51 ナニもない空間
今回も読みに来て頂いて、ありがとうございます。
なんとかこの様になりました。
まだ文章的にあっちこっち飛ぶので、読みにくいかも知れませんね。
ごめんなさい。
アークシュリラは、何者かが自分の名を呼ぶ声が聞こえたような気がして目を覚ました。
あれっ、ここはどこだろう。
誰かがボクを呼んでいた気がしたけど……
それにしても、今ボクが居る所はいつも見ている夢とは趣が随分と違う感じだね。
いつもなら色彩があるけど……でも、この空間にナニもないってコトだけは、いつもと同じだね。
アークシュリラがたまに見ていた夢は色彩のある空間だったが、今居る所は見渡す限りモノクロで何もない場所だった。
今まで何度か見た夢だと少し動いていれば景色が変わったから、今回も取り敢えずいろんな方向に動いて景色が変わるか試そう。
アークシュリラはそう思って、そこから移動してみた。
しかしどんなに移動しても、今回ばかりは周囲の景色が一向に変化しない。
そのうち自分が本当に移動しているのかさえ、判らなくなって来た。
それでも、アークシュリラはしばらくの間あっちこっちに駆け出して、自分を呼んだモノがナンであるか、僅かな手がかりでもあれば良いと考えて行動をしていた。
しかし、その空間はナンら変化するコトはなく、更に手掛かりに成りそうなモノもなかった。
そして、もしかしたらボクは死んでしまったのかなぁと云う考えが、徐々に沸いて来た。
アークシュリラがその様に思ったのも、そんな空間に居るのだから当然と言えば当然である。
本当にナンも無くって誰も居ないんじゃ、きっと直ぐに飽きてくるよね。
トマも同じ時刻に、同じ様な空間にいた。
トマの方は四方八方へ魔法を放っており、アークシュリラの様に走るなどと云う生易しい行動は取っていなかった。
トマがいくら魔法を放っても、それが何処かに当たって爆ぜるコトはなかった。
それは、この空間が単なる囲われた部屋でないコトを意味する。
そう、今まで居た草原の様な仕切りのない場所である。
それからしばらくの間、時間にして数十分程度であったがトマは力任せに大量の魔法を放った。
しかし、これほど連続で魔法を放っていたにも係わらず、今までのトマだったら魔力が枯渇するのだが今はそんなコトも無かった。
トマがそうしていたのは、今まで何度もこのような空間に居る夢を見ていて、動き回るより魔法を放った時の方が早くこの空間から脱出するコトが出来たからだった。
今回ばかりはトマの方も、この空間から脱出するコトが適わなかった。
やっぱり、ここはおかしい。いつもとは違う。
こんだけ魔法を放っていても脱出……イヤ景色すら変わらないんじゃ、これ以上魔法を放ち続けていても埒が明かないと考えた。
そこでトマは、ダメもとで誰も居ない空間に向かって語り掛けた。
「誰か知りませんが、私をどうしたいのですか? 姿は見せなくて良いので教えてくれませんか」
「ワシはアシュミコル、お主に用事があるのでここに連れてきた」
どこからともなく、声が聞こえてきた。
トマは、ナニもなく誰も居ない空間だったこともあって、返事があったコトにありがたいと感じた。
「それで用事とはなんですか。私はどうすれば良いのでしょうか?」
「そう、はしょるな。時間は充分にあるから、ゆっくり語ることにしよう」
「そうですか」
アシュミコルとウィンデールは、サラステーヴァの居城を出てとりあえずアシュミコルの館に戻った。
そして、サラステーヴァに渡された箱から鍔を取り出してアシュミコルが云った。
「お主はアークシュリラに、これを付けさせてくれ」
ウィンデールはそれを受け取って、まじまじと見てから言う。
「これか、随分と手の込んだ細工を施してあるな。そっちもそうか」
「このように、まるで生きているようだ」
アシュミコルは箱の中の遊鐶を一つ手に取って、ウィンデールに見せた。
「ほう。これをどのくらいの時間で作ったのかは知らないが、アヤツの処にもこれほどの造形物を造れるモノが居るのだな」
「サラステーヴァが自身で造ったとは思えぬから、そのようだな」
「頭脳と造形……たかが水の神と、侮れなくなってきたな」
サラステーヴァは元々水の属性を代表する神ではない、大勢居る水の神の一神にすぎない。
アシュミコルやウィンデールの処にも、当然のことあまたの神々がいた。
ちなみに水の属性を代表する物は、海神であるネプラリオンが務めている。
しばらく掌で鍔を弄んでいたウィンデールは、それを軽く包んでから言った。
「やっぱり、これにはアヤツの神力が込められているな」
「仕方ないな。二人に渡した品々を回収とかにならず、これだけで済んだのだから上々だ」
アシュミコルとウィンデールは、サラステーヴァが渡しているモノを回収しろと言って来ても応じるつもりだった。
ナニはともあれトマとアークシュリラの解放が、今回は最優先事項なのだから仕方ない。
しかし、もう二度とトマやアークシュリラに関わるなと言われれば、素直に応じたかは今となっては分からない。
「それもそうだな。サラステーヴァも随分と丸くなったな」
サラステーヴァとアシュミコルは幾度となく戦った過去がある。それを知っているウィンデールが言う。
その戦いの結果は、どちらかが一方的に勝つというコトはなくって、互いに有効的な状況を作れずに五分五分といった感じだった。
元々、双方とも真剣に戦って居なかったコトも影響している。
「そうだな」
「アシュミコルよ。で、吾にこれを渡したってコトは付けに行くのか?」
アシュミコルならトマとアークシュリラの持っているモノに、サラステーヴァから渡されたそれらの品々を付け替えるコトはいつでも出来た。
それは二人の前に姿を現しても、現さなくても可能である。
なので、サラステーヴァからこれらを受け取った時点で、その品に替えるコトも出来た。
「そのつもりだ。お主もあのモノに伝えたいことがあるだろう?」
「まぁ、少しはな」
そうしたのは、それらにただ変えるだけでなくて、トマに直接伝えたいコトがあったからであった。
なので、それをせずに今回は自分の管理している異空間に招き入れた。
勿論、ウィンデールもあの二人に渡してあるモノのコトは、おおよその権能を聞き及んでいるからアシュミコルと同様なコトは出来る。
ウィンデールが自分の居城に帰った後で、トマが起きて魔法を放ちだした。
しかしアシュミコルはトマがどのレベルの魔法まで使うのかと、その空間の様子を窺っているだけで直ぐには姿を現さなかった。
しばらく待っていて、トマが空間に語り掛けたので、これ以上の魔法は放たないと考えて返事をしたのだった。
●最後まで読んで頂きありがとうございます。
誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。
ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。
●今回は、サラステーヴァから渡された品々をアシュミコルとウィンデールが、トマとアークシュリラに渡してあるモノへ付け替える為にナニもない空間に二人を連れてきたお話です。
最初はアシュミコルの空間にトマとアークシュリラを連れてきて一緒に話す予定でしたが、アークシュリラはウィンデールの空間に行くコトになりました。
次回のお話を早めに公開できる様に頑張ります。




