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56 フヴァスに向けて歩く

本日も読みに来て頂き、誠にありがとうございます。

文章がおかしい所(言い回し)があるかも知れませんが、お許しください。

 食事が済んで、トマとアークシュリラはいつものように草原で寝転がっている。


「今日一日で魔法を何度か使ったけど、体調はどう?」

 トマがアークシュリラに聞いた。


 今日一日で幾度となく、アークシュリラは魔物を仕留めるために魔法を使っていた。

 でもそれは魔物に襲われたのではなく、アークシュリラが魔法を使うのに慣れる目的でやっていた。

 そもそも今の二人は食糧を潤沢に保有しているのだから、それを確保するために狩りをする必要は無かった。

 それでも草原の方に魔物を見つけると狩りをしていたのは、新しく得た能力をいざというときに使えないとダメだと二人が思ってのコトだった。


 なので、トマも弓を射て魔物を狩っている。


 そんな訳であるから、魔物を見つけ次第全ての魔物を攻撃している訳ではない。

 あくまでも練習を兼ねてであるから、狩り易い魔物を見つけた場合に限られていて、狩りに何時間も費やすことも無かった。


「変わりはないよ」

「それなら良いけど、魔力不足で倒れたら大変だからね。それと、大量に魔力を消費して、いざ必要な時に使えなかったら意味が無いから注意してね」


 アークシュリラは数々の風の魔法を使っていたが、魔法を使う度に剣を杖に変えるコトはなかった。

 それはアークシュリラが使いたい魔法なら、魔法名を発声すれば発動させられたからである。


 そうは言っても、練習のために正式な詠唱を唱えて強力な魔法を放つ場合は、精神を集中させるために魔力を介在させるモノが必要になるようだった。

 その時は本差しや脇差しをワンドやロッドのように持つコトもあった。

 だがしかし、トマが物理攻撃をするために杖を弓に変えるようなコトはしていない。

 それは剣のままの姿でコトが足りたのかも知れないし、アークシュリラの剣は姿を変える機能がないのかトマには知るよしも無かった。


 魔法使いがロッドやワンドなどのモノを使うのは、魔力を溜めて置いて直ぐに魔法を発動させるためであった。

 だから直ぐに発動させなければトマやアークシュリラ以外の魔法使いでも、魔法を使用するためにそれらを使う必要はない。

 しかし、大部分の魔法使いが杖を使っているのは、とっさに魔法を放つ必要があるからでもあった。

 その魔法使いたちがアークシュリラのように剣などの武器を杖の代わりにしないのは、武器の材質か敵を斬ったり叩いたりした際に付いた血などが魔法の効果を下げたからである。


