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82 二人で話し合う

今回も読みに来てくれて、本当にありがとうございます。

 アークシュリラが、周囲を一通り眺めてからトマに尋ねた。


「トマ。この辺りって、あすこしか本当に街はないのかなぁ」

「私たちが魔法を使ってもそれらしき反応はなかったし、歩いているときにも建物らしきモノは見えなかったから、あすこだけじゃないかなぁ」

「そうなんだよね。ボクたちはいろんな方角に歩いていたけど、村の一つも見ていないんだよ。それってかなりおかしいと思うけど、どう思う」


 今までだって、街はおろか村すらない処をずっと歩いてきた。

 アークシュリラはおかしいと言うが、トマにはナニがおかしいかが判らなかったからアークシュリラに聞いた。


「なんで、おかしいの?」

「だって、あんなに巨大な街が、一つしかないんだよ。もし、疫病とか災害などで困ったコトになっても、誰も助けてくれないよね」

「そっか。互助的にも、あんなに巨大にしないで、複数の街があった方が良いかもね」


 この地域にはたくさんの勢力があって、それらに接している訳では決してない。

 そもそもノドーラに会ってからでも、二人が通っていた所は誰の支配も及んでいないと思われる場所の方が圧倒的に多かった。


 なので、二人以上の子供がいるのならば、あの街を相続しなかったモノに新たな街か村を作らせても良い。

 確かに、複数の街や村があるコトで新たな火種になるコトもあるけど、一つの街をどちらが相続するかを争うよりも平和だろう。


 それに、それぞれが足りない部分を補い合ったり、互いに競い合ったりしていけば双方の街が加速度的に発展する場合もある。


「それと領主の家系だって、子どもが一人しか生まれなかった訳ではなかったしね」

「それは私も気になったよ。他の子どもたちはどうしたんだとね」


 あの街の図書館で調べたところ、領主になれるのはずっと一人だけだった。

 あれほど巨大な街なのに貴族的な人たちは存在しないし、複数のモノによる合議制は一度たりとも採用されたコトもないらしい。


「さすがに、領主の子どもを殺害とか追放はしないと思うから、全員を配下にしたんじゃ無いかなぁ。でも、能力に圧倒的な差があったら納得も出来るけど、大差が無かったり、母親の身分に差があったりすれば争いになると思うけどね」

「そうだよね。同じ程度なら長子と言うだけで納得させるコトは出来ても、身分に差があったら争いになるよね」


 長子相続は本人同士が納得していても、身の回りの世話をしている連中がそれに納得するかは別の話である。

 旗頭として周りにいるモノに担ぎあげられて、内紛や内乱に発展するコトもある。

 トマやアークシュリラが吟遊詩人(ミンストレル)に聞いていた物語でも、そう言った内容のモノが幾つもあった。


「あの街の歴史では、内紛や内乱は発生して無かったよね」

「不思議と、相続は平和裡に行われていたね」


 トマもアークシュリラも、そんなコトはないと考えている。

 しかし今は、あの街が歩んできた正しい歴史を知る必要はない。


「今日あしたに領主が交代するとか、代わったばかりとか云うコトも無かったよね」

「そんな話は出てなかったと思うよ。でも、交代したとしてノドーラは関係ないんじゃないの?」

「確かに、ノドーラを捕まえてもたいした戦力にはならないよね」


 コビトの戦闘力は高くないので、何人増えようが戦力には影響がない。

 それは、アビスポン……いやアティンヴェスは確かに手強かったけど、それに攻撃をされて逃げていたくらいだから、戦闘力は容易に想像ができた。


 その上、魔法も使ってはいなかった。

 アティンヴェスには効かないまでも、多少でも魔法が使えるのなら自分を守るくらいは出来ただろう。

 例えば目眩ましとかは有効かも知れない、そう考えると魔力も少ないのではとトマは思う。


「コビトが増えたら、逆に管理が大変だよ」


 ノドーラが代々領主によって保護、管理をされていて、居なくなるとその地位が怪しくなるなら交渉に使える。

 しかし、この地は街から少し遠いので、それは考え難い。


 夜になり攫いに来るモノが現れるまで他にやるコトも無いので、あの街で見聞きした内容やノドーラを捕まえていると思うモノを話し合っていた。

 と云っても、ノドーラをどの様に利用するかが判らない現状では、互いに疑問に感じた点を言い合っているだけであるけど……。


 陽も傾き出して、月の出ない日が始まろうとしている。



*************************************************

少し月について説明をします。

この世界の月の満ち欠けは、決して見た目――惑星などの影になって、そのように見えると言うことではありません。

本当に月自体が丸くなったり半月になったりします。

ナゼ、月自体が欠けるかは、この星で暮らすものに魔力などを与えているためであります。

ですから、月の出ない日と云うのは、本当に月が一時的にでも無くなる日と云うコトです。

しかし、魔力を与えるコトによって自身が満ち欠けすると云っても、満月の翌日がミカヅキとか、月の出ない日が何日も続くなどと云うコトは滅多に起きません。

月自体の色も黄色だけでなく、たまに赤や青い月も昇りますし、希に二つ以上の月が昇ると云うコトも起きます。


ついでに語りますと、トマとアークシュリラが図書館で話していた『魔力が減る』と云うコトは、コビトだけでなく全ての生き物に現れる現象です。

トマが『自分もそうだよ』と言わなかったのは、杖や指輪などの媒介するモノを使って魔力を増幅しているから気にならなかっただけです。

一般的な魔法使いは夜間に月から与えられた魔力を、朝に杖などの媒体に移して貯めておきます。


また、ナゼ、月が消え去って新たに誕生して、そして同じ感じに満ちてから欠けていくのかはナゾであり、解明されていません。

しかし、そのようなコトを真剣に考え研究しているのは、ほんの一部の占星術師(アストロロジャー)天文学者(アストロノマー)くらいとでしょう。


根本的な研究の目的は違いますが、魔法に付いていて研究をしている魔導師(ウィザード)も、月と魔力の関係でそのコトを調べるコトはあるかも知れません。

*************************************************

●最後まで読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。

ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。

●今回は、トマとアークシュリラが街で調べたことを話し合うお話です。

ようやく、次の話しから『月の出ない日』が始まります。

多分、始まります。


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