデーに好感を持っていたり、弱みを握られていたりしたら罪を軽くするかも知れないよね」
フィデーが役職を解任されたとしても、街から永久に追放、そして二度と公職に付けないように成らなければ、また機会を窺って問題を起こすかも知れない。
もちろん、その時は全財産の没収くらいはしなければ、喩え四肢を不自由にしても人を雇ってまた騒ぎを起こせる。
「人って様々なモノの影響を受けるから、裁いたらダメだよね」
「本当にそう思うよ。でも、全ての裁きを神々に依頼するのはさすがに出来ないよ」
「そうだね。いつの時代になったら、目先の利益じゃなくて、本質的な行動を取れるように成るのかなぁ」
「魔法使いでも魔導師ならお金とか身分など気にしないから、直ぐにでもなれそうだけどね」
「魔導師でも、立身出世をしたいモノも居ると思うよ。剣士にだって居るからね」
確かに、魔導師の中にも世捨て人のように研究に没頭せずに街の結界を張るモノや、権利者に雇われたモノたちは魔法の研究そっちのけで自身の名誉とか栄華栄達にしか興味がなくなっているモノもいる。
それに聖職者と言われる修行僧や司教たちの中にも、俗物的なモノはいる。
いくら組織がしっかりしていても、そこで暮らす人々の心の内面までは教えを浸透させるコトは出来ていない。
また、最初は純粋な心の持ち主でも、人々を長い間に亘って教え導くうちに自分が偉いと勘違いをして変わってしまう場合もある。
変わらないでいられるのは、本当に強い信念や価値観を持ち、自分を律せられる一部のモノたちだけのようにも思える。
「そうだよね。でも、人々ってどうして身分とかが上がると、そうなるのかなぁ」
「逆に言って、そう云うモノたちの方が上がり易いのかもよ。ギルドのランクだって、高いランクの人ってそう云うモノが多そうだよ」
「確かに」
それは、あくまでも二人のイメージである。
高いランクに成るコトに生き甲斐を持っているモノもいるが、魔物で困っている人たちを救っているうちに高いランクに成っている冒険者も多数いる。
「私たちってランク付けには全く興味はないし、率先して討伐とかもしてないからね」
「だから高いランクの冒険者の知り合いもいないし、領主や貴族ナンかも全く知らないよね」
「でも、私たちはギルマスなら会えるチャンスはあるよ。確かに、領主たちではどうしようもないけど……」
「それは、仕方ないよ。いくらボクたちが領主の館に居る人や、門番に丁寧に説明したって絶対に会わせてくれないからね」
「そこナンだよね。街のどっかで、そう云う人たちに会えないかなぁ」
吟遊詩人の話には、身分を隠して街のありのままの状態を視察している領主もいた。
しかし、もしそのようなモノが実際に居たとして、そのモノをトマやアークシュリラがみつけるのは非常に難しい。
なぜなら、二人にみつかるようだったら、街の中に居れば直ぐに住民に発見されて大騒ぎになるコトだろう。
「難しいんじゃないかなぁ。例えば今すれ違ったとしても、ボクたちではその人が領主とは思わないよ」
「そっかぁ。顔を知らないから、判んないよね」
●最後まで読んで頂きありがとうございます。
●今回は、トマとアークシュリラがジルフィーネと話し合いを終えて次の目的地に移動するお話です。