 トマとアークシュリラはアシュミコルやウィンデラスに魔法の奥義――いや本質を教わったから、杖などを使わなくても瞬時に魔法を撃てたが……


 一方トマの方も杖を使わなくても一般的な魔法は使えるようになったので、普段は杖を小さくして矢と一緒に腰にぶら下げている矢筒に納めていた。

 弓の状態で背中に背負っている訳ではなかったので、杖を失った魔法使いとか、弓を無くした弓術師(アーチャー)にも見える。


 トマはアシュミコルから矢を10本しか貰っていないので、外した矢も落ちている場所まで行って回収し再び使っている。

 いくらアシュミコルがくれた矢筒でも、射て損耗した矢が再利用出来るように修復する機能を有している訳ではなかった。

 なので、矢羽根が荒れたくらいなら良いが、矢が岩などに当たって割れたり、魔物がのたうち回って折れたりしたらもう捨てるしかなかった。


「判っているよ。トマの弓は全く問題なさそうだね」

「射るだけならね」

「弓って、射る以外には使いかたはないよ」

「違うよ。魔物によって射る場所、急所が違うじゃん。それが良く判んないんだよ」


 どんな生き物でも、何発も矢を射られれば動かなくはなる。

 しかし、そんな悠長な事をやっていると、そうなるまでにこちらが襲われる場合もある。

 出来るコトなら、少ない矢でトドメを刺した方が良い。


「それは本を読むか、経験するしかないよ。急所は全く同じ箇所ってコトはないんだからね」

「アークシュリラは、それを本で覚えたの?」

「うん、そうだよ。解体をしたコトもあったから、その魔物の構造を覚えないといけなかったしね。しかし、全部ではないから、出会って勝負しているウチに見つけるよ」

「ファリチスで、解体をしてたの?」

「うん。たまに手伝いでね。トマだってゴブリンやウルフとかは、解体が出来るから急所は判るでしょ」

「うん、それらはね」


 そのウチに、星々が輝くだけの静寂が包んでいき、やがて二人は寝入った。


 夜は特に何事もなく過ぎて、朝日が昇り出す頃に二人は目を覚ます。

 少ししてトマがアークシュリラに尋ねた。


「私はあんまりお腹が減っていないけど、アークシュリラは食事をする?」

「ボクもだよ」


 昨日の晩御飯が、眠り草を調べていて遅くなったコトもあってか、二人のお腹はあまり減っていなかった。


「じゃ、干し肉でも齧りながらで良い?」

「それで良いよ」

 道すがら小腹が減ったら保存食である干し肉とかを食べるコトで、二人はこの場所から出発した。


 草原を歩いていると、前方から一人のキズを負って、血を流している騎士がこちらに歩いて来るのが見えた。

 しかし、周囲を歩く人々は、そんな人が居ないかのように騒いで居なかった。


「トマ。あんな格好の人に遭うのは初めてだよね」

「さすがにね」

 今までも何人かの人々が行き来しているが、キズ付いた人はいなかった。


「さすがに倒れたりしないだろうけど、ここら辺で戦があったとは聞いた事がないよね」

「誰もそんなことは話してなかったよ。それに誰一人として騒いでないのも不思議なんだよ」

「まさかボクたちにしか見えなくて、凶暴化して襲って来ないよね」


 騎士がナゼこの様な状態なのかが判らなくて、二人はどうするのが一番良いかを考えてみる。


 戦いで無くて本当は凶暴化して、近くにいる人たちを手当たり次第に襲っていたのなら傷ついているのも判るけど……周囲にいる人々は騒いではいない。

 多分、襲ってはいないのだろう。

 それでも周りの人たちが、ケガ人を見て見ぬ振りをするのもおかしい。


 確かに騎士はプライドがとても高いので、こちらが下手に出て話し掛けても、イツ地雷を踏むかが判らない。

 なので、係わらずにいられるのなら、それにこしたことはないのも事実だった。


 トマとアークシュリラは万が一にでも襲ってきても良いようにしているが、あからさまに柄に手を添えるとか、杖を構えるようなコトはしなかった。

 少ししてその騎士とすれ違うが、これと言って何も起こらずに済んだ。


「アークシュリラ。ちょっと警戒し過ぎたみたいだね」

「そうだね」

 自分たちがお尋ね者で懸賞金が掛かっているとか、相手の親のカタキでないなら見も知らぬ他人が襲って来るコトは、どこの世界でも有り得ない。

 それに騎士はケガをしていたから、尚更だった。


 騎士が遠のいたのでトマがアークシュリラに聞いた。


「あの甲冑って、あまり見ない形だよね」

「トマも判ったんだ。太古に使われていたモノのようだね。復元したのかなぁ」

「復元する意味ってあるの?」

「研究ならあるかも知れないけど、実戦では全く無いよ。手に触れてないから確実性は無いけど、あれって青銅で作られているね」

「青銅?」

「たまに今も使われているけど、あの格好は動きにくいよ」


 実際に今も青銅の甲冑は作られているが、武装は今風に軽量化が図られているし、胴や四肢を覆う部位も動かし易くなっていた。


「そう云うこと。で、アークシュリラの使う風の魔法は、曲げるコトが出来るよね」

「出来るよ。でも多数を一度に放つ魔法だったら、その全てをボクが意図して曲げている訳ではないけどね」

「アークシュリラの思い通りにはならないの」

「慣れれば出来るらしいけど、まだ無理だよ。だからさっきの騎士に対して放っても、避けられると思うんだ」

「剣での勝負をする相手では、まだ使えない感じなの?」

「まだね。トマは出来る様になったの?」

「私も完璧に制御は出来ないけど、だいたい思った方向にいくよ」

「スゴく頑張ったんだね」

●最後まで読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。

ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。

●今回は、トマとアークシュリラが新たにえた能力を話し合うお話です。

 実際に、二人が使っている所はお話に登場しません。


 急に傷を負った騎士が登場しましたが、ナンなのでしょうね。

 それにしても太古の甲冑って……

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