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50 どの山に向かう?

読みに来て頂きありがとうございます。


●この物語に出てくる魔法や職業に付いているルビや漢字表記は独自解釈の箇所があり、一般的なファンタジーのもの(小説やゲームなど)と異なる場合があります。

●誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。

ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。

 トマとアークシュリラが目を覚ますと、そこは湖の畔だった。


 相変わらずスゴい量の水が崖から吹き出していて、その水は崖面に触れるコトも無く直に湖に注ぎ込んでいる。

 その水の後ろ側にあった、地震によって崖面に出来た穴も今は綺麗に塞がっていた。

 そこに穴があってその場所を探索したのが、まるで夢だったように二人には思えた。


「良く判んないけど、なんか助けてくれたみたいだね」

「そうだね。トマ、一応お礼を言わないと」

「でも、穴が塞がっちゃったから、あそこにはもう行けないよね。ここからでも良いかなぁ」

「優しい神様みたいだから、きっと許してくれるよ」


 二人は名前すら知らない良く分からない神に、外へ出してくれたお礼を最初に述べた。

 そして水甕を持っていたコトから水の神だと信じて、これからの旅で飲み水とかに困らない様に祈った。


 探索している時に二人は保存食を食べてはいたが、それほど大量に食していた訳ではなかった。

 そうは言っても曲がりなりにも保存食なので、空腹感はあまりない。

 しかし、次の食事まで持つ気がしなかったので、トマとアークシュリラはその畔で肉を焼いて軽めの食事を摂るコトにした。


「あれなら少し遠くでも確認出来るから、あの噴き出している水は、水の神を表しているのかもね」


 アークシュリラが焼けた肉を咥えながら、崖ではない方角を見渡してから言った。


「見える範囲となると、該当する所は結構な数がありそうだね。イデェネルの村からも確認出来るかもね」


 それ程高い建物はなかったが、それでも平らな草原なので幾つかの建物がこの場所からでも見えた。

 しかし、アークシュリラはこの見えている建物の中に、イデェネルの村があるかを知らない。

 トマも当然のこと見える建物の中にイデェネルの村があるのか、はたまたないのかは判らないが、同じ様にそれらを見渡してからアークシュリラに応じた。


「確かに、たくさんあるね。各々の所で聞けば、あの祀られていた神の名前ぐらいは判るかもよ」

「作った人とかも判るかも知れないけど、判ってもねぇ。でも、魔法を使える生き物じゃなくて、あの神が水を噴き出させたのかもよ」

「そうだね。どんだけ長い間に亘って水が噴き出しているのかは知らないけど、長くなるほど魔力が必要だからね。今の私の魔力じゃ、絶対に出来ないよ」

「そんな膨大な魔力なら、やっぱり神様だよ。きっと、ここに生きるモノたちのために仕事をしてくれたんだよ」

「とても膨大な魔力量だから、多分そうかもね」


 トマとアークシュリラの考えは、あながち間違ってはいなかった。

 この水が噴き出しているモノは、水の神々を取りまとめているネプラリオンに命じられて、サラステーヴァが作ったモノであった。

 それによって今まで不毛の土地だったこの地は、長い年月をかけて大草原と化した。


 ついでに言うと、トマやアークシュリラが生活をしていた街があるあの高台は、この水が大地を潤さずに海へ流れないようにするため、その時に同時に土の神であるルルピリャマーラによって造られたモノであった。


「そして後になって、誰かが水が噴き出している下に神殿を作ったんだよ。そして荒らされない様に、出入り口を塞いだって感じかなぁ」

「出入り口を塞いだから、あのマーク……魔法陣は祈りに来るためにも必要だね」


 二人が話をしている神殿は、人々が造った訳ではない。

 それは水を永遠に噴き出させるために、神祠を造って、その像を安置してから神力を込めたのであった。

 神力が込められるにつれて、水が徐々に流れ出して来て今のようになったのだった。


 その安置してある像がサラステーヴァ自身を模しているのは、彼女の自己顕示欲からではなく、その形なら細かく指示をしなくても水の眷属たちが管理をしてくれるからであった。

