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62 助けを求める声

本日も読みに来て頂きありがとうございます。

 少し歩いていると、遠くにヴェスペが飛行しているのが見えた。

 獲物を抱えていないので巣の周りを警備しているのか、はたまたこれから狩りに行くのかは判らない。

 そのヴェスペは、二人に対して襲って来るコトもなく飛び去っていった。


「アークシュリラ。この傍に、ヴェスペの巣があるのかなぁ」

「あの場所からあまり離れてないけど、あってもおかしくはないよね」

「ヴェスペはそんなに攻撃的でないけど、ジャイアントになると急に凶暴になるよね」

「それは大きくなって、食べ物がたくさん必要になるからじゃないの」


 確かに魔物の中には、躯が大きくなると小さなサイズの時よりか凶悪になるモノが多い。

 それは小さなサイズの時はパワーも僅かだったモノが、巨大化して力が増大したコトによってそう見えるだけで本来の性格はなんら変わってない。

 まぁ、小さな虫だと食べる量もそれ程多くはないが、大きくなれば消費するエネルギーも増えるから食べる量も多くなる。

 そのため、攻撃をしている場面に遭遇する機会も増えるコトになるので、一概にアークシュリラの答えが間違っているとは、言い切れない。


 ヴェスペがおとなしく遠くへ行ったから、このまま進んでも問題はないと二人は思った。

 確かに、ヴェスペはこちらが攻撃をしなければ巣の傍にいても攻撃はしてこないが、それは決して無関心と言うコトではなかった。

 巣の傍に誰かが現れたら何匹かが巣から飛び立って、そのモノを警戒しだす。

 そして巣にちょっかいをだしたり、仲間へ攻撃を加えたりすれば一斉に戦闘モードに突入するのであった。


 まだ、ジャイアントヴェスペの巣もそばにある可能性があるので、二人は周囲の警戒を続けている。

 運が良かったのか、はたまたヴェスペは違う生き物によって殺されたかは定かではないけど、ここまで二人がジャイアントヴェスペに会うことはなかった。


「助けてくれ!」

 どこからか男性の声が聞こえてきた。


「トマ。誰かが叫んでいるよ」

「どこだろうね」


 トマとアークシュリラが居る所は木や岩などのない草原だから、声が聞こえる範囲に人がいれば見えないなんてコトはない。

 それが、たとえ遠方の叫び声で顔形までは判別出来なくても、姿形すら全く見えないコトは考えられない。


 トマとアークシュリラは声がしたと思う方向に歩いていく。

 助けを求めているのだから二人は走って行きたい気持ちはあるが、ジャイアントヴェスペの巣のコトを考えてその気持ちを抑えた。

 今ここで急いだとしても少し到着が早くなるだけで、急いだコトによって巣を壊してしまったら到着が非常に遅れてしまうからであった。


 少し行くと、数匹のスズメバチが巨大になったモノが地面に向かって飛行しては、また元の位置に戻るのを繰り返しているのが見えた。


「やっぱり、ジャイアントヴェスペが居たんだ」

 トマはそう言って、その巨大なスズメバチを見た。

 そして、自分が知っている知識と擦り合わせを行って、更に話を続けた。


「あれって、ジャイアントヴェスペではないよね」

「多分、違うかな」


 大きさは書物にあったジャイアントヴェスペとサイズ的には同じくらいだったが、全身の色が黄色と黒ではない。

 それは、鈍い光沢をもった黄色一色であった。


「なんだか判らないけど、ジャイアントヴェスペの仲間だと思うけど……」

「そうだね」

「トマ、奴らが地面に向かって行っているなら、あそこに誰かが居るのかもよ。そのモノを避けて魔法は撃てる?」


 アークシュリラは自分の魔法では地面に居るモノに被害がでると考えて、トマに尋ねた。


「やってみるよ」

 トマも攻撃魔法の調整なんかしたコトがなかったので、アークシュリラにそう答えた。

 そして、放つ魔法を決めた。


氷矢(アイスアロー)!】

 トマはそう唱えながら、錫杖を巨大なスズメバチに向けた。

 錫杖から、たくさんの氷の粒が飛び出して巨大なスズメバチに向かっていった。


 カキーンと硬いモノ、まるで金属同士がぶつかる甲高い音がした。


「えっ。あれを弾くの」

 いくら威力を弱めにしたと言っても、錫杖から直に放った魔法であるから、そこそこの威力はあったハズなのに……トマはそう考えた。


 気にも留めていない方角からやって来たモノが躯に当たったのだから、巨大なスズメバチは地面への攻撃をやめた。

 そして、二人に攻撃目標を変えたのか、凶悪な羽音を立てながら二人に近付いて来た。


「あの場所から離れたから、今度は威力を弱めなくて良いと思う。だから、私がもう一度撃つよ」

「判った」

 そうトマに返事をして、アークシュリラは剣を抜いた。


 トマは錫杖を一回高だかと掲げてから、素早く向かって来る巨大なスズメバチに向けて構えながら魔法を唱えた。


氷矢(アイスアロー)!】


 トマの構えた錫杖から先ほどよりも数倍増した氷の粒が、勢い良く巨大なスズメバチに向かっていく。


「貫け!」

 トマが叫んだ。

 再びカキーンと言う音とともに、トマが放った氷矢は巨大なスズメバチの外骨格により弾かれてしまった。


 それを見ていたアークシュリラは、近付いて来る巨大なスズメバチに駆け寄っていく。


 駆け寄りながらアークシュリラは、どこを斬れば良いかと考えた。

 躯はトマの魔法によって硬いコトが判ったから……ならば各接続部を狙うだけ。

 そうアークシュリラは思ったが、相手もおとなしく斬らせてはくれない。

 アークシュリラが近付くと高度を上げて、上空で羽音をたてながら素早く飛び回っている。


 これじゃ届かない……ならば。

 アークシュリラは剣で斬るのを諦めて、魔法を放つコトにした。


鎌鼬ヴァークゥムヴァクリンゲン!】


 たくさんの風の刃がアークシュリラの振った剣の先から、緩やかに飛び出していく。

 その刃は四方八方から巨大なスズメバチたちにぶつかった。

 しかし、巨大なスズメバチも上手く躯を躱し、外骨格によってそれを防いだ。

 そのためにアークシュリラの放った魔法も、ことごとく弾かれてしまった。


 トマとアークシュリラはお互いが放った魔法を弾かれたので、攻撃する手段が減ってしまった。

 巨大なスズメバチは高度を下げて二人に攻撃をしようとすると、アークシュリラが剣を振り回すからそいつらも二人に近づけないでいる。


 両者はにらみ合いをするしかなくなってしまった。


●最後まで読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。

ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。

●今回は、トマとアークシュリラがジャイアントヴェスペ?と戦うお話です。


助けを求めたモノはナニもの何でしょうね。

まさかゴーストで、姿形がトマとアークシュリラの二人には見えないだけとか……でも、ジャイアントヴェスペ?には見えているのかなぁ。

それとも匂い?

ガラガラヘビのように赤外線センサーを使って、獲物の体温を感知して攻撃しているんじゃないと思うけど……

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