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7 それぞれの思惑 その1

今回も読みに来ていただき、本当にありがとうございます。

●この物語に出てくる魔法や職業に付いているルビや漢字表記は独自解釈の箇所があり、一般的なファンタジーのもの(小説やゲームなど)と異なる場合があります。

●誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。

ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。

 アシュミコルに仕える者は卵を回収出来たお礼として、杖と剣、そしてアイテム袋をトマとアークシュリラに渡して消えていった。


「アークシュリラ、帰ったね。くれたモノはスゴい感じがするけど……」

「そんだけあの卵が、大切なモノだったんじゃないの?」

「あの卵って、百年もかけて孵化するんだよね」

「違うよ。卵が孵化するまで、()()()百年だよ。何年前に産み出したモノなのかは聞いてないから、もっと長いよ」

「そうか。もし百年前に産み出したモノなら、孵化するのに必要な期間は二百年になるね」


 二人はそんな長い期間、孵化をしない生き物を知らない。


「孵化するまでの期間はトマが聞いたけど、これが何の卵なのか名前くらい聞いとけば良かったね」

「そうだね。もしかしたら、大きな街にある図書館なら判るかもね。あの色だしね」

「そうだね」


 そして気持ちが昂ぶっていて寝られないと思っていたトマとアークシュリラは、卵の件が解決したこともあり、次第にうとうととしだしてイツしか寝入ったのだった。




 話が変わって、アシュミコルの館。

 トマとアークシュリラから卵を回収した真紅のローブに身を包んだ者は、周囲に居るモノたちに脇目も触れずにアシュミコルの館にある一室へ向かっている。

 部屋に来る通路に居たモノ達も、特にその者を捕まえるコトもしていない。いや逆に、その者とすれ違う時は自から端に避け、更に止まって深々とお辞儀すらしている。


 そして目的の部屋に着いたその者は、そこにあった重厚な扉を開けた。


 部屋は応接室なのか、机があり椅子が整然と並べられていた。

 一番奥の椅子には既に一人の男が寛いで座っていて、扉を開けたその人物に向かって言った。


「ノックもなしに扉を開けるとは、全く躾がなってないな」

「悪かった。では、やり直すか? アシュミコル」

「不要だ。急用か」

「お前に借りたこのローブは熱すぎるぞ。それを早く返したかっただけだ」

「貸してくれと言われたから、貸しただけだ。文句を言われる筋合いはない。それにお主もローブくらい所持しているだろう」

「有るが、今回はアシュミコル、お主の使いとして行ったからな」

「そうだったな。思い出したが、そう言えばお前のマントは、ひっきりなしに風が吹いて寒かったな」


 真紅のローブに身を包んでいた者は、今回は分が悪いと踏んで話題を変えた。


「……そうだ例の卵だ、受け取れ」

「おっと、忘れる所だった。キチンと回収することが出来たのだな。ありがとう。それで今回は上手くいったとみたが、違うのか? ウィンデールよ」

「あぁ、上手くいった。そのことに関しては改めて礼をする」

「礼など、気にするな。で、二人居たと思うが、直接会ったお主はどっちと見た」

「はっきり言って判らん。魔法使いのトマは錫杖を、剣士のアークシュリラは剣を拒否反応もなく、意図も簡単に扱えた」

「そうか、まだ顕在化していないようだが、我々に近い力を保有していると云うのだな」

「そうだ。それでウィンデールよ、お主はどっちになって欲しい」

「アークシュリラだ」


 ウィンデールが即答した。

 判らんと言っていたから、これが少し考えた後なら判るが……自分は会っていないが、二人に直接会ったウィンデールが即答したのだから、何か有ると考えてアシュミコルはウィンデールに訳を聞いた。


「それはどうしてだ」

「あの子がまだ5才くらいの時だったと思うが、吾の眷族が猟師の放った矢で負傷して休んで居る所に、あの子が現れた」

「眷族と云っても、ウィデラスじゃないよな。あれは双頭の鷹だからな。小鳥か?」

「そのウィデラスだ。人界で探し物をしていて、低く飛行しすぎたのが原因だがな」

「あぁ、あの時か」

「そうだ。ロシファムの竪琴を探していた時だ」


 ロシファムの竪琴は、風の神が季節の変わり目を知らせる大切な神器である。それがないと、各季節の妖精や生き物たちに、個別に季節が巡ったことを知らせないと成らない。


 そんな神器を紛失したのだから、ウィンデールたちは総力を挙げて捜索をした。

 結局ロシファムの竪琴は、最後に使った者がいつもの場所に返却しなかっただけで、自身の館にある倉庫で発見された。

 当然のこと、神器を紛失したと云うこの騒動は、全ての神々が知る事態となった。


「そうか、それで」

「ウィデラスが傷を癒やして居ると、アークシュリラが近付いて来たらしい。勿論ウィデラスは負傷してても応戦体勢をとったが、あの子はそんなウィデラスに声を掛けたのだ」


 ウィンデールの言葉に、アシュミコルが興味を示して言った。


「ほう。儂でも少しは恐怖を感じるのにか」

「巨大な双頭の鷹が、戦闘態勢を取っているんだぞ。普通なら逃げるな。で、アークシュリラは真っ直ぐに矢の刺さっている箇所に近寄って言ったんだ。その間『いま、ぬいてあげるから、そんなになかないで。ひとがきちゃうよ』とか『いたいよね。わたし、がんばるからまってて』などとずっと言っていたらしい」

「うむ」

 アシュミコルは頷いて、少々アークシュリラに興味を持ち始めた。


「ウィデラスも人の言葉は理解出来るから、敵意のないことを覚って大人しく待ったんだ。それに、自分では矢が小さ過ぎて抜けなかったようだしな」

「矢ぐらい神界に戻れば、他の者が抜いてくれるだろう」

「刺さっている箇所が悪く、痛みで神界まで飛ぶコトが出来なかったんだ」

「急所なら、運がないな」


「そうは言っても、アークシュリラは子供だ。力はそれほどないから、矢を抜くのにとても時間はかかった。それでも、ゆっくりと丁寧に矢を抜いてくれた。更に自分のために持ってきた薬まで使って、傷の手当てをしたんだ」

「それで、お主はアークシュリラを推すのか」


 アシュミコルは、ウィンデールがアークシュリラを押す理由を理解した。

●最後まで読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。

ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。

●今回は、トマとアークシュリラのお話では無く、真紅のローブに身を包んだ者……神たち(火の神アシュミコルと風の神ウィンデール)の話です。

アークシュリラの子どものころ話になりました。

ウィンデールは名前だけだったので、読者の皆さんはナニモノ??と思ったかも知れませんね。(気が付いたんですが、直してしまうとバランスとかがめちゃめちゃになってしまいそうでそのままにしました。すみません。)

神々の回は、もうしばらく続きます。


次回のお話は、1月22日0時0分に公開予定です。

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