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81 コビトに最初に会った処へ戻る

今回も読みに来て頂き、誠にありがとうございます。

 小屋をみつけた以外にたいしたコトもなく、二人は目的の場所まで戻ってきた。

 しかし戻っては来たモノの、ここでナニをするかまでは考えていなかった。


 そもそも犯人の目星が付いていてそれが街にいるのならば、酒場やギルドで様々な人々がする噂話を聞いたり、市井で情報収集したりした方がよい。

 それは、アークシュリラの人たらし能力から言って、それらの方が簡単であるからである。

 しかし、あくまで噂話や市井で集めた情報なので、それが事実か調べあげるのは簡単ではないけど……


 後は図書館で本や資料などから情報を得るくらいしかない。

 確かに、街にあった図書館には膨大な蔵書があったが、二人の目的にぴったり当てはまる書物は残念ながらみつからなかった。

 なので、近いモノを探し出しては何度も推論を重ねていたが、いくらそれを行っていても出した答えが正しいのか、はたまた誤っているのかを検証する手段はなかった。


 そこで二人は判ったコトは全然足りないけど、これ以上街にいても仕方ないと判断をした。

 極端な話、この様な街での情報収集はいつでも出来る。

 しかし、今回も月の出ない日にノドーラを攫いに来るならば、その日をこの地で迎えないとならない。

 次のその日は、どんなに頑張っても一ヶ月も後になるから、今回、ここまで戻って来た一番の理由であった。


「アークシュリラ。まだ時間があるけど、どうする?」

「時間があると言っても、あっちこっちへ行っている時間はないよね」


 陽はまだ高くにあるものの、既に真上を通り過ぎている。

 二人は、経験則から今日が月の出ない日と考えていたから、他の所を調べに行ってこの場所を離れては、街から戻って来た意味がなくなる。


「そうだね。移動するのは、ちょっと難しいかな」


 行くだけなら時間はあるが、そこで調査をしてから再び戻って来るには時間が足りない。

 中途半端な時間と云うコトである。


「だったら、ここでナニもしないで待ってる?」


 アークシュリラがそう言ったが、ただ待っているのはもったいないとトマは考えて言った。


「私たちって常時魔力を放出してる訳ではないけど、探索系の魔法とかを使われると居ることがバレるよね」

「そうかもね。だったら、どうするの?」

「私たちの居る所に、結界を張った方が良いかなって思ったんだよ」


 もし相手が対魔法(アンチマジック)などで居場所を見つからないようにしているなら、自分たちだけナニもしないのはおかしい。

 それに自分が使う探索系の魔法でもトマが魔法使いだと判るので、相手がそのような魔法を使えば自分たちが居るコトは判ってしまい、今日の作業を中止しかねないとアークシュリラは思った。


「そうだね。少しでも、不安材料は減らした方が良いよね」

「じゃ、見つからないように、結界とかを張っておくね」

「お願い」


 トマは自分とアークシュリラを中心として10メートル四方の大きさがある結界をはった。

 そして、対魔法(アンチマジック)も施した。

 この中にいる限り、相手からは察知される確率は随分と減るハズである。

 それは、もちろん相手のレベルにもよるが自分と同等程度のレベルならば、そう簡単に破られない自信もトマにはあった。


「アークシュリラ。この中でも気配(ツァイヘン)の魔法は使える?」

「やって見るよ」


 アークシュリラはその中で魔法をいつものように発動させて、近くに居るモノの気配を読み解いている。

 少ししてアークシュリラが言った。


「ナンとか使えたよ」

「ナンとか?」

「イヤ、結界の中から魔法を使ったのが初めてだったから、どんな感じか確認をするのに手間どったってコトだよ」

「確認って?」

「範囲はあの街まで届くから、そこがどんな感じに判るか確認したんだよ」


 アークシュリラは魔法がただ発動させられるかだけではなく、ナンも問題無くみつけられるかまで確認していた。


「それで、判ったの?」

「うん。判ったよ」

「だったら平気だね」


 トマとアークシュリラは張った結界の中に居るので、攫いに来るモノがこれから魔法で探索をしても二人をみつけるコトは簡単にはいかない。

 後は、いつものように来てくれればよい。


「平気だけど、ノドーラも警戒してるのか、今日はあんまり出て来てないね」

「それは魔法で判ったの?」

「イヤ、気配だよ。一度会ったからね」

「やっぱり、そう言った感じなの?」

「大体が遭遇して相手の感じを把握してたんだけど、今回、ノドーラをボクの手に乗せたからね」


 魔法で魔物などを探索する場合と似ているのだとトマは思った。

 それは、探索の魔法を使えば見たことも無い魔物でも居ることは判る、イヤ、何かの魔力を持ったモノがあるコトは判る。

 しかし、魔法ではそれの名前とか特徴を表示する訳ではない。

 なので、書物や人伝えに聞いただけだと魔力などを体感したことがないから、その魔物がナンであるかまでは判らない。


 出会っても直ぐに逃げたり、遠くで見ただけだったりして、魔力を感じるコトが出来なければ知らないのとあまり大差はない。


「それで、出歩いてないの?」

「少しは居るようだけど、それ程居ないよ」

「もともと、少ないんじゃないの?」

「イヤ、ボクが初めて気配(ツァイヘン)の魔法を使った時は、もっと居たけどね」

「それって、また攫われたってコトじゃないの?」

「どうだろうね。ヘルタフは月の出ない日って言ってたけど、今回はもう既に来たかまではボクには判んないよ」


 それもそうである。

 ノドーラに会ってから、ずっとここで犯人を待っている訳ではない。

 あっちこっちへ行っている間に、犯人が現れて捕まえて行ったコトは充分に有り得る。


 図書館で知り得た通りノドーラの魔力が弱まる……これが月の出ない日には半減するとか、ゼロになると云うのなら当日に来る意味合いが強まるが、月が欠けるに従って徐々に減るのなら、別に2、3日ズレた処でたいした差はない。


「そうだね。ノドーラに会いに行く?」

「それは、やめよう」

「ナンで?」

「ヘルタフは仲間が攫われたコトは知っていても、あまり良く判ってないと思うからね」


 確かにそれは、ヘルタフに話を聞いた時にトマも感じた。

 最初は隠しているのではといぶかしがったが、質問を変えてみても核心部分になるとヘルタフの答えはあいまいだった。

 それは、幾度となく質問の仕方や聞き方を変えたから、騙しているのならばボロが出てしまい結局は辻褄が合わなくなる。

 しかし、ヘルタフにはそれが一切なかった。


「そうだったね」

●最後まで読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。

ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。

●今回は、トマとアークシュリラがヘルタフに初めて会った処へ戻ってからのお話です。


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