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5 あれってナンだろう

今回も読みに来ていただき、本当にありがとうございます。

●この物語に出てくる魔法や職業に付いているルビや漢字表記は独自解釈の箇所があり、一般的なファンタジーのもの(小説やゲームなど)と異なる場合があります。

●誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。

ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。

 二人は草原に入ってから、もう結構な距離を進んでいた。


 周囲を警戒しつつ、アークシュリラがトマに問い掛ける。

「トマ。ここにも小動物の姿はおろか、魔物すらナニも居ないね」

「これじゃ、街道を逸れて、草原に入った意味がないね」

「でも、戻るのも面倒だから、このまま進むよね」

「真っ直ぐ行けば、いつかは道にぶつかると思うけど……」

「さっきの街道と違うけど、絶対に道はあるよね」


 二人が更に草原を進むと、スイカくらいの大きさの真っ赤なモノが前方にあった。

 この草原に生えている草の背丈が2 cmくらいなので、その物体は余計に目立っている。

 そもそも緑一色の中に赤いモノがあるのだから、一瞥すれば否応なく判る。

 あえて無視をしない限り、見落とすことなどは絶対に有り得ない。


「アークシュリラ。あれって巨大な卵にみえるけど、何かなぁ」

「石や岩にしては凹凸がなさそうだから、多分、卵で良いと思うよ」

「あの大きさだと、結構な大きさの生き物が産んだのかなぁ」

「大きさもそうだけど、あの色だからねぇ。ボクたちが知っている、普通の生き物じゃないことだけは確かだよ」


 ここから眺めているだけでは、本当に卵なのか判らない。卵だとしても、既に産まれた残骸と云うこともある。

 二人は近寄って、その物体を観察することにした。


 トマが割れないように軽く杖で叩いてみたり、アークシュリラが剣で小突いてみたりした。

 そしてひっくり返して全周を確認したが、割れた痕も孵化した形跡もなかった。

 やっぱり卵にしか見えないが、それを素手で触る勇気を、今の二人は残念ながら持ち合わせてはいない。


「割れてないから、中身は入っているよね。空中から落としたのかなぁ」

 アークシュリラがそう呟いた。

 その呟きはトマに言った訳ではなかったが、トマは聞こえたからそれに応えて言った。

「ちょうど草があったから、クッションになって割れなかったと思うよ」

「そんな偶然ならば、元気に産まれて欲しいね」


 落下した所が草原でなく岩場で、岩や石の上だったなら、卵は割れていたかも知れない。

 岩場でなくても、草原の中にも岩や石は落ちている。

 海上は卵が落ちるかも知れないと飛ばずにいても、陸上には湖や川と云う場所もある。


 また、象やサイなど大型の動物とかバッファローなどの突進する動物がいる所では、それらによって潰されていた可能性もある。

 卵が割れてなくここに有るのは、確かにアークシュリラの言う通りに偶然……いや奇跡と言った方が正しいのかも知れない。


 草原で怪しい卵をみつけた二人は、このまま放置して行くかを延々と相談している。

 急ぐ旅ではないが、どんな生き物が産んだモノかとか、何日で孵化するかが判らないコトには、いくら話し合っていても、その内容が進展することを期待する方がどだい無理な話である。


 一般的な鳥の卵と同じなら、一ヶ月もかからずに孵化する。しかし、二カ月以上かかる生き物もいる。

 それに色合いから言って、一般的な生き物とは確実に違う気がすることが、問題を更にややこしくしている。

 それはドラゴンやワイバーンなどの龍種なら、孵化するまでに数年とか、数十年と云うことも二人は書物で得ていたからである。


 トマもアークシュリラも口には出さないでいるが、数年……いや数十年に亘りこの卵の監視をする気持ちはさらさらない。でも二週間程度だったら、何の卵かを知りたいと云う好奇心もある。

 しかし、卵から孵化したと同時に、自分たちが捕食されたら目も当てられないから、上手く意見を述べることが出来ずにもいる。


 それに卵自体を温めたり冷やしたりしないで、このままの状態で孵化するかの知識も、あいにくだが二人は持ち合わせてはいない。


 二人は時間が経つのを忘れて、様々な意見を言い合っていた。

 朝に宿屋を出発してから食事らしい食事をしていないが、気分が高揚しているのかお腹は減ってきていなかった。

 そのためにふと気付くと、周囲は既に薄暮れ始めている。


「アークシュリラ。もう、こんな時間ナンだね。色々と楽しくてお腹は減ってないけど、今日はここで野宿をするで良い?」

「良いよ。やっぱり夜間は危険だからね。それじゃトマ、火を熾して」

「判った」


燃焼(フェベロン)!】

 トマは火を熾す魔法を唱えて、火が点いたのを確認してからアークシュリラに聞いた。


「これで良い?」

「うん、良いよ。私たちを狙っていた、多分ウルフだと思うけど、火がついた途端にどこかに行ったからね」

「そうだったんだね! 気配?」

「うん。気配だよ」


 トマは自分と会話をしながら、危険な気配を感じるコトが出来るアークシュリラの能力に脱帽した。


「卵のことは置いといて、違う話をしようか?」

「そうだねトマ。この結論は簡単にでそうにないよね」

「このまま真っ直ぐに進んで道が有ったら、また街道を進む?」

「どっちでも良いかなぁ」

「道にぶつかった時の体力次第と言う感じ?」

「そう。宿に泊まりたい程に体力が減っていたら、街道に居る人たちに近くの街を教えて貰おうか」

「そうだね」


 トマがそう言うと、火が突然激しく燃え始める。

「トマ! 火事になっちゃうよ! 早く魔力を弱めて!!」

「私はナニもしていないよ!」


 それでもトマは火に杖を向けて、火を弱めようとするが、何者かによって、それを打ち消された。

 今度は、火が激しく燃え盛っている燃料である、魔力自体を杖に吸収しようと努力をしたけども、杖自身に少しヒビが入ってしまった。このままでは杖が破損すると考えて、その行為も不可能だと判断した。


 しばらくの間ずっと火は勢いよく燃え続けていたが、周囲に燃え移ることもなく次第に元の状態に戻っていった。

●最後まで読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字はチェックしているつもりですが、多々漏れる事があります。

ご指摘下されば、どうしてもその漢字や文章を使いたい場合以外は、出来る限り反映させて頂きます。

●今回は、トマとアークシュリラが、草原で何やらとんでもないモノを発見したお話です。

二人が云っている通りきっと卵なんでしょうね。でも、真っ赤な卵なんて……本当に龍の卵なんでしょうかね。


次回のお話は、1月16日0時20分に公開する予定です。

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