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76 街を散策する

本話も、読みに来ていただき感謝感激です。

ありがとうございます。

 図書館で納得のいく調査が出来なかった二人は、気分転換に街を散策している。


 メイン通りは旅人や住民とか警備隊など多様な人々がいて、もの凄い数が往来をしている。

 中には人以外のモノ――ドワーフやエルフと思われるデミヒューマンや好戦的でない魔物であるコボルトなどもみられた。

 様々の種族が居れば些細な争いはあると思うが、大きな問題も起こさずに生活をしているようだった。

 それは、領主たち街を運営しているモノたちが、日々の諸問題に真摯に向き合っている証しとも言える。

 小さな問題とたかを括っていれば、表面化したときには取り返しのつかないコトになる場合がある。

 それを沈静化するのに膨大な人員や経費も掛かるから、放って置いて良いコトは一つも無い。


 通りを歩く人々からは、力で押さえられている気配も見受けられなかった。


 トマとアークシュリラは、メイン通りでは自由気ままに通行できないと諦めて、裏通りを通って散策をしている。

 裏通りと云っても、アウトローの巣窟みたいな薄暗い感じはない。

 メイン通りより道幅が少し狭いくらいで、今まで立ち寄った街のメイン通りともなんら遜色がなかった。

 ここがメイン通りと言っても差し支えはないくらいに、人やモノが通る道も石畳で綺麗に舗装がされている。


「図書館には本がたくさんあったけど、うまく調べられなかったね」

「こう言った時に、上級者たちはどうやって調べているのかなぁ」

「本当にナゾだよね」


 上級者と云わずベテランたちも犯人が判らないモノゴトについては、考えうる一つ一つの事象を調べてそれが無理と判断したら消していく。

 そして、最後に残ったものが如何にトンチンカンであっても、それが真実であると考えて行動に移す。


 人々は最後の段階や結果しか知らないので、そんな泥臭いコトを行っているとは夢にも思わない。

 なので、やっているコトはトマやアークシュリラと、なんら変わりはなかった。

 確かに上級者ならば、二人がそう易々と立ち入れない王城や貴族の館にも行けるから、一般の人が知り得ない情報の入手もそれ程困るコトでないし、魔法も強力なので多少のコトなら無視出来るのも事実である。


 二人は店先に並ぶ商品を見ながら、どうしたら良いかを思案し続けた。

 そして、少し歩くとトマが左手を挙げて言った。


「アークシュリラ、あれ」

「あっ八百屋でみた、葉っぱ」

「あんな感じに料理するんだね」


 お店の店頭に設置された金属の箱の上に、例の葉っぱ付きのものが並べられてあった。

 箱の中では薪かナニかで火を熾しているのだろうか、たまにそれが爆ぜて小さな火柱が上がっている。


 さすがに買い手が現れるまでずっと焼いている訳にはいかないようで、ある程度火が通ったら少し離した位置に並べ替えている感じにみえた。


「でも、所々葉っぱが焦げているけど、そのまま食べるのかなぁ」

「そうじゃないの」

「だったら、焼かないで、茹でた方が良いと思うけどね」


 そんな風に二人が言っていると、それを買う人が現れた。


「あっ、買ったよ」


 そのモノは慣れた手つきで葉っぱを剥いて、それを握る部分にして現れた黄色い中身を食べだした。

 途中で千切れてしまった葉っぱは、店先にある箱の中に入れていた。


「私たちも買う?」


 トマがそう言ったが、アークシュリラはナニを言っているんだと云う感じでお店の方に近付いていく。

 トマもその後ろに着いていく。


「ボクたちにも、それをくれないか」

「あいよ」


 アークシュリラはそれを二本もらって、後ろにいるトマに渡した。

 そして、先ほど見た通りに葉っぱを剥いて握る部分にしてから、黄色い実にかぶりついた。

 

「甘くて美味しいよ。トマも早く食べなよ」

「うん」

 トマも同じ様にしてかぶりついた。


「本当に美味しいね。おじさん、これってナンと云うモノなの?」

「知らないで買ったのか? あぁ、旅のモノなのだな、まぁ良い。ロゾーダだな」

「これってたくさん売って居るけど、この辺で取れるの?」

「街の周辺で取れるぞ。そのほとんどが、領主様の畑だがな」


 畑で取れると云うコトは、この一本一本が地面から直に実るのかと二人は考えた。

 そうだとすると、畑はトンでもない広さが必要になるなぁとも思えた。


「みんな、そこへ取りに行くの?」

「領主様の所で取れた物は、不定期だが市場の裏手で格安で分けてくれている」

「格安で」

「そうだ。人々がひもじい思いをしないようにとの、有り難いご配慮だな」

「そうなんだ。ありがとう」


 確かにパンに比べても、買った代金は安かった。

 焼く手間などを考えると、ただみたいな料金設定である。

 なんなら、金額は街で定めているのかも知れない。

 食べ終えて、二人はまた散策をしだした。


 道の両端に並んだお店の店頭にある商品を見ながら、二人は散策をしている。


 肉屋に並ぶ商品は外の街と大差は無かったが、八百屋はどこの街にも無かったモノが並んでいた。

 街に入った際に見えた葉っぱが一番大量に売られていて目立つが、それ以外にもいくつもあった。

 トマやアークシュリラは目に付いて気になったモノを、互いにお店の人に名称とか料理の仕方を聞いた。

 アヒと言うモノは、手の指くらいの真っ赤なモノで、見た目は多少のデコボコがあり、それはとても辛いらしい。

 ジャガイモは、握りこぶしくらいの大きさでデコボコしていた。

 アピーチュは、紫色で腕くらいの太さがあり、とても甘いらしい。

 人の頭ほどある、とても硬いカボチャと言うモノも売っていた。


 店員はどれも美味しいて言っていたので、自分たちの口に合うかが判らないが一通り購入をした。


「たくさん買ったね」

「これだけ色とりどりあれば、食事も楽しくなるよね」

「そうだね」

 ファリチスなどでも、トマトやにんじんとかの色が付いている野菜はある。

 しかし、それらは赤系統が多かった。

 赤系統が多かったのは、商人とかがにんじんやトマトなどの目立つ色をした野菜の方が売れるから、それを多く運んで来るからしょうがない。

 それが、いつしかそれぞれの場所で栽培されるようになったものだからだ。

 なので、ジャガイモやアピーチュとかカボチャは、見た目が美味しそうではないから運ばれることはなかった。


●最後まで読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字はチェックしているつもりですが、漏れる事が多々あります。

ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。

●今回は、トマとアークシュリラが謎の食べ物を食べるお話です。

読者の方はナゾではなく、あっあれかと判ったと思います。

そうです、例の葉っぱの正体はトウモロコシです。

この世界には唐帝国が無いのに、トウってつくのは可笑しいのでロゾーダって名にしました。

最初は、アステカで呼ばれているツィントリや英語のメイズにしようかとも考えましたが、あまり知れ渡っていないならオリジナルで良いかって……


外の野菜たちも、唐辛子はアピ、サツマイモはアピーチュとしています。

しかし、ジャガイモはジャガタライモでジャカルタでジャガトラだとか、カボチャはカンボジア瓜だから……と言ったらほとんどの野菜をオリジナルの名称にするか、その地名を産地として出すかになってしまいますよね

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