86 やっぱり犯人
今回も読みに来てくれて、本当にありがとうございます。
アークシュリラがジルフィーネに向かって声を掛けた。
ジルフィーネは声がした方向を見て、アークシュリラとトマを発見した。
「ワラワに、声を掛けたのはお主らか?」
「そうだよ。ボクはアークシュリラ。こっちがトマだよ」
ジルフィーネは、値踏みをするように二人を見てから言った。
「お主は風のモノか? もう一人は違うようだな」
「確かにボクの友だちに風の眷族は居るけど、ボク自身は違うかも」
「違わんぞ。それでナニか用事か?」
「君はあの大きな街から来たんだよね。ナゼ、こんなにも遠くまで来たの?」
「あぁ、そうだ。ワラワはノドーラに用事があって、ルセルファンからここへやって来た」
その答えを聞いたアークシュリラは、トマの顔を見た。
この時トマは一心不乱になって、目の前のモノとどう戦うかを考えていた。
そのために、アークシュリラが自分を見たコトに気が付いていなかった。
トマが自分を見つめ返して来なかったので、アークシュリラは彼女がナニか別のコトを考えていると思った。
このようにトマが自分の世界に入るコトは旅に出てからは無かったが、小さな頃は良くあったので、アークシュリラはトマをそのまま放置するコトにして、ジルフィーネとの話を続ける方を選んだ。
「言えるか、言えないかは判んないけど、ノドーラにナニをするのか教えてくれる?」
「ノドーラたちは作物にイタズラをしていたから、ヴァルリア様立ち会いで領主らとノドーラの話し合いをした。その結果こちらに移動してもらった。なので、月に一度程度、ワラワたちが出来た作物を届けに来ている」
「野菜を?」
「そうだ。来るモノは毎回違うが、今回はワラワがその役割を仰せつかった。それと届けた作物を食べるかは、ノドーラ次第だがな」
ジルフィーネは、この場所に来た目的を語った。
それはアークシュリラが自分と同じ属性であるから、多少の安心感が沸いたからであったのと、アークシュリラが産まれながらに持つ天性の人たらしの才能によるモノであった。
多分、属性が違っていても神さまの眷族であるため、さすがに質問されたのを無視したり、有無を言わさずに攻撃をしたりするコトはないだろうが、アークシュリラでなかったら素直に答えていたかは判らない。
「えっ、それだと、ノドーラを捕まえにここに来たんでも、仲間を救出に来たのでもないの?」
「捕まえる? 救出? 違うな。ノドーラがヴァルリア様らとの約束を守っているのだから、ワラワたちが捕まえる必要はないぞ」
「約束?」
「先ほど言った領主との話し合いで、あの街の周辺から去ると云う約束だ。それは、ヴァルリア様も立ち会ったのだから、領主とノドーラ双方ではなく当然ヴァルリア様との約束になる」
「それってノドーラにとって、とても不利じゃないの?」
「イヤ、そうでもない。その時にノドーラたちが必要と言ったモノは、ヴァルリア様や領主が無償で与えている」
「それで、野菜を届けに来たの?」
「そうだ。それも離れる条件だからな。さっきお主が言った、救出とか仲間とはなんだ」
アークシュリラが思った通りで、どうやらジルフィーネは、ノドーラを捕まえに来た訳でも、捕らえた男を救出に来た訳でもないらしい。
「ここ三ヶ月に亘って、ナニモノかがノドーラを捕まえているようで、ボクたちがさっき犯人らしきモノを捕まえたけど、君が仲間でそれを救出に来たかとも思ったんだ」
「それで、そのモノとワラワが仲間だったら、土のモノのためにお主らはワラワと戦ったのか?」
「勝てるかは判んないけど、戦うよ」
「ワレらは、風同士だぞ」
「ボクは、風とか土とかは関係ないよ。困っていて、助けを求められたら誰でも助けるよ。それで、たとえ友だちと戦うコトになってもね」
アークシュリラは、確かに様々な知識を風の神によって与えられてはいるが、ウィンデールを初めとした風の神々に一度たりとも会ったコトはない。
たとえ会ったコトがあっても、アークシュリラにとって風は、4つある属性の一つでしかなかった。
それに、別に今回の件で風の眷族たちから、裏切り者と目の敵にされても別に困らないし、風の神さまから与えられた知識が無くなったり、魔法が使えなくなったりしても仕方ないと考えていた。
「そうか」
「でも、違ったみたいで良かったよ。急に話し掛けてゴメンね」
「それでワラワに声を掛けたのか?」
「そう。でも、最初から犯人と思ってたら、声でなくて、この剣で挨拶をしたけどね」
アークシュリラはジルフィーネに見えるように、ゆっくりと剣の柄の部分を撫でた。
ジルフィーネは、アークシュリラの剣が火の神力を有するモノで、それに付いている鍔も水の神力を保有するモノだと判った。
しかし、風の神の力も剣から感じたので、敢えてそのコトには触れずにいた。
「なる程。どうりで最近になって、畑の近くで良くノドーラを見掛ける訳だな」
「畑の傍で?」
「そうだ。しかし、ノドーラどもは全く作物にイタズラをしてこない。約束を破って、自分たちで近寄ったにしては不思議でならなかったのだ。誰かがここから連れ去って、畑の近くで放っているのだな」
「そうなの?」
畑の傍にノドーラを放って、あの男性はナニをしたいのだろう。
もし畑を荒らす目的ならば、ボアや、この辺に居るのかは判らないがジャイアントボアの方が格段に良いとアークシュリラは思った。
「少し待っていろ」とジルフィーネは言って、ひんやりとした風を四方に放った。
そして、ゆっくりと言った。
「この件は、ヴァルリア様に報告をして、ワラワたちが処置をしよう」
ジルフィーネの喋る言葉の強さや言い方に変化はないが、アークシュリラはそれに多少の怒りの感情が交じっているのを感じた。
でも、ここで話し合いを終わらせたら、今までやっていたコトが水の泡になってしまう。
せめて、犯人とかを聞かなければ納得は出来ないし、出来たらジルフィーネに任せるのではなくて自分たちで解決をしたい。
アークシュリラがジルフィーネに聞いた。
「犯人が判ったってコト?」
「判ったぞ」
「ボクたちがさっき怪しい人を捕まえたけど、でも、ナンにも語ってくれなくて……やっぱり犯人だったの?」
「己の罪を白状してないのだな。でも、奴はノドーラを捕まえに来たから心配するな」
「そんなコトも判るんだ! さすがだね」
ジルフィーネがそう言ったから、あの男を捕まえて縛り上げたのは一応正解だったと言える。
これで、あの男の縄を解いて謝る必要は無くなった。
トマはこの会話は聞こえているハズたが、ここまで一言もジルフィーネとの話し合いに入って来ていない。
アークシュリラは、彼女がまだ自分の世界に居るのかと感じたが、そろそろ話に参加をして欲しいと考えてトマに声を掛けるコトにした。
●最後まで読んで頂きありがとうございます。
誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。
ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。
●今回は、アークシュリラが風の眷族だある妖精のジルフィーネと話すお話です。
ノドーラを捕まえていた犯人は、捕らえた男性と判りました。
あとは、男性が二度とやらないようにお仕置きをしたら問題は解決かな。