 長い年月に亘ってこの水が噴き出し続けられているのも、水の眷族が神力とかを定期的に補充しているからであって、誰も管理していない訳でもなかった。

 その点だけをとっても、サラステーヴァの目論見はあたったと言う訳である。


 食事も済んでもう朝日もだいぶ昇ってきたので、湖――水が噴き出している所をあとにして今度は山を目指して歩き出すコトにした。


 ここには崖の上では見かけないバッファローとか、空にもたまにしか見なかったイーグルが暮らしている。

 それらがひっきりなしに襲って来るコトはないが、絶対に襲って来ない訳でもない。

 魔物でも動物でも、腹が減れば誰彼構わず襲って来る。


 また、それらが食物連鎖の頂点にいるとは思えないから、どこかに対抗するコトが出来る強い魔物が生息していても、なんら不思議ではない。


「アークシュリラ、山ってどれを目指すの」

 二人の前方の山は山脈が連なっていて、決して高い山がぽつんとある単独峰ではない。


「どれでも良いけど……でも、せっかく登るんだし、見晴らしが良いのがよいかなぁ」


 トマは山々を眺めながら低い山を除外していくが、それでも山頂の数はまだたくさんある。

 トマが一つの山に向かって、腕を上げてから言った。

「じゃ、あの一番高いのを目標に進もうか」

「あれだね。OK」


 二人は、ゆっくり草原の中を歩いている。

 その間に、何本か街道が横切っていたし、遠くに幾つもの街の姿が見えた。

 野宿をしている二人にとって、朝夕の風は少し肌寒くなってきだした。


「あの山ってずっと白くなっているから、このまま山へ行くのは無謀じゃないの?」

 トマはアークシュリラに尋ねた。


「そうかなぁ。ボクは平気だと思うけど」

「その根拠は」

「そんなもんないよ。もし行って無理だったら、引き返せば良いだけだよ」


 準備万端で山に登るに越したことはないけど、失敗をするのも良い経験になる。

 それもそうだとトマは思った。


「トマ。こっちの方が変化に富んでいると思ったけど、そうでもないね」

「あっちにあった林すらなくって、こっちは草原しかないよね」


 木はたまに生えているが、数本程度で林と呼ぶには語弊がある。

 しかし台地では、あまり出現しなかった湖とか池はいくつもあった。

 それらも広大な海や崖から直接流れ落ちる水を湛えた湖を見たりした後だと、いくら広くてもその感動は大幅に低減してしまう。


「今日は少し早いけど、ここで野宿をしようか」

「アークシュリラ、疲れたの? まだあすこから二日しか経ってないよ」

「そう言う訳ではないけど、やっぱりボクも魔法の勉強をした方が良いじゃん」

「そう言うわけね」


 それで、トマも少し気になっている魔法を試したいと思った。


 二人は別々に、今までやりたかったが時間的にできなかったことをやりだした。

 アークシュリラは意識を集中して魔力を集めているし、トマは攻撃魔法でなく灯り(ライト)の魔法で発生させた光源を動かそうとしている。


「あっ、出来た」

 トマが言った。

「えっ?」

「今、少し動いたよ」

「スゴいじゃん」

「まだ僅かだけどもね。アークシュリラはどう」


 トマは同じ灯り(ライト)でも熟練によって体から離すコトが出来るコトに、問題を解決する糸口があると踏んでいた。

 やっぱり、この考えで良いのだと感じた。


「火は熾せるようになったけど、直ぐに消えちゃうね」

 アークシュリラも火を熾せているから、既に初級魔法使い程度の魔力を集められている。


「じゃ、こうやれば着火させられるよ」

「本当に?」

「アークシュリラにウソを言ったって、仕方ないよ」

「それもそうだね。ところでトマ。蘇生の魔法を唱えていた時にヴェルデムベゼラって言っていたけど、お願いするのはエリロヘルスじゃないの?」

「死んで直ぐだと魂がまだこの周辺にあるから、生を司る神さまのエリロヘルスに祈るって教わったよ。でも、イデェネルは死んでから半日程度経ってたから、もう魂は死後の世界に行っていると思ったんだよ」

「まだ半日だけど、そうなの?」

「私も蘇生はさらっとしか教わってないから詳しく判んないけど……魂が何日の間、この世の中に留まっているって決まってなかったように思うよ」

「じゃトマは、イデェネルの魂がこの世界に漂っているより、もう死後の世界にいる方に賭けたってこと?」

「賭けじゃなくて、魂は必ずヴェルデムベゼラの所に行くから……」


 アークシュリラの言った通り端から見れば賭けだったが、トマにとっては賭けでなく魔法使いのカンと云う方が正しかった。


 蘇生の魔法だけでなく、例えば雨乞いの魔法なら普通は水の神々に祈る。しかし、晴天の神に力を弱めて下さいと祈っても良い。

 あらゆる物事は複数の神々――事象が重なっているからでもあった。


「そっか。じゃ食事にしようか」


 何度も食事をしているウチに一つの種類の肉よりか、何種類もの魔物や同じ魔物でも違う部位をいくつか混ぜると、互いの短所を消してくれるコトが分かって来た。

 今回もいくつかの種類の肉を焼いて食事にしている。

 しかし、たまに欠点だけを増加して、長所を完全に消し去るコトもある。

 こればかりは何度も経験するしかない。


「アークシュリラ、今日の組み合わせは美味しいね」

「お店でも、こうして販売すれば良いのにね」

「確かにね」


 二人は食事の片付けも済んで、草原に横たわっている。

 既に日は沈んで、空にはたくさんの星々が瞬いている。


「この中に私の星が有るんだって」

「トマの星?」

「私の所有物ではなくって、私の運命を司っているモノがね」

「どれなの?」

「昔に聞いたけど、星があり過ぎて良く分かんなかったよ」

「そう、じゃボクのも有るのかなぁ」

「有るよ。みんな有るって言っていたハズだから」

「そっか」


 二人は徐々に眠りに墜ちていった。

●最後まで読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。

ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。

●今回は、サラステーヴァがトマとアークシュリラを自身の霊廟から外に出してから、山に行くために歩くお話です。

タイトルが、内容と少し違和感があるかも知れませんね。

それと、2回に分けると次の話との区切りが悪くなるので、今回は思いのほか長くなってしまいました。


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