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54 新たな力を教え合う

本日も読みに来て頂きありがとうございます。


 トマとアークシュリラはいつもの通り、朝日が昇って来るのと同時に目を覚ました。

 普段なら目覚めて少ししたらアークシュリラは素振りを始め、トマも杖に魔力を貯める作業をしだす。

 それらが終わってから食事の支度をしだすのだが、今日の二人はそれらの作業をやり出す気配がない。


 トマは自分だけしかあの空間に居なかったが、きっとアークシュリラも同じ様なコトになっていただろうと考えている。

 ならば自分は貰った杖の一部を交換させられたのだから、きっとアークシュリラも同様に貰った剣の一部を替えさせられたと考え、アークシュリラの帯びている剣を観察していた。

 いくらあまりモノに執着しないトマでも、観察すれば違いは直ぐに判った。


 アークシュリラも同じ様なコトを思って、トマの杖を見ると遊鐶がいつもと違うのが直ぐに判った。


「トマ。聞いて欲しいコトが――」「アークシュリラ、準備の前に――」

 アークシュリラとトマは、ほぼ同時に言った。


「ナニ? アークシュリラ」「トマ……」

 二人は、またも同時に返事を返した。


「トマ。先に言って良いよ」「アークシュリラ。先にどうぞ」


 アークシュリラもトマも、自分が新たな力を授かったコトを話したかった。

 それなので相手がどんな力を授かったかは分からないが、二人は互いが話したい内容がなんとなく判った。


「「はっ、はははっ」」

 二人はここまでタイミングが合ったコトに、自然と笑いが込み上げてきた。


 二人にとっての、こう言う場合の対処方法はジャンケンである。

 どちらが言う出なく、ジャンケンを行いトマから話すことになった。


 トマが昨夜に起こったコトを話し終えて、弓を披露した。


「そうだね。ボクがトマと戦うコトは無いと嬉しいけど、操られる場合もあるからその力は必要だね」

「確かに、操られる場合があるかもね」

 相手を意識的に操縦する魔法は、まだ一般的で無いものの存在はする。

 魔法で無くても、弱みとかに付け込まれて自身の意に添わずと云う場合もある。


 続いてアークシュリラが話して、新たに覚えた魔法を見せた。


「スゴいよアークシュリラ。もう立派な魔法剣士だね」

「そ、そうかなぁ。でも、ボクが自由に使えるのって風の魔法だけだけど……」

「一つの属性だけであっても、アークシュリラの剣術はスゴいんだから自信を持って良いよ」


 寝起きに、昨夜あった異空間での出来事を話さなくても良かった。

 これから旅をしていくウチに、この力を披露するコトはきっと起こるだろう。

 話すのは、その時でも遅くはない。


 でも二人が話すコトにしたのは、後で話すより今話した方が互いに理解が出来ると思ったからだし、自分が授かった能力を知ってもらいたかったからでもある。

 それに相手が何をしていたのかも、気になっていたと云うコトもあった。


 二人はほぼ同時に、剣や杖に本来備わっている能力を教えられたのだった。

 そして、肉を焼いて軽い食事をしだした。


「アークシュリラ。じゃ、今日もあの山を目指して行くで良い?」

「そうしたいけど……」


 アークシュリラの返事が煮え切らない。


「えっ、山へ行かないの?」

「少し考えているんだよ。あの山から見渡して、途轍もないモノが山の向こうとかに見えたらここへは帰って来ないよね」


 確かに、水が噴き出している所が見えただけでイデェネルの誘いを断ったのだから、山の向こうにナニかを見つけたのなら、そこへ行きたい気持ちが大きくなって、山からここへ戻る気持ちは消え失せるだろうとトマは思い返事をした。


