63 どうすれば良いの
本日も読みに来て頂きありがとうございます。
トマとアークシュリラの二人は、巨大なスズメバチにそれぞれが異なった魔法を放った。
互いが放った魔法では、相手の硬い外骨格に阻まれて有効打を与えることが出来なかった。
威力を上げられれば、硬い外骨格を貫くことが出来るかも知れない。
しかし、今の自分にはこれ以上威力を上げるコトは出来そうもないとトマは悔しがった。
アークシュリラも魔法による遠距離攻撃が効かなかったコトで、相手が剣の届く範囲に来れば斬れるのにと考えながら飛行しているモノたちを見つめている。
二人はそんな状況ながら、なんとか一矢を報いる方法を互いに考えていた。
氷がダメなら水じゃ無理だよね。ならば火かなぁ……火の魔法で全身と言わず、羽だけでも焼けば良いのかなぁ。
相手が一匹なら矢って方法もあるけど、弓では連射は出来ないし……
あぁでもない、こうでもないって考えているなら、試した方が早いとトマは考えるのをやめた。
「アークシュリラ! 今度は、火の魔法を使うから気を付けて」
「わっ、判った」
【炎矢!】
いくつもの炎の矢が空中に現れた。
そして、巨大なスズメバチを目掛けて、勢い良く飛び出していく。
巨大なスズメバチは、腹を少し飛来して来るモノに向けた感じがアークシュリラとトマにはした。
それが新たな攻撃態勢をとったタイミングだったのか、飛行を続けるために必要なコトなのか、はたまた羽を守る対策なのかは二人には判断が出来ない。
そして炎の矢は巨大なスズメバチに当たって、全身が炎に包まれて燃えたかに一瞬思えたが、それはただ魔法が相手に当たって爆ぜただけだった。
「トマ、これもダメだね」
「そうだね」
私の放った水と火の魔法は効かなかったし、アークシュリラの放った風魔法もダメだった。
彼奴ってナニが苦手なの? まさか土なの? 土で攻撃する魔法は……
土の魔法は壁を作ったり穴を掘ったりする防衛や便利魔法が多く、攻撃する手段としては今ひとつ使い勝手が悪かった。
確かに土や粘土で弾を作るものや、矢を作るモノはあるにはあるが……
トマは土魔法で、どれを放てば良いか悩んでしまった。
一方のアークシュリラはトマの火魔法でもダメなのって思ったが、自分は風魔法しか使えないと考え直して有効打を与える方法を思案する。
そうだ。相手に致命傷を与えなくても、あの高さから下ろすコトが出来れば、後は剣で斬るなり突き刺すなりどうにでもなる。
そうなれば、あの羽を使えなくすればよいだけだよね。
それに、ボクやトマが放った魔法でも羽に当たるのを防いでいたようだし、ならばこれしかない。
アークシュリラは、トマと相談した訳ではないが同じ様な結論に至った。
「トマ、ちょっと危ないかも知れないけど、一発撃ちたいのが有るんだ」
トマは、アークシュリラが魔法を放つことで、魔力が無くなって倒れたら大変だと思って尋ねた。
それは、今戦っている相手の方が移動速度は速いから、洞窟や湖などナニも無い草原だとアークシュリラを背負って逃げきることは出来ない。
それに、倒れたアークシュリラに注意しながら、自分だけで戦闘を継続することは難しいコトもあった。
「危ないって、どう言うコト?」
「気を付けるけど、周囲に被害が出るかも……」
「周りに被害がでたら私がなんとかするから、安心して放って良いよ」
「頼んだよ」
アークシュリラは巨大なスズメバチたちへ、剣を正確に向けて呪文を唱えた。
【大風!】
巨大なスズメバチたちの周りに風が吹き始めて、次第にそれは強くなっていった。
初めに風が吹き出した時なら巨大なスズメバチたちも自分の意志で逃げられただろうが、今の強さでは風が吹くところから外に行くこと、イヤ自分の意志で飛行するコトすらままならない状態になっていた。
その風は一方の方向から吹いているのではなく、四方八方そして上下からも吹き込んでいる。
また、竜巻のように規則的な渦を巻いている訳でもなく、全くのランダム、いやカオスと言った方が正しい。
なので、その風の中で巨大なスズメバチたちは、互いにぶつかっては離れ、離れてはぶつかりを繰り返していた。
さすがにそんな状態で羽を守るコトは出来ずに、それは次第に傷ついて破損していった。
アークシュリラは、その間もずっと剣を巨大なスズメバチたちに向けたままでいた。
少しして魔法の効果が消えると、剣を握り直した。
巨大なスズメバチは風が無くなるのと同時に、地面へ落ちてそのまま動かないでいる。
アークシュリラの放った魔法はただ強い風を起こすだけなので、それ自体がケガを負わすことは無い。
しかし、何度もぶつかったコトにより、巨大なスズメバチは意識を失ったようだった。
「アークシュリラ! 今のは竜巻じゃないよね」
「判った? 別のだよ」
「こんな魔法も使えたんだ。でも、全く危なくなかったよ」
「少し威力を弱めたし、ずっと制御してたからね」
「あれで、全力じゃなかったの? それに制御?」
「全力だと台風なみの風になると思うけど……それと、制御しなければ地形などの影響でどこへ行くか判らないしね」
いくらナニもない草原だとしても風は吹いているし、地面には多少の凹凸はある。
それがたとえわずかに感じる風や目測出来ないくらいの凹凸であっても、魔法で作った風は移動してしまう。
「そうなんだ」
地面に落ちた数匹の巨大なスズメバチをアークシュリラが確実に仕留めて、いつものようにアイテム袋に片付けようとしたところでトマが話し掛けた。
「アークシュリラ。私も、それをもらって良い」
「良いけど、いつもなら倒した魔物には見向きもしないのにどうして?」
「こんだけ苦労したから、記念に欲しいかなって」
「なんだ、そう言うこと。羽はボロボロになっちゃったけど、それなら全部あげるよ」
「それだと、アークシュリラの分がなくなっちゃうよ」
「じゃ、半分っこにしようか」
トマもアイテム袋を取り出して、二匹ずつ巨大なスズメバチをしまった。
本当なら巨大なスズメバチを良く調べていたいが、二人は助けを求めたモノがまだ居るのならケガをしているのではと考えて、先ほど巨大なスズメバチが地面目掛けて飛来していた所に近付いていった。
●最後まで読んで頂きありがとうございます。
誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。
ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。
●今回は、トマとアークシュリラが巨大なスズメバチとどうやって戦うか悩むお話です。
最後は、ナンとか倒しましたが……




