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57 フヴァスに向かう道のり

今回も読みに来て頂いてありがとうございます。

ここ数回続いていた3,000文字超ではなく、今回は短めです。

 街道をフヴァスに向けて、二人は歩を進めている。


 二人が少し進むと、アークシュリラの目には色とりどりの花が咲いているのが見えた。

 その中にはアークシュリラが知らない花もあるし、昨日トマから教わった眠り草と思われるモノもあった。

 今は太陽が出ているから、眠り草の花が開いていてもなんらおかしくはない。


 アークシュリラはトマがあれから眠り草について話さないので、そのことに触れてもよいのか悩んでいた。

 当然のこと、同じ様に街道を歩いているのだから、トマの目にも色とりどりの花が見えている。


 トマは、眠り草のコトが未だに気にはなっていた。

 しかし、魔力を検知するコトが出来なかったことで、これ以上はトマとしても調べる手段がなかった。

 なので、トマとしては話し続けても仕方が無いと考えて、この話をおくびにも出さないでいた。

 話さないイコール忘れた訳でも、気にならなくなった訳でも決してなくて、魔力を残さずに花を咲かせる方法を頭の片隅でずっと考えている。


 夜に咲くことのない花が咲いたから、魔法だと思うけど……魔力を残さないのは不可能だと思う。

 その方法を、私が知らないだけかもしれないけど……

 それに、あの時間に咲いている以外は、ナンも違和感がなかったし……


 アークシュリラはあの花が咲いていたのは、もしかしたら魔物が影響しているのではないかと考えた。

 しかし、彼女の魔物の知識は、倒し方や素材の活用方法がメインである。

 そうは言っても、魔物の生息地や特徴などの付随した情報を全く知らないコトはない。

 なので話を振ることをしないにしても、危険な魔物に出会ってしまわぬようにアークシュリラなりに思考を巡らせていた。


 何度も分かれ道があったから、二人は通る人に道を尋ねるのに忙しかった。

 それに話す内容ならわざわざ眠り草のコトを話さなくても、フヴァスのコトやこれから向かう山のコト、新しく得た能力などたくさんある。

 なので二人は、決して無言で歩いている訳ではなかった。


 トマは、魔物だったら魔力は残らないかも知れない、と言う考えにたどり着いた。

 そんな魔物は……と考えてみたが、思うように魔物の名前が出て来ない。

 そこで、アークシュリラに聞いた。


「ねぇ、アークシュリラ。魔物の中で花を咲かす、いや植物の成長を助けるモノって居る?」

「成長を助けるならトレントやドライアドとかニンフが居るけど、どれも森に住んでいて草原にはいないよ」

 アークシュリラは考えていたので、トマの問いに直ぐにそう返した。


 確かにトレントやドライアドは植物の成長を助けるけど、それは木とかであって草花ではない。

 ニンフは助けると言うよりかは、一緒に戯れていると言った方が正しいような気がトマにはした。


「他には?」

「他ねぇ……」

 アークシュリラはそれ以上の魔物を思っていなかったので、考え込んでしまった。


 魔物と言うには少々違うが、広義で云えば魔物だからと考えて、思いついた名前を告げた。


「一般的には魔物じゃなくて妖精だけど、ナパイアーかな」

「ナパイアー?」

「うん、庭園や牧場に花を咲かせる妖精だよ。その他の能力は家畜の健康状態を見張ったり、狩りの獲物を与えてくれたり、病を治したりするらしいけど」

「そんなのが、いるんだね」

「ボクは見たコトはないけどね。与えるって言っても仕留めてくれるんじゃなくて、近くに呼び寄せる感じと本に載ってたよ」


 トマは庭園や牧場に引っかかるモノがあったが、草原だって広義の牧場と捉えればナパイアーが花を咲かせたとも言える。

 先ほどから周囲にやたらと花が咲いていることにも、説明が出来るとトマは思った。


「あの花はナパイアーが咲かせたんじゃないかなぁ。ここら辺も花が咲いているし」

「そうかも」

 ナパイアーが花を咲かせる方法は自然界の法則に則ったモノであり、決して魔法のようにそれに逆らうモノでないコトはトマに取ってこの際どうでも良かった。

 これで一応、トマは納得したのだった。


 そして歩いているウチに陽も傾きだした。


「トマ。やっぱり、今日中には着かなかったね」

「フヴァスへただ向かっている訳でなくって、私たちが新しく得た能力を練習しながらだから、仕方ないよ」

「そうだよね。じゃ、今日はここいらで野宿をする?」

「そうしよう」


 二人は街道から草原に行って、野宿をする場所を探す。

 まぁ、探すと云っても草原なので、近くに先客が居なければどこでも良かった。


 今日は肉でなく、久しぶりに魚を焼くことにした。


「アークシュリラは魚が好きなんだから毎日とは言わないまでも、一週間に1回くらい魚を焼いても良いよ」

「そうしたいんだけど、無くなったらここら辺では補充が出来ないじゃん」


 二人が内陸部を進んでいるので、フーフェン以外の港町にはたどり着いたコトが無かった。

 だから、フーフェンが、この世界で唯一の港町と云うことでは決してない。


「山へ行って、海が見えたらそこへ行こうか」

「それも良いね」

「でも、アークシュリラ。川魚じゃダメなの?」

「ダメじゃ無いけど、川や湖にいるのよりか、海に居る方が美味しい気がするんだよ」


 湖や川ならこの崖下の草原に来て、旅をしている間にもいくつかあった。

 どの湖や川でも魚は泳いでいた。

 淡水魚と海水魚のどっちが美味しいかは人それぞれだし、調理方法によっても変わってくるから一概にどっちがとは言えない。


「ここに居る他の人たちは、塩漬けや干物しか食べられ無いんだよね」


 二人の持っているアイテム袋は、中に入れとけばどんなに時間が経過しても腐敗するコトはない。

 なので、海から遠いこの場所でも、魚を安心して食べられた。

 それに魚はまだまだアイテム袋の中にあるが、食べて減ったら自然と増えるコトがないのも事実だった。


「そうだね。私たちだって、これを貰わなかったら同じだよ」

「そうだったね。ボクたちの能力じゃ無いんだよね」


 あくまでもアイテム袋の効果であって、トマやアークシュリラの能力で鮮度を保っている訳では決してない。

●最後まで読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。

ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。

●今回は、トマとアークシュリラがフヴァスへ向かう途中のお話です。

きっと、イヤたぶん次回にはフヴァスに着けるでしょう。


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