6 アシュミコルの使い
今回も読みに来ていただき、本当にありがとうございます。
●この物語に出てくる魔法や職業に付いているルビや漢字表記は独自解釈の箇所があり、一般的なファンタジーのもの(小説やゲームなど)と異なる場合があります。
●誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。
ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。
急に焚き火の火力が増したが、次第に火の勢いは元の状態に戻っていく。
それを確認してから、アークシュリラが言った。
「今のはナンだったの? トマにしては珍しく魔力が暴走したの?」
「違うよ。私以外の……いや私より強い魔力の持ち主が……あっ。アークシュリラ、ごめん。今、その原因を作った者が到着したみたい」
「えっ! 誰なの?」
アークシュリラは周辺に視線を送って、周囲の状況を把握しようとしている。
トマは、ただ一点を見つめ続けてから言った。
「あなたは火魔法を操る魔法使いですか? それとももっと高位の方ですか?」
トマの語り掛けた方角には、誰もいない。強いて言えば例の卵が置いて有った方角に、そう言っただけだった。
次の瞬間、火の灯りに照らせられていて色合いは正しくないかも知れないが、真紅と思うローブに身を包んだ者がそこに現れた。
アークシュリラは、急に人が現れたので一瞬驚いたが直ぐ我に返った。
そして、トマがこの者と臨戦態勢でないことから、抜刀せずに剣の柄に手を添えるだけで、ことの成り行きを見守っている。
ローブに身を包んだ者が語り出した。
「吾は、火の神アシュミコル様に仕えるモノである。残念ながら、吾が名乗って良い名前は所持してはいない。また、決まりで名乗って良い立場でもない」
「そう云うお方が、何故に私たちの前に具現されたのでしょうか」
「この卵のことで現れた」
「その卵は……」
とトマは言いかけて、人は卵を産まないと気がついた。ましては神々の類いが産卵するとも思えなかった。
「お主の考える通り、吾たちが産んだ卵ではない。しかし、この卵は、れっきとしたアシュミコル様の眷族である」
「ならばボクたちが見つける前に、もっと早く回収することが可能だったのではないですか」
今度は、アークシュリラが尋ねた。
「回収をしたくとも、卵がこの世の中のどこにあるのかが判らないのでは、しらみつぶしに捜索をして回収することは神であっても出来ない」
「でしたら、なぜ今なのですか」
「お主らが、卵の傍で火を点けてくれたからだ。だからこの卵は回収させてもらう。もちろんタダでとは云わぬ。アシュミコル様より預かっているので、キチンとお礼はさせて頂く」
トマがアシュミコルに仕えるモノの言葉に返答した。
「元々あなたたちのモノですから、ご自由にして頂いて構いませんが、一つ聞きたいことがあります」
「ナンじゃ」
「その卵が、孵るのはイツですか」
「早くても、百年後だ」
「判りました」
「お主らに必要と思うモノを授けるので、魔法使い、その杖を見せてみろ」
トマは言われた通り、杖をアシュミコルに仕えるモノに渡した。
「これは、結構使い込まれているが由緒あるモノか? それとも別のモノでも構わぬか?」
「その杖は私が魔法使いになった際にお店で購入したモノなので、ごく一般的なモノです。しかし、私に取っては大切なモノです」
「そうか、判った」
「次は剣士の番じゃ、腰にある剣は由緒あるモノか? それとも別のモノでも構わぬか?」
「これは、前の剣が長い間使っていて折れたので店で購入したモノです。特段思い入れはありません」
「ならば、見せてくれ」
アークシュリラは腰から剣を外して、トマと同様に剣を渡した。
アシュミコルに仕えるモノは、鞘から剣を抜き刀身などを観察した。
「剣士は、この様な剣が好みか」
「私は特段、どの様な形が良いとか、好きとかはありません」
「そうか判った。ならば受け取れ」
アシュミコルに仕えるモノがそう言うと、トマとアークシュリラの立っている地面の前方が輝いた。
トマの前には一本の錫杖とアイテム袋、アークシュリラの前には太刀である本差しと脇差し各々一振りの剣――大小拵えの日本刀、とアイテム袋が有った。
「魔法使いが云った杖の話は解ったが、主の持っている杖ではこれから先きっと役に立たなくなる。しかし、思い入れがあるモノみたいなので、それを使えとはアシュミコル様も云わんだろう。近い将来に、使うときが必ず来るので、今渡しておく。なんなら、今それを手にして魔力を込めてみろ」
錫杖をトマが手にして、魔力を込めてみる。
「どうじゃ」
「確かに違いますね。さっきも危うく杖が破損する所でした」
「違いが判るのか?」
「今までの杖では、ここまで魔力を溜めることは出来ませんでした。あなた様のお力で私が所持していた杖を小さくして頂き、この握っている部分の少し上にはめ込めますか?」
トマはそう言って、錫杖の柄を指差した。
「そんなことは、簡単なことじゃ。ほれ」
アシュミコルに仕えるモノがトマの杖を小さくして、トマに向かって投げた。
そしてトマが錫杖に指定した位置に、キレイに納まった。
「剣士の方はどうじゃ」
「この剣は、今まで使っていた剣より刀身が細く、弱そうですが大丈夫でしょうか」
「今までの剣よりかは、何倍も強いが……」
「素振りをして良いですか?」
「構わぬ」
アークシュリラは二本の剣を腰に帯びて、幾度となく抜刀して素振りをして見せる。
そして剣の素晴らしさに納得した。
「良い剣です」
「そうか。その剣は折れたり刃こぼれしたりしても火に焼べれば元通りになる。たとえ刀身が残って無くてもだ」
「本当ですか?」
「ウソを言ってどうする」
「有り難く頂戴致します」
「うむ。それとアイテム袋の方は無限の容量が有り、中に入れておけば絶対に腐敗や時間経過による劣化もしない。それに今、手にしているモノ以外が、持つことか適わぬモノだ。試しにお互いのモノを交換してみろ」
アシュミコルに仕えるモノの言葉通り、トマとアークシュリラが手にしていたアイテム袋を互いに交換をすると、相手が手にした瞬間に元の持ち主の手元に戻っていた。
「スゴい!」
トマが驚きの声をあげた。
「それでは、ボクがトマの袋からモノを取り出すことは、出来ないのでしょうか」
「意識のある状態では、無断で取り出すコトは不可能だ。頼めば互いに袋の中身を改めることが出来るぞ」
「意識を失った場合は」
「その時は制限が解除されるから、誰でも袋の中身を改めることが出来る」
「判りました」
「最後に、お主らが杖と剣を受け取ってくれたから、それらを使いこなせる様これから何回かに亘り、アシュミコル様たちが直接的に力を授けることをする」
「それは、私たちの前に現れるのですか?」
「そうではない。神界から頭の中に直接語り掛ける。判り易く言えば、夢を見ている感じだ。ではさらばじゃ」
そう言って、アシュミコルに仕えるモノは消えた。
●最後まで読んで頂きありがとうございます。
誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。
ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。
●今回は、トマとアークシュリラが、チートアイテムを貰うお話です。
本人たちはチートとは思って居ませんから、普通のアイテムよりちょっと良い程度の感覚でしょう。今後どの様に物語に影響させ様かなぁ。
次回のお話は、1月19日0時0分に公開予定です。




