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61 話し合い

本日も読みに来て頂きありがとうございます。

 噛みちぎられたヴェスペの頭部を発見したトマとアークシュリラは、その犯人をジャイアントヴェスペと仮定して話し合っていた。


「そうだよね。進むにしても下手に歩いているウチに巣穴を踏んづけて壊したら、襲ってくるよね」

「いや、ジャイアントヴェスペだと、巣の近くを通っただけで襲って来るよ」


 ジャイアントヴェスペは、巣の近くで動くモノを見つけたら必ずやって来る。

 そこで払ったりすれば即戦闘となるし、身動き一つしなくとも匂いによっては襲ってくる。

 そもそも、そんな蜂が生息して居る所に、好き好んで行く生き物はまずいない。


「これがあったけど、巣って遠いのかなぁ」

 トマが地面に落ちているその頭部を指して、そう言った。


「だいたい巣から5キロメートルぐらいが、狩猟区域だよ。ここはエサになる生き物がたくさんいそうだから、長距離を移動したってコトはないと思うね」

「5キロメートルも!」

「トマが見つけたヴェスペの残骸……ヴェスペの狩猟範囲は2キロメートルだけど、ここを中心として5キロメートルにジャイアントヴェスペの巣があるってコトだよ」

「私たちが来た方向では遭遇しなかったから、それ以外ってことなの」


 アークシュリラは、ヴェスペならこちらから攻撃をしなければ襲われる可能性は低いからあまり気にしてはいなかった。

 しかし、ジャイアントヴェスペだったら話は別である。

 そんな凶暴な相手では、先に相手を見つけて戦うと云う選択は取りたくはなかった。

 それは先に相手を見つけられる可能性と、相手が自分たちを発見する確率のどっちが高いかを比較検討が出来ずにいたからであった。


 確かに小さなヴェスペと違い目標は巨大化したコトで1メートルになっているが、躰が大きくなったコトにより移動する速度は速くなっているから、剣で一匹一匹を斬るのは手間であるコトも影響して退治をしようと言い切れなかった。


「そうかも知れないね。ここで悠長に話していたら戻って来るかも知れないから、早く移動しようよ」

「5キロメートルだよ。そんな長距離を慎重に歩くなんてできないよ」


 アークシュリラはこの場所から早く移動したいが、下を見ながら歩くのは背中や首が疲れるから難しいと思っていたので、トマに尋ねた。


「じゃ、見つけてやっつけるの? でも、ボクが剣で斬るのは無理だよ」

「魔法でやれば、ナンとかなると思うよ」


 ヴェスペを退治したコトのあったトマは、お気楽に言った。

 これがホーニヒビーネだったら、蜂蜜が得られるからアークシュリラが乗り気でなくとも率先して退治に話を持っていくが、ヴェスペだと戦っても得られるモノがないので少し躊躇していた。


「じゃ、先に攻撃をされないようにしないといけないね」

「足元から来なければ、良いだけだから」


 二人ともファリチスに居たときにヴェスペに遭遇したコトはあったが、トマはその時から魔法が使えたのでそんなに苦労をせずに仕留められた。

 しかし、アークシュリラは剣で一匹一匹を斬っていたから、簡単には仕留められなかった。

 そんな経験の差で、戦闘に関する話し合いだけど主導権は徐々にトマに移っていく。


「足下?」

「そう、足下だと気付かないウチに刺されたり、噛まれたりするからね。見える範囲から来るのなら魔法を撃てば良いよ。アークシュリラだって範囲魔法は知っているよね」

「うん。いくつか知っているよ」

「複数の時もそれで良いけど……」


 範囲魔法より指向性魔法や局所魔法の方が連弾には向いている。

 そのことをトマはアークシュリラに説明をするつもりであったが、小難しいコトを言って彼女を混乱させてはいけないと考えて言葉を濁した。


 アークシュリラは、トマが言おうとしたことを感じ取って返事をする。


「トマみたいに考えて撃てなかったら、臨機応変にいくよ」


 アークシュリラは確かに今までも魔物を魔法で倒してたが、それはあくまでもウルフやマダーフォンなど相手が飛ぶコトがないモノだった。

 しかし、今回の相手は飛行して来る。

 その上、狩りの最中なら一匹と言う場合もあるけど、巣を攻撃するなら一匹と言うコトはまず有り得ない。

 トマもそれを理解しているから、無理難題を言わなかった。


「それも、そうだよね」

「で、トマ。どうやって相手を見つける気?」


 散策中に見つけた以外でヴェスペを退治した時は、二人とも最初から居場所が判っていた。

 しかし、今回はアークシュリラの言ったとおり、ここから5キロメートルの円内に居ることしか判っていない。

 それに巣だって1つとは限らない。

 死んでいた二匹が同時にやられた可能性はあるが、別々と云うコトもあったからである。

 その場合は、巣が2つあってもおかしくはない。

 そんな広範囲で、しらみつぶしに巣がないかと調べるコトなど出来る訳はない。


 トマとアークシュリラはどうやってジャイアントヴェスペを探すか、イヤ、出来ることなら会わずに済む方法を話し合うコトにした。


「トマ。もし巣をみつける方法があったとして、見つけたら退治するの?」

「そこなんだよね。ヴェスペだと魔法の練習にうってつけだけど、ジャイアントヴェスペはちょっと違うよね」


 多分ジャイアントヴェスペも魔法で倒すことは出来るだろうが、一発の魔法で素直にやられてくれるかが判らない。

 更に、ヴェスペのように小さくないので、いくら範囲魔法でも一度に大量の獲物は始末できないかも知れない。

 そうなると連弾しなければ、相手に攻撃の機会を与えるコトになる。

 それは、出来るだけ避けたいとトマは考えた。

 トマはそんなコトを考えていたため、アークシュリラが続けて言った。


「ねぇ、トマ。ヴェスペやジャイアントヴェスペは、他の生き物たちの日常生活を(おびや)かさないこの地で、暮らしていた訳じゃん。それにボクたちはヴェスペを殺したヤツを退治してと、頼まれたんではないしね」


 アークシュリラに言われて、ナニも悪さをしてなくて食糧にすらならない魔物を、危険と言うだけで狩って良いのかとトマは考えた。

 確かにジャイアントヴェスペは巣の傍に近寄ったら襲ってくるが、人間だって勝手に相手が縄張りに侵入すれば文句の一つぐらいは言うだろうし、場合によっては攻撃もする。


 それに、昔に魔法の練習を兼ねてヴェスペをやっつけていたのは、人々から退治してと頼まれたからであって、決して魔法を使いたいなどという自己満足ではなかった。


 そもそもジャイアントヴェスペだって、攻撃をする前に羽をバタ付けたり、フェルモンを分泌したりしているかも知れない。

 極端な話、相手が事前に警告を発しているにもかかわらずに、それを感じ取れない方が悪いのではないかとも思えてきた。


「じゃ、見つけられたら近寄らないコースをとろうか」

「そうしよう」


 アークシュリラは、最初から巣があること自体が問題になっていないのなら、わざわざ退治をしようとは思っていなかったので素直に応じた。


 上空をヴェスペが飛んでいたら巣が近くにあるかも知れないので、二人は周囲を見渡しながら歩きだした。

●最後まで読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。

ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。

●今回は、トマとアークシュリラたちがヴェスペを襲ったモノについて話し合うお話です。

説明的になって物語がスムーズに展開しませんね。

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