72 別の場所に移動する
今日も読みに来て頂き、本当にありがとうございます。
この場所にあった魔力について、トマの考えや説明を聞いたアークシュリラが言った。
「それじゃ、この場所に居ても仕方がないのかなぁ」
「他の場所も似たり寄ったりかもよ」
「一番強い魔力の所へ来たから、そうなるよね」
二人はトマが察知した魔力が一番強い処へ来ているから、別の場所へ移動したとしても魔力を出して居る現場を押さえないコトには何ら変わりは無いと感じた。
「ところでアークシュリラが察知した気配で、北の方が人数が多いって言っていたけど、そこは村とか街ってコトはあるの?」
「それ程じゃないと思うよ」
「あの風って、対魔法が掛かってたらダメだよね」
「それはそうだよ。風もそうだけど、気配も対魔法の効力を無力化するコトはないからね」
アークシュリラの回答を聞いて、トマはあるコトに気が付いた。
「それじゃ、結界の中はどう」
「その中に居たら、反応しないと思うよ。ボクの魔法では結界などがあったら気配を感じられないけど、感じられたから結界などは無いんじゃないかなぁ」
「二カ所のコトじゃなくて、他の場所ってコトは?」
「トマは犯人がそう言ったモノを、使っていると考えてるの?」
「ノドーラを捕まえられる人だよ。見つからないように、カモフラージュしてもおかしくはないと思うけどね」
「確かに、その考えもあるね。でも、そう言ったモノを全て無力化するなんて無理だよ」
相手がどんな結界を掛けているかが判らないコトには、離れた場所からそれを無力化するコトは普通だと不可能である。
普通はと言ったのは、魔力が相手より何倍も強力なら、遠隔でも結界自体がないモノとして魔法を発動させるコトも出来るからである。
しかし、人間どうしなら多少の差異はあっても、そんなに魔力の量は違わない。
一般的な結界の対応は、それが施してある近くに行って調査をして穴を見つけるコトである。
そうすれば、結界を破壊しなくても魔法の効力を発揮出来る。
もし調べて穴が見つからなくても、どのような結界かが判れば干渉しない方法を考えるコトが出来るかも知れない。
そこは魔法に関する知恵と知識が、相手を上回れば良いだけである。
なにはともあれ、どんな結界が張られているかが判らないコトには話は進まない。
ノドーラを捕まえていたモノの拠点を探しだして、そこを襲えば問題が解決すると安易に考えていた二人にとって、相手が拠点もなく移動しているとか、結界や対魔法とかで身を隠しているとか、更に、この地上で生活するモノ以外だったらと言うコトは想定の範囲外であった。
以前に貴族に絡まれた時と違い、今の二人は神々に様々な力を授かっているから、なんとかしてこの問題を解決したいと云う思いがあった。
それに、もし今回のコトもここで放置をするコトにしたら、これから旅を続けていても少しの障害が発生しただけでモノゴトを諦め続ける気が二人にはした。
「だったら、トマはこの草原を隈無く探すって言うの?」
「そんなコトは出来ないし、思ってもいないよ」
「そうだよね。何年も掛ければ万遍なく調べるコトは出来るかも知れないけど、そんなコトに時間を使うのは無駄だよね」
「そこで感じ取った気配で北の方が人数が多いと言ったけど、対魔法が掛かっている街に入る人ってコトはないかなぁ」
「確かにその可能性はゼロでは無いけど……だったら、街かどうか調べにそこへ行ってみる?」
「そうだね」
街全体に対魔法を掛けていれば、出入りする人数にしかアークシュリラは気配を感じ取れなかったと云うコトになる。
対魔法により防御をしているなら、巨大な街だと云うコトも考えられる。
アークシュリラが北方に感じ取った、人の気配があった処に進むコトにした。
おおよその位置は判っているから、その方向へ進んでいる。
「ボクたちは歩く以外に移動する手段は無いけど、再び攫いに来て無いかなぁ」
「そう言えば、そろそろ月が出ない日だね」
「そうなんだよね。間近で無くても、すれ違ってもおかしくはないかも」
「でもそれって、まだコビトを攫う必要があればだよね」
「もう必要がないと言うの?」
「それが判んないだよ。そもそもコビトを攫っている人たちが、どう言う目的で攫っているかがね」
「目的がナンにしても、それを達成したら、もう攫う必要はないのか」
「そう。必要量に達したら、もう攫う必要はなくなると思うけどね」
「もし、そうなら見つけるのは至難の業になるよね」
攫う目的がコビトを売るコトなら、需要がある間はずっと攫い続けてくれる。
また、コビトからナニかを採取するためなら、永遠に必要と云うコトもある。
しかし、コビトを供物や生贄にするためなら、それが済めば必要はなくなる。
「アークシュリラ。このまま進んでいて大丈夫なの?」
「方角はあっているけど、心配なら魔法を使ってみる?」
「そうして」
【気配のそよ風!】
アークシュリラがそう唱えると、彼女を中心として優しい風が流れ出す。
それは、草原の中を何処までも広がっていく。
少しの間、目を瞑って黙って風を起こしていたアークシュリラが、目を開いてから言った。
「やはり北にあったよ」
「それって、もう少し細かく判らないの?」
「ボクが慣れてないだけかも知れないけど、難しいかな」
「頭の中に、北とか南って出るの?」
「少し違うよ。近ければこの方向にいると判るけど、遠かったらここからこの間にいるしか判らないよ」
アークシュリラは腕を上げて、トマに身振りで解説をした。
「風を使っているから?」
「そうだと思うよ。風だから地形の影響を受けるし、障害物は避けるから仕方がないよ」
アークシュリラが遠くの気配を感じるために使っているのは、ナニがあっても直進する光線ではないからそんなに細かく判らなくても致し方ない。
ちなみに、距離は短くはなるモノの気配の魔法だけなら、どの位置にどんなモノがどれほどいるかが判る。
しかし、そんな魔法に頼らなくても、近くならアークシュリラが経験によって会得した能力でカバーするコトが出来た。
●最後まで読んで頂きありがとうございます。
誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。
ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。
●今回は、トマが察知した場所で話し合った二人は、この場所ではナニも判らないから別の場所に移動するお話です。
外の場所へ行けば判るのかは不明ですね。
他の場所も残滓しか無ければ、袋小路になりそうですが……




