77 広場で話し合う
本日も読みに来て頂きありがとうございます。
トマとアークシュリラの二人は、たくさんの野菜を幾つかのお店で購入してから、街の中心部付近にある広場にやって来た。
ここに来る途中の店先で売っていた、アピーチュを焼いたモノやジャガイモの揚げたモノを買っている。
広場には椅子もあったが、二人は芝生に腰を下ろしてそれらを食べていた。
「このアピーチュを焼いたモノって、とても甘くておいしいよ」
「本当だね。ロゾーダと同じで、ただ焼いただけと言っていたけどスゴい甘さだね」
トマやアークシュリラは、甘い野菜を知らない訳では決してない。
ファリチスの近くでも、ルタバガやアーティチョークなどの甘い野菜は自生したモノが実っていた。
住民はそれらを無断で採取しても問題はないので、各自で摘んで自分の好きなように食べていた。
当然のこと、それらを調理したモノはお店でも提供されていたから、二人は食べた事はある。
それでも、こんなにたくさんの種類がある事を、初めて知ったのも事実であった。
「こっちのジャガイモも、おいしいよ」
「うん。これはお酒とかと、一緒に食べても良いかもね」
「ファリチスの食堂の人たちに渡したら、もっとおいしい料理にしてくれるかもね」
「そうだよね。私たちが考えるより良いよね」
二人の料理に関する知識は、それほど豊富ではない。
買ったり、自分で採取したりした野菜を切って焼くだけとか、揚げるだけと云う方法なら出来るが、ナニかと和えれば良いのかとか、どのように加工したら更においしくなるとかは、残念ながら判らなかった。
「でもトマ。ボクたちが通った所には、ロゾーダは実ってなかったけどね」
「通らなかった方角じゃないの。これほど売っているんだから、かなり広い所が必要だと思うけどね」
二人が通って来た所は道ではなかったとはいえ、そんな広大な畑があれば多少離れた所にあっても見逃すコトは考えにくい。
それでも見ていないのだから、自分たちが通って来た方角以外にあると考えるのは至って自然であった。
「飢えないようにと言ってたけど、簡単に育てられるのかなぁ。あんなにキレイに整然とした実を付けさすのは大変だと思うけど……」
「判んないけど、大変ではないんじゃないかなぁ。でないと領主が育てないと思うけどね」
「領主自身は、育てていないとボクは思うよ。でも大変でないなら、ファリチスでも育てられるかなぁ」
「きっと、育てられると思うよ」
「じゃ、苗か種も入手しないとダメだよね。それと、もう一度図書館へ行って、育て方とかを調べないといけないね」
ファリチスでは、小麦やライ麦とかが栽培されていた。
それは街で暮らす人々が飢えない程度であって、決して潤沢にある訳ではなかった。
それでも、人々が空腹で暮らさなければならないような、コトはなかった。
そんなことを言っている二人だが、ファリチスに帰りたいとは思っていなかった。
「アークシュリラ。昨日食堂でノドーラと聞こえたのって、ロゾーダと言っていたんじゃないかなぁ」
「ボクもそう思ったよ。音感が似ていて突然耳に入ってきた言葉だから、知らないボクらが区別できなかったのも納得できるよ」
「きっと、ロゾーダの取り引きが、近いウチにあるんだよね」
ノドーラとロゾーダの文字自体は似ていないし、落ち着いて聞けば間違えようはない。
しかし、騒々しい店内であったのとノドーラのコトで頭が一杯になっていた二人なので、どうやら聞き間違えたのだと思った。
「でも、アークシュリラ。そうなるとノドーラの件は、ナンにも手がかりがなくなっちゃったね」
「そうだけど、もしボクたちの聞き間違えじゃなくノドーラの取り引きだったとしても、取り引きの現場を押さえて、売り手……イヤ違う人かも知れないから、捕まえているモノを探し出さないとダメだよね」
「そうだね」
「見つけると言っても、この街の中に居たら、結界の中なので魔法では見つけられないよね」
「それは、そうなんだけど……」
魔法に不慣れなアークシュリラは仕方ないにしても、トマもこの街を守っている魔法使いよりも強い魔法を発動させる自信はなかった。
それはアークシュリラが街を囲む壁際で魔法の訓練をしていた時に、この街に張られている結界や対魔法がどのようなモノなのか、はたまた穴があるかを調査を兼ねて確認していた。
しかし、穴を発見するコトが出来ず、更に結界のうち一つは判ったが、多重に張られた総ての結界の内容を読み解くには至らなかった。
これほどの防衛をしてあるのだから、犯罪者で無ければ街の中に居るコトは、この上ない安心感があるだろう。
なので、トマ自身も『イヤ魔法で』と言うつもりはなかったので、探す方法は皆無と言って良かった。
そこで、トマが続けて言った。
「じゃ、市場の裏へ行く必要はないってコトで良い?」
「そうだね。今の状態で、そこを見張っているのは、時間ばっかりかかって賢明ではないよ」
市場の裏での取り引きがそれほど頻繁に行われていないのなら、犯人をみつけるのに張り込んでいても良い。しかし、取り引きが多く開催されていたら、違う取り引きの可能性がある。
イヤ、取り引きの品目が違うだけで、取り引き自体を行っているのは、二人が探し求めているモノの場合だってある。
なので、ナニも判らない現状で張り込んでいても、犯人に気付かれる恐れがあるから、それを行う意味は全く無い。
「アークシュリラ、ロゾーダやノドーラのコトを調べに図書館へ戻ろうか?」
「トマ。そもそもあんだけ蔵書があるのに、ノドーラのコトは全く判んなかったじゃん。もう図書館で、ノドーラについて調べるのは諦めた方が良いかもね」
「そう言っても、調べないコトには判んないよ!」
「もう直ぐに月の出ない日だから、攫いに来れば判んなくても捕まえちゃえば良いと、ボクは思うけどね」
ノドーラを捕まえている理由は判らないけど、攫いに来たら捕らえれば良いとアークシュリラは言うけど、トマは理由の如何によっては、攫うモノの味方をしても良いのではと思うようになっていた。
「確かにそうだけど、理由が分からないと、攫っているモノが悪いとは一概に言えないような気もするんだよ」
「両者に言い分があるのは判るけど、そんなコトを言ってたらナニも解決出来ないよ」
それからしばらくの間、今時点で判明していることや互いの考えなどを整理していった。
そして、話が暗礁に乗り上げそうなる前に、広場を出て雑貨屋などで不足気味な消耗品や乾物とかを買った。
それでもまだ時間があったので、行きたい所がない二人は図書館へも行き野菜の育て方とかを調べた。
文句を言いながらアークシュリラも、ノドーラについて調べていた。
●最後まで読んで頂きありがとうございます。
誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。
ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。
●今回は、トマとアークシュリラが買い物を済ましてから広場で話し合うお話です。