「そうだね」

「そうすると、イデェネルの村へは行けなくなっちゃうと思うんだけど……」

「アークシュリラは、どうしたいの?」

「ボクはね、先ずイデェネルの所へ行ってから、山へ行きたい」

「判ったよ。そうしよう」


 食事を終えてトマとアークシュリラは、イデェネルと別れた二叉に成っている所へ引き返して行く。


「ここで、イデェネルと別れたんだよね。確かフヴァスとか言ってたと思うんだけど」

「そうだね。ここから三日程度の距離だとも、言ってたよね」

「うん、そうだね」


 二人はイデェネルが進んだ方角の道を歩いて行く。

「この道沿いにあるのかなぁ。もしイデェネルが途中で草原を通っていたら、たどり着かないね」

「街か人が来たら、聞けば良いよ」

「それも、そうだね」


 迷わない様に、道を通る人にフヴァスの場所を聞きながら二人は歩いて行く。


「ところでイデェネルは、旅とかに出ないのかなぁ」

「そうだね、子どもが成人する記念のための武器を買うってコトは、とっくに成人しているよね」


 イデェネルの村がどうかをトマとアークシュリラは知らないが、普通なら成人したコトを祝うために与える品物を買う役割は大人が行う。

 たとえ買うモノが決まっていても、まがい物をつかまされたら大変だからである。

 更に剣などの武具などは命に関わるから、尚更のコト村や街で一番の目利き――その道のプロが買いに行く。


「そうだね。ボクたちと同じくらいだから、きっと成人しているね。やられちゃったけども、ゴブリン程度なら倒せるんじゃないかなぁ」

「でも、回復出来る人が居ないと、一人での旅はキツいよ」

「そうかぁ。魔法を使える友だちが居ないかもね」

「村って言ってたから、住んでいる人も多くないかもよ」


 この世界で魔法を使える人間は、決して珍しい訳ではない。

 その上、魔法を使えるくらいの魔力を持っている人物となれば、かなりの数がいる。いや、魔力を持っていない人物を捜す方が難しいと言う方が正しい。

 しかし、指導する人物がいなければ、その才能は日の目を見ることはほぼ無い。

 なので、魔法使いになるのには、運も絡むからとても難しい。


 イデェネルが魔法を使えるかは、聞いていないので判らない。

 たとえ使えたとしても一人旅では、戦闘中などだと自分に回復(ヒール)をかけるのも非常に手間になる。


 道を少し進むと十字路にぶつかったが、そばを歩いている人にアークシュリラが尋ねた。

 間違わない様に、一、二時間歩いては近くに居る人々に聞いているが、道が分かれている所や交差する処では時間に関係なく尋ねている。


「すみません。フヴァスへ行きたいのですが、どの道を行けば良いのですか」

「フヴァスか、それなら真っ直ぐだ」

「ありがとう」


 尋ねた人と別れてトマが言った。


「フヴァスって有名なの?」

「そうだね。知らない人っていない感じだね」


 もう既に何人かに尋ねたが、聞いた全員がフヴァスの場所を知っていた。

 そもそも大きな街なら知っている人がいてもおかしくはないけど、イデェネルはフヴァスを村と言っていた。

 いくら自分の住んでいる処なので、謙遜したとしても大きな街を村と言うのはおかしい。

 それにイデェネルはトマとアークシュリラを誘うために自分の住んでいる所の名を言ったのだから、誤解を招く言い回しはしないだろう。


 しかし、村であっても交通の要衝だったら、話は別であるが……

 トマとアークシュリラは旅に出るまで自分の住んでいる近くにある街や村の名前すら知らなかったから、そんなコトを二人は思いもつかなかったので不思議でならなかった。


「じゃ、今度会う人にフヴァスってどんな処かを聞けばいいかも」

「方角を聞いて、どんな処って尋ねるのも変だよ」


 そもそも、フヴァスに有名な何かがあって、そこを訪ねる目的なら場所を知らなくてもおかしくはない。

 しかし、そんなモノがない普通の村だと、そこに行きたいからその場所を尋ねておいて、そこってどんな所ですかと聞くのは変である。


 トマとアークシュリラはフヴァスの名前しか知らないから、どんな処かさえ判らない。

 また、これが会話をしていてフヴァスって名が出てきたのだったら、なんら不自然ではないけど……


 それに自分の所では剣を造る処がないから、わざわざあの街で購入したのではないか……考えれば考えるほど、二人にはその答えが遠のいていく気がした。


 そんなコトを考えながら二人は街道を歩いている。

●最後まで読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。

ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。

●今回は、トマとアークシュリラが新しく得た能力を教え合うお話です。

今回互いに得た能力を披露しあう描写は、異世界で書いたモノと変わり映えしないので削りました。

まぁ、二人の掛け合いで2.3話分は稼げますが……

トマの弓やアークシュリラの風魔法も1つの物語になりそうです。


また今回、急に山ではなくてイデェネルの村へ行くことになりました。

山の向こうに何かがあって二度とここに戻らないから、そうしたんじゃありませんよ。

まだ、山を登るストーリーは全く考えていませんから……

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